[ DIGIDAY+ 限定記事 ]「インフォメーション(The Information)」の報道によると、Amazonはいま、ニュースに特化した広告付きの無料動画ストリーミングアプリを開発しているという。このアプリは「Fire TV(ファイヤーTV)」デバイス用で、ライブ配信とオンデマンド配信のニュース動画番組を配信するようだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Facebookと対立し、Appleに警戒心を抱いているニュース動画パブリッシャーが、新しいプラットフォームとの提携を検討している。それは、Amazonだ。
テクノロジー系メディアの「インフォメーション(The Information)」が3月29日(米国時間)に報じたところによると、Amazonはいま、ニュースに特化した広告付きの無料動画ストリーミングアプリを開発しているという。このアプリは「Fire TV(ファイヤーTV)」デバイス用で、ライブ配信とオンデマンド配信のニュース動画番組を配信するようだ。この計画に詳しい複数の情報筋によれば、Amazonは5月中旬の公開を目指しているが、夏頃に延期される可能性があるという。Amazonにコメントを求めたが、本記事の締め切りまでに回答は得られなかった。
ニュースアプリの全容
Amazonが計画しているニュースアプリには、決まっていないことがまだまだたくさんあるようだ。たとえば、Amazonと最近打ち合わせをしたというある情報筋によれば、Amazonは数週間前までライブ番組に「関心がない」素振りを見せていたという。だが、ほかの情報筋の話では、Amazonはライブ番組に興味を持っており、ライブニュース企業と打ち合わせを重ねているそうだ。同じように、Appleは当初、全国ニュースとローカルニュースの両方を網羅するアプリを提案していたが、最近になってローカルニュース戦略を再考し、参加するローカルニュース市場の割合が「70〜80%」に達するまで、ローカルニュースをアプリに追加しないことに決めたとある情報筋は語っている。
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ただし、Amazonがニュースに関心を持っているということは間違いない。同社の広告ビジネスが拡大を続け、2018年第4四半期には「その他」に分類される収益34億ドル(約3780億円)の大半を占めていたことを考えれば、明らかなことだ。同社は2018年末、ライセンスを受けた映画やテレビ番組を配信する無料の動画ストリーミングアプリ「フリーダイブ(Freedive)」をリリースした。また、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合放映権やウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)が売り出し中のローカルスポーツチャンネルの入札に参加している。
ニュース動画パブリッシャーにとって、Amazonの計画は、大規模なリーチを持つ大手プラットフォームで番組を配信して収益を得る新たなチャンスといえる。Amazonは1月、同社のFire TVデバイスが3000万人を超えるアクティブユーザーを獲得したと発表した。この数はロク(Roku)の2700万人を上回っている(ただし、どちらの人数も自己申告によるものだ)。
パブリッシャーとの関係
Amazonのニュースアプリにどのような広告機能が搭載されるのかは不明だが、同社はパブリッシャーの動画から得られた広告収益を分配することにしているという。ただし最低保証は設けていない。複数の情報筋によれば、収益の分配率を決める交渉は今も続いているようで、ある情報筋は、Amazonが当初60%の分配率を要求していたと明かしている。
「これはまさに交渉だ」と、この情報筋は話す。「我々が力説しているのは、彼らがオーディエンス保証やインプレッション保証を提供しないのなら、製品のリリース後にうまくいかなかったのでサービスをやめてしまうという最悪のシナリオを我々が回避するのは、ほとんど不可能だということだ。そのリスクを軽減するためには、我々の分配率を上げてもらう必要がある」と、この人物は語った。
ニュースパブリッシャーのなかには、オーバー・ザ・トップ(OTT)サービスに流れる広告支出や政治広告支出が増えていることや、Amazon自身がGoogleやFacebookに対抗しようとしていることを理由に、Amazonのニュースアプリの収益性を楽観視しているところもある。
「Appleの取り組みと比べれば、はるかに楽観視できる」と、ある情報筋はいう。「Fire TVのオペレーティングシステムやスマートホームデバイスとの連係機能を無視はできない」。
さらに2名の情報筋は、数カ月前からAmazonとニュース動画アプリの交渉を行っていると明かしたうえで、Amazonがアプリの開発に時間をかけていることを称賛した。
現状における問題点
ただし、その過程でいくつかの問題が起こっている。たとえば、Amazonはベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group:以前のオース[Oath])と提携し、ベライゾンを通じてニュース動画を配信することにしていた。そのためには、ベライゾンがパブリッシャーから許諾を得ておく必要があるが、Amazonの幹部にとっては寝耳に水の話だったという。
Amazonはまた、動画番組の音声を「すべてのAlexa(アレクサ)環境」に移植できるようにすることも要求している。動画資産を失いたくないと考えている一部のニュース動画パブリッシャーにとって、これは大きな障害だ。
さらに、アプリのユーザーインターフェイスや、ライブコンテンツとオンデマンドコンテンツの配信方法に関する問題も残っている。過去の試作アプリでは、Amazonがベライゾンのポータルから番組を抜き出してまとめた動画リストが表示されていた。
「そのあとで私が最初にしたことは、我々の(ベライゾンとの)ライセンス契約を確認し、Amazonが我々の動画をベライゾンのポータルから抜き出せないようにすることだった」と、この試作アプリを見た情報筋は述べている。
懸念を抱くパブリッシャー
最終的に、Amazonのニュース動画アプリが成功するかどうかはわからない。また、たとえ成功したとしても、顧客との関係構築がきわめて重要ないまの時代にあって、ニュース動画メディアは新たな仲介者となるプラットフォームに自社のビジネスを委ねてしまうことになる。
このことを懸念して、少なくとも1社のニュース動画メディアは、Amazonのニュースアプリで配信を行わないことに決めた。
「このアプリはニュースブランドのコンテンツをばらばらにし、ひとつひとつのニュースコンテンツを商品として販売するものだ。私から見れば、これはFacebookがニュースフィードでニュースに対して行っていたことと変わらない」と、このニュースパブリッシャーはいう。「長期に渡ってこのゲームに参加するというのなら、自社からビジネスを奪う以外のことは何もしない製品に加わる理由はいったい何なのだろうか」と、この人物は語った。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)