ますます懸念が高まる、Amazon の「倉庫業務」の労働環境 : 従業員の感染発表を受けて

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Amazonは、非正社員に過酷な環境で働かせていると長年にわたり批判されてきた。長時間にわたる労働や給与の低さ、福利厚生の貧弱さについて告発する元従業員は後をたたない。かつてこれはAmazonの拡大戦略の一貫と考えられていた。Amazonはすべてを扱う店であり、数日(ときには数時間)以内に商品を届けるには、現場に大量の人員が必要なのだと。

だが、3月の終わり頃から、これが切迫した問題として顕在化してきた。新型コロナウイルスの感染拡大によって労働者の権利についてより多くが求められるようになり、オンデマンドの時代に働くことの危険性が浮き彫りとなる実例も明るみになりつつある。現在コロナウイルスのテストで陽性反応が出たAmazon従業員が増えつつあり、現場の人員への保護を訴える声は日に日に大きくなっている。

危険を増す環境

たとえば3月末に、ペンシルバニア州のAmazon倉庫では従業員3名のコロナウイルス感染が発表された。従業員やその関係者らによれば、同社が提供した感染に関する情報は不十分なもので、対応にも及び腰だったという。ある従業員はFacebookに「私たちは『必須』業務に従事しているが、本当のところは『犠牲になってもらう存在』なのだろう」と投稿している。同倉庫に勤めるある従業員の娘は「業務に大きな変化はない」と語っている。「ソーシャルディスタンスを試みてはいるが、労働は長時間に渡る」という。

こういった例は枚挙にいとまがない。4月第1週に、Amazonのニューヨーク倉庫で働く従業員グループが自分たちの労働環境について声を上げた。Amazonが同施設内の感染者数について情報を出し渋っていると訴えたのだ。さらにAmazonは感染の疑いがある従業員がいるにも関わらず、テストで陽性の結果が届くまで働かせ続けたともされている

Amazonにコメントを求めたところ、同社広報担当のティモシー・カーター氏は、次のように回答した。「当社は、保険当局および医療専門家のガイドラインを遵守しており、現場従業員の安全を確保するため、極めて強力な措置を講じている。当社の従業員は、地元のために働く英雄であり、この危機下において人々が必要としている物を届ける支援を行っている。米国だけでも50万人がカスタマーを支えるため働いており、当社はその一人ひとりを支援するため行動している」。

懸念を表明する従業員が増えるなか、Amazonの取り組みにも変化が生じている。たとえば無給休暇とはいえ、倉庫の従業員が無期限に休暇を取れるようにしたのもそのひとつだ。同社はコロナウイルスのテストで陽性だった従業員には有給休暇を与えるとしているが、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)はこの新計画が正確に実施されていないと報じている。Amazonはほかにもテストのメーカーとともに、従業員の体調不良を大規模にテストする方法を見出そうと動いている。前述のカーター氏は、「時給を2ドル(約216円)上げ、時間外労働には倍額支給、通常のパートタイムおよび短期契約の従業員にも有給休暇」を追加したと述べている。

こうした批判を受けているのはAmazonだけではない。4月第1週にかけて、大量の従業員が必須業務を行っている多数の企業で、労働環境の安全性が問題視されている。たとえばインスタカートのショッパーは、業務における補償と福利厚生の改善を要求してストライキを行った。ターゲット(Target)が展開する配達サービス、シップト(Shipt)の従業員もストライキを計画していると報じられている

つまるところ、従業員の権利についてこれまでも長年問題視されてきた小売大手に対する風当たりが強まっているのだ。自宅隔離を行う人が増え、自宅外勤務の健康上のリスクが認知されている現在、企業の内外から毎日従事している従業員を守るべきだという声が高まっている。それを受けて改善した企業もあるが、それでも不十分だと考えている従業員は多い。

Amazonのある従業員は「これまで年中無休で続けられた仕組みを変えるのは簡単ではない」と、Facebookに投稿している。「マスクや手袋を着用して2メートル離れ、消毒するように言われている」と、ある従業員の娘は語る。「だが職場自体が人混みなのだ」。

Amazonの広報担当は、同社が「従業員を守るため積極的に取り組んでおり、全施設の清掃やソーシャルディスタンスの維持、ドライバーとカスタマー間が宅配時により距離をとるための方策をとっている」と語る。

イタリアでは従業員が11日間のストライキを行った結果、Amazonは新しい健康と安全のための取り組みを約束した。全米小売卸売デパート組合代表スチュアート・アッペルバウム氏は「世界中でAmazonの従業員が声を上げていることからも、彼らがこうした懸念を対等な立場で聞き入れてもらう必要に迫られているのが見て取れる」と語る。「イタリアではフルフィルメントセンターの従業員による11日間のストでようやく、休憩時間の増加や施設の清掃や消毒、休憩時間と作業時間の分散を勝ち取った」米国の労働組合もまた、米国内の倉庫で同様の取り組みを行うよう求めている。

行き届かない監視の目

一方、従業員の家族は不安な状態のなか、相談できる機関がないことに悩んでいる。たとえばペンシルベニア州にある倉庫の従業員の娘は、複数機関に状況を報告しようと試みた。何時間もかけて州庁や労働安全衛生局、地元の警察、自治体に電話をかけたが、いずれもほかの機関に相談するようたらい回しされたという。「どこも安全のために行動しようとしてくれなかった」と、彼女は語る。「担当してくれる機関が必要だ」。

さらに、正社員ですら現状に満足してはいない。あるAmazon社員は、社内メールで次のように書いている。「いまは非常に厳しい、特殊な状況下にあるのは確かだ。だがこうした振る舞いは当社がカスタマーとの関わり合いで体現しようとしている(リーダーシップ原理の)イメージや価値にそぐわない」。このメールはRecode(リコード)を通じて公表された。「私たちはこういった状況下でこそ、高い基準でリーダーシップを発揮し、何をすべきか考える気骨を見せねばならない」。

何よりも大きな焦点となっているのが、必須業務と非必須業務の区別だ。Amazonの倉庫業務は必須業務とされており、またAmazonは必須ではない商品を倉庫に運び込むのをやめている。だがなかには、こうした業務が本当に必要なのか疑問に思っている従業員もいる。子供向け玩具の箱の写真をSNSに投稿した従業員もいる。ニューヨーク州の倉庫で働く従業員はニューヨーク・タイムズに次のように語っている。「Amazonは必須業務と呼ばれるに値する行動を取るべきだ」。

取り組みを改善したといっても、もはや遅すぎると指摘する声もある。上記の従業員の娘は「何だって防げるはずだ」と語っている。「私たちはすでに、何をするのが間違いなのか分かるだけの情報を得たのだから」この時期にあって、何をもって必須業務と呼ぶかは非常に大きな課題だろう。彼女の言葉を借りれば、「品物が2日以内に届かなくなるだけ」なのかもしれないのだから。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)