Googleは5月23日、マーケター向けの無料ツール「Googleアトリビューション(Google Attribution)」のロールアウトを開始した。誰もがアトリビューションにアクセスできるようになるのはいいことだが、Googleが自社チャネルを測定して評価を水増しすることを、マーケターは警戒している。
Facebookは3月に、マーケター向けアトリビューション(間接効果)ツールを導入した。それから間もない5月23日に、Googleは、マーケター向けに独自の無料ツール「Googleアトリビューション(Google Attribution)」のロールアウトを開始。誰もがアトリビューションにアクセスできるようになるのはいいことだが、マーケティング担当幹部は、Googleが自社チャネルを測定して評価を水増しすることを警戒している。
Googleアトリビューションは、特にGoogleアナリティクス(Google Analytics)、アドワーズ(AdWords)、ダブルクリック(DoubleClick)といったプラットフォームのデータを統合するよう設計されている。たとえば、あるキャンペーンでソーシャル、メール、検索それぞれに由来するコンバージョン件数をブランドに提示できる。Googleがアトリビューション分野に進出するのは、これが初めてではない。同社は昨年、「Googleアナリティクス360(さんろくまる)スイート」の一部として、有償のアトリビューションソリューション「Googleアトリビューション360」を発表。GoogleアトリビューションとGoogleアトリビューション360の違いは、後者の方が高度で、広告への支出が多い顧客が、プログラマティックやテレビ、検索に関するデータなど、マーケティングチャネルの全データを一本化するのに役立つ点だという。
「Googleは監視されるべき立場だ」
広告ホールディングス世界最大手WPPのCEOマーチン・ソレル氏が昨年指摘したように、GoogleとFacebookが自社チャネルを測定する問題は、マーケターにとって依然として大きな懸念材料だ。メディアエージェンシーのクロスメディア(Crossmedia)でCEOを務めるキャムラン・アサガー氏は、利害の衝突を排除できないGoogleやFacebookのアトリビューションサービスを利用するつもりはないと断言する。
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「我々は利害の衝突をもたらすベンダーを全力で避ける。それがメディアであれ、アドテク企業であれ」と、アサガー氏は語る。「Googleはメディア企業だ。それゆえ顧客は、メディアの販売と無関係な信用できるサードパーティーとともに、Googleとすべてのチャネルを監視すべきなのだ」。
ソーシャルインテリジェンス企業ユニファイド(Unified)の共同創設者でCEOのジェイソン・ベッカーマン氏も、「政教分離と同じで、建前通りにはいかない」と考えている。大きな問題は、伝えるべき測定値をGoogleが気に入るのか、という点だ。「ライバルの広告効果がより高いという結果になると、Googleは自らの立場を悪くしかねない」と、ベッカーマン氏は指摘する。「Googleの狙いは、マーケターにとってのワンストップショップになり、彼らのマーケティングを一手に引き受けること。公平性を保つには、深く関わりすぎてしまった」。
「無料なので理解はしたい」
大手エージェンシーのヒュージ(Huge)でデータサイエンス責任者を務めるデビッド・ロシッター氏も、Googleが自社メディアと他社メディアを公平に扱えるのか、またその方法についても、マーケターは注意すべきであることを認める。ただし、GoogleやFacebookなどが提供するアトリビューションツールを使うことには前向きで、同氏のチームは顧客のためにGoogleアトリビューション360をテストしている。
「批判的な視点を持ち続けることはつねに望ましい。Googleアトリビューションは無料の製品なので、データがどのように使われているのかを理解することは重要だ」と、ロシッター氏は語る。「ただし我々は、プラットフォームにとらわれず、さまざまなアトリビューションモデルを利用している。つまるところGoogleは、『Gmail』や『Android』製品を通じてモバイルとデスクトップを理解している。だからこそ、他社には難しいかもしれないクロスデバイスデータを利用できるのだ」。
データマーケティング会社マークル(Merkle)のアナリティクス責任者を務めるベン・ゴット氏は、Googleのアトリビューションツールの最大級のメリットは、タグ付けと統合をGoogleの既存のエコシステムが扱うので、ほかでは一般的な数カ月や数年ではなく、数日や数週間で測定を行える点だ、と付け加えた。「我々は過去にGoogleのアトリビューションツールを精査したこともある。データが整理されていて正確だった」。
「独自ツール開発を勧める」
だが、エージェンシーのドイチュ(Deutsch)ロサンゼルス支社でバイスプレジデント兼グループメディアディレクターを務めるステファニー・ワドル氏から見ると、それでは不十分だ。同氏のチームは、以前にGoogleの無料のアトリビューションツールを利用。今後Googleアトリビューション360をテストする見込みだが、ワドル氏は、広告主が登録するアトリビューションツールはどれも、特定のメディアや行動に偏ってコンバージョンを予測し、少数のコンバージョンからモデル化されると考えている。
「顧客やエージェンシーに帯域幅と強力な分析チームがあるなら、ログファイルデータを利用して、独自のアトリビューションツールの開発を勧める」と、ワドル氏は語った。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)