地域SNSのネクストドア、巨大広告ビジネスをひそかに構築:検証した住所情報を駆使して

近隣住民のソーシャルネットワークであるネクストドア(Nextdoor:日本版も近日ローンチ)が、広告売上の増大を狙っている。創業7年のネクストドアのユーザーは、米国の19万の住所が検証された人ばかり。つまり、広告主は実際の人々を具体的な場所でターゲティングして、オンラインの世界とオフラインの世界を一体化することができる。

最高収益責任者のローレン・ネメス氏によると、昨年は収益が3倍に増えた。クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)やベンチマーク(Benchmark)など大手投資会社からベンチャーキャピタル資金2億8520万ドル(約315億円)の支援を受けているネクストドア。収益額と黒字かどうかについては明かさなかったが、フォーチュンの以前のインタビューでは、CEOのニラブ・トリア氏が2017年の収益を「数千万ドル」と見積もっている。

ユーザー数はネクストドアによると「数千万人」で、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

広告が好調な理由

「広告事業が3倍になったのは、私に才能がありチームに天才たちが揃ったからばかりではない。広告商品をスムーズなものに大きく進化させたからというほうが大きい。以前はウォールドガーデンで、サードパーティのデータを受け入れていなかったが、現在はCRMの取り込みとルックアライクモデリングを実施している」と、ネメス氏は語る。

たしかに、ネクストドアは広告プラットフォームの成熟に投資をしてきた。12月にはプログラマティックを導入し、広告主はネクストドアの営業チームと直接やり取りしなくても済むようになった。ネメス氏によると現在「広告主の数は数百」だという。主な業界はホームセキュリティ、小売り、食事、金融サービス、テック、通信事業者、自動車となっている。

ネイティブディスプレイ広告、ネイティブ動画広告、リッチメディア広告、そしてメール広告と、広告フォーマットは複数ある。ネメス氏によると、最低支払額は2万5000ドル(約270万円)で、CPMは広告フォーマットとターゲティングにより8ドルから30ドル(約885円から3320円)。これは複数のバイヤーが認めた。

クライアントたちの声

IAC傘下の住宅所有者向けオンラインマーケットプレイスであるホームアドバイザー(HomeAdvisor)は、2017年の終わりころに、ネクストドアへの広告をはじめた。ネクストドアがニュースフィードとニュースレターでスポンサード投稿を開始したのは、2017年4月である。ホームアドバイザーのCMO、アリソン・ローリー氏は、関心をもったのは住宅所有者オーディエンスのマッチングが理由だったという。なお、ネクストドアによると、会員の74%が住宅を所有している。

「ホームサービス分野は大きいが、オンラインで採用されているのはほんの一部だ。大半の人は友人や近所の人を頼る。ネクストドアは、従来からあるオフラインの口コミとオンライン行動のあいだに橋を渡している」と、ローリー氏は話す。

ドア用ハードウェアを製造するシュラーゲ・ロックス(Schlage Locks)は、2018年夏とホリデーシーズンにネクストドアでの広告を開始した。消費者マーケティング担当ディレクターのジェイソン・オーエンズ氏は、自身が2年間、ネクストドアを利用していて、自社が住宅所有者にリーチするのにどのように使えるだろうかという関心があったと語る。

「あまり混んでいない広告スペースで確認が取れている住宅所有者にリーチできれば、ほかのデジタルマーケティングのようなノイズを逃れられるのではないかという願望は会社にあった」とオーエンズ氏。

競合他社への優位性

もちろん、近隣の住人や非常に特定されたローカル市場に広告主がリーチできるプラットフォームはネクストドアだけではない。クレイグズリスト(Craigslist)やイェルプ(Yelp)、それに2017年にホームアドバイザーに統合されたIAC傘下のアンジーズリスト(Angie’s List)も、ローカルリスティングを提供している。またFacebookやGoogleでもローカルリスティングは可能で、Facebookはローカルプロダクトの拡大にずっと取り組んでいる。

ネメス氏によると、確認された身元が欲しいというのが、広告主から聞く、特に多い関心だという。ネクストドアでは、携帯電話の請求書など住所を証明するものを要求して、ユーザーの身元を確認している。この点は、ほかのプラットフォームに対抗できている。たとえば、Facebookも実名とコミュニティを売りにしているが、フェイクアカウントやハラスメントがあとを絶たない。

キャンペーンのターゲティングは、位置と時刻に基づいて実施できる。また、関心、世帯構成、ローカルな行動などを通じてユーザーを具体的にターゲティングすることも可能だ。たとえば、ユーザーが犬を飼っているかもネクストドアは把握している。サードパーティのターゲティングも、オラクルやライブランプ(LiveRamp)を通じて提供。自社のCRMデータをアップロードしてネクストドアのルックアライクモデリングを利用することもできる。

シュラーゲ・ロックスのオーエンズ氏は、「我々はローカルのターゲティングが気に入っている。具体的なエンゲージメント率だけではなく、(自社製品について)コメントや質問をしているユーザーも把握できた。親密な対話の方が多かった」と語った。

対ローカルビジネス

ネクストドアは2019年、エージェンシーやブランドの「購入時のフリクション(摩擦)排除」に注力するシナリオを描いているとネメス氏は語った。また、さらなる広告フォーマットの発表と、広告ターゲティングとパーソナライゼーションの向上も計画している。

ネクストドアには、マネタイズがまだされていない部分がある。ローカルビジネスだ。ネメス氏によると、小さなビジネスが200万ほど参加しているが、そうしたところが近所のニュースフィードに自社サービスについて投稿したいという場合、ネクストドアは支払いを求めていない。ミネソタ州ローズビルのマリー・ガイ氏はそんな小さなビジネスを営んでいる。サービス内容は芝生と庭の手入れで、宣伝にネクストドアをずっと使っている。

「うちのようなビジネスが宣伝するのをネクストドアが容認してくれているのはありがたい。私の投稿はずっと残っていて、そうした投稿やおすすめがいつも見られている」とガイ氏。「私の場合、毎年(およそ)数十件から二十数件の問い合わせがある」と語った。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)
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