クーラースクリーンズ(Cooler Screens)は、小売店舗の冷凍・冷蔵食品棚のガラス扉に、広告表示用のデジタルスクリーンを提供するリテールメディア企業だ。創業者のアルセン・アヴァキアン最高経営責任者(CEO)は、初参加するアドバタイジングウィークで、広告主たちに自社の製品を紹介することに自信を深めている。
クーラースクリーンズ(Cooler Screens)は、小売店舗の冷凍・冷蔵食品棚のガラス扉に、広告表示用のデジタルスクリーンを提供するリテールメディア企業だ。すでに、ドラッグストアのウォルグリーンズ(Walgreens)やスーパーマーケットのクローガー(Kroger)らが同社のスマートスクリーンを導入しているが、新型コロナウイルス禍の勃発以来、その営業圏は着実に拡大している。
これまでにクーラースクリーンズは、750の店舗に約1万台のスクリーンを設置し、月間視聴回数は全店舗合わせて7700万回を超える。この業績好調を背景に、創業者のアルセン・アヴァキアン最高経営責任者(CEO)は、初めて参加するアドバタイジングウィークで、広告主たちに自社の製品を自信満々に紹介した。今年のアドバタイジングウィークは、10月18日から21日まで、ニューヨークとオンラインで開催された。
米DIGIDAYは、アヴァキアン氏にインタビュー取材をおこない、ハイブリッドで開催されるこの業界イベントへの意気込み、対面でのネットワーキングの復活、リテールメディアの現状、今日の企業が直面するサプライチェーンの問題などについて語ってもらった。なお、読みやすさを考慮して、発言内容は編集および要約している。
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――アドバタイジングウィークは、コロナ後、対面とバーチャルのハイブリッドで開催する主要な業界イベントとしては、さきがけのひとつとなった。対面でのネットワーキングが復活することについて、どう思うか?
10月第3週はDPAA(デジタルOOHの業界団体)主催のイベントに出席した。良い意味で驚いた。コロナ以降、初めて出席した広告業界のイベントだったが、意外にも、会場は多くの人々でにぎわい、皆、不安な様子もなく楽しんでいた。誰もが、対面での意見交換や人脈作りに飢えていたのだと思う。ワクチン証明に関しては非常に厳しかった。ワクチン証明を提示しなければ、対面でのイベントには参加させないという、非常に明確な対応だった。
――コロナ禍の影響で、クーラースクリーンズに対する一般の評価や、広告主への売り込み方に変化はあったか?
誰もが小売の重要さを思い知った。コロナ禍の勃発当初こそ、eコマースはまさに「救世主」だったが、いまになってみれば、ウォルマートやクローガーのような場所があったからこそ、コロナ禍を乗り越えることができた。おかげで、実店舗が死んだという神話は払拭された。実店舗は健在だ。プライバシー規制やサードパーティCookieの廃止など、この1年半に起こった広告業界のほかのトレンドと相まって、リテールメディアこそ次なる潮流だという認識が深まった。
――リテールメディアの台頭からすでに何年も経つ。なぜ「次なる潮流」なのか?
当初、リテールメディアといえば、Amazonやeコマースが中心だった。しかし、いまではインストアとドットコムが一体となり、もっと大きなものへと形を変え、進化している。我々が先頭に立って、新しいリテールメディアを定義しなければならない。IABの人たちと話をしたが、彼らにとってのリテールメディアはeコマースでしかない。DPAAでもいろいろな人たちと議論したが、彼らもまた、従来的なOOHの世界しか見ていない。インストアの力学など論外だ。プライバシー保護規制やCookieなき未来を見据えて、企業やブランドは、現実の消費者と安全に接するための方法を模索している。伝統的な広告概念が復活するに伴って、リテールメディアの価値も高まるだろう。
――なぜそう思うのか?
店内で買い物客と接触するということは、現実の人間と接触するということだ。広告を見ているのが本当に人なのか、実はボットではないのかと心配する必要はもはやない。従来的なインターネットマーケティングの信頼性は、安全性の観点、検証の観点、エンゲージメントの観点から常に疑問視されてきた。実店舗におけるリテールメディアでは、こうした問題は消失する。そこでは人々が実際に物を買い、自ら進んでブランドと深く関わる。そうなると、個人情報に基づくターゲティングに対して、コンテクストに基づくターゲティングへの期待が高まるのではないか。そして文脈を手がかりにターゲティングを行うというのなら、買い物の瞬間に勝る文脈はない。コンテンツ、コマース、コンテクストが揃えば最強だ。この三位一体が、これからのリテールメディアを定義する。
――多くのブランドが直面しているサプライチェーンの問題は、クーラースクリーンズにどのような影響を与えると思うか?
我々は独自のセンサー技術を活用して商品棚の在庫を追跡し、ブランドパートナーを支援している。ブランドパートナーの多くは、商品棚に商品がないときには広告を出したがらない。広告効果を期待できないインプレッションを買っても、広告費が無駄になるだけだ。クーラースクリーンズなら、商品棚に商品があるときにのみ広告を表示し、欠品時は広告費を節約できる。あるいは、販売目的の広告メッセージから、ブランディング重視のメッセージに変更することも可能だ。今日、多くのブランドがサプライチェーンや広告プラットフォームの問題などで、大きなストレスを抱えている。業界は、悩めるブランドの問題解決に、もっと支援の手を差し伸べるべきだろう。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)