GDPR をめぐって、パブリッシャーがGoogleに競り勝つ:「誰も飛びつかない」

Googleは、欧州の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)の下でパブリッシャーが消費者の同意を得られるベンダーの数を制限する方針を転換した。これに安堵したものもいれば、苦々しく思ったものもいる。

テクノロジー界の巨人であるGoogleは2018年6月7日(米国時間)、同社の同意収集ツール「ファンディングチョイス(Funding Choices)」用に設けていた制限数を増やすと発表した。パブリッシャーは、このツールを用いてアドテクベンダーに代わってユーザーの同意を取りパーソナライズド広告を表示することができるが、その数は(Googleを含めて)12に制限されていた。業界情報メディア「アドエクスチェンジャー(AdExchanger)」が最初に報じたように、パブリッシャーが同意を取れるベンダーは無数になると、Googleは言っている。

12というベンダー数

ベンダー数が12に制限されたことは、ファンディングチョイスのベータテストに参加したパブリッシャーにとっては大きな障害だった。これは、Googleがあとに廃棄して、より柔軟なバージョンへと移行することを可能にするための方策だ。パブリッシャーは、リストに載せるベンダーの数を自分で決められる柔軟性を求めていた。Googleはその求めに応じ、製品仕様を変更しようとしている。

Googleの広報担当者は次のように語った。「業界や顧客のフィードバックをもとに、ファンディングチョイスを使ってウェブサイト上でユーザーの同意を得るパブリッシャー向け上限をなくすことにした。この前進によって、パブリッシャーは、リストに載せたいベンダーをいくつでも選べる」。

ファンディングチョイスの同意管理プロバイダー(Consent Management Provider:以下、CMP)を利用しているパブリッシャーが同意を得られるベンダーの数を制限する動きは、パブリッシャーやアドテクベンダーを不安に陥れてきた。12というベンダー数は異常に少ないと思われていたからだ。ほとんどのパブリッシャーは、プログラマティック広告の売上を維持し、サイト上でさまざまな解析機能を実行するために、少なくとも20のベンダーを使っている。

パブリッシャーの反応

自社のCMPを作れるほどのリソースを持つ大手パブリッシャーは、この制限をさほど気にしてこなかった。あるパブリッシャー幹部は、「ベンダー数を12に制限することで彼ら(Google)は自分の首を絞めていた。(ファンディングチョイスは)弾みがつかなかった」と話した。

主要パブリッシャーのいくつかは、制限がなくなるという知らせに肩をすくめ、この変更が、GDPRを発端にGoogleとパブリッシャーのあいだで続く綱引き合戦から生まれた緊張や不信感を和らげることはほとんどないと示唆する。

別のパブリッシャー幹部はこう述べる。「Googleの(CMPの)180度の方針転換は、ビジネスに焦点を当てた結果だ。たった12のベンダーで満足する人はいなかったので、制限しすぎることで彼らはビジネスチャンスを失ってしまった。我々のCMPには(パートナーのアドテクベンダーが)80いるから、12はとんでもなく少ない。Googleはそれを知っていながら、世界を支配できると思っていたのだ」。

エコシステム内で自由な運営を続けるために、GoogleがファンディングチョイスCMPにどのような条件を設けようとも受け入れるしか選択肢のない中規模・小規模なパブリッシャーにとって、制限撤廃は嬉しいニュースだろう。ファンディングチョイスCMPのオプションを利用するかどうかを決めかねていた人は、すぐに飛びつく可能性がある。

IABのフレームワーク

Googleがインタラクティブ広告協会(IAB)のフレームワークに準拠すると約束する前、GoogleかIABか、あるいはまったく違う基準で機能している両方か、どのエコシステムに賭けるべきか、考えあぐねていたパブリッシャーがいた。Googleがコンプライアンスに対して厳格な同意主導型アプローチをとる一方で、IABフレームワークはよりソフトなオプトアウトまたは合法的な正当な利益のアプローチをとるビジネスを認めるように作られている。ベンダー数の制限撤廃はビジネスによりよく適合するのに役立つはずだと、業界幹部たちは考えている。

パーチ(Purch)の欧州ゼネラルマネージャーを務めるアンドレ・バーデン・センパー氏はこう語る。「(GDPRの)全体のインフラストラクチャーで作業が必要だ。Googleは、彼ら自身が躊躇しているという事実によって、マーケットを躊躇させもした。だからGoogleが方針を変更してIABのフレームワークに沿ったものにするというのはよいことだ」。

ある大手パブリッシャーの幹部は、「GoogleがIABのフレームワークに近づけば近づくほどよい。両者間の矛盾が、同意を得る過程で大きな対立を生み出す可能性をはらんでいて、それは業界にとってはよくないことだ。さらに重要なのは消費者にとってよくない」と話す。

Googleの広報担当者は、今回のベンダー数の制限撤廃という決定は、フレームワークへの参加についてのIABとの話し合いとは別のことだと述べた。

Googleに対する批判

GDPRに準拠していることを保証できるまでいくつかのアドテクベンダーを自社のエコシステムから切り離すことも含め、Googleによる最新の方針変更は、GDPR発効直後に多くのビジネスを大混乱に陥れた。パブリッシャーはさらに、「受け入れるか去るか」というGDPRへのGoogleのアプローチについて彼らが感じた警告を声高に批判している。

4月には4つのパブリッシャー業界団体がGoogleの最高経営責任者(CEO)サンダー・ピチャイ氏に公開書簡を送り、パブリッシャーが抱える7つの重要懸念に至急対応するよう同社に要求した。これに応えてGoogleは、ニューヨークで開催した公開ミーティングにパブリッシャーを招待し、その様子はロンドンなど3つのGoogleのオフィスにも動画で同時中継した。

大手パブリッシャーの多くはこのミーティングに参加せず、回答を書面で得ることを希望した。「Googleは我々の質問にひとつも答えておらず、(今回のCMPのベンダー数の制限撤廃は)単に、アドテクベンダーにやさしいIABの軌道内にあるエコシステムとのあいだにできた緊張を和らげることだけを狙った行為だ」と、パブリッシャーの業界団体デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)のCEOであるジェイソン・キント氏は語る。「特に、Googleは、自社が望む同意システムのリスクをパブリッシャーに負わせたいだけなのだと考えると、その意味はさらに増す。ベンダー数の制限撤廃は、アドテクベンダーエコシステムからの支持を得ようとしたGoogleの悲しい試みに見えるだろう」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)