Google が 位置情報 のポリシー変更へ:関連市場はますます縮小か

Googleが2020年後半にポリシー変更を計画している。その内容は、ユーザーがアプリを表示していないときに位置情報を収集するアプリの開発者に対し、事前の承認プロセスを義務付けるというものだ。

Googleがブログの投稿で説明したこのアイデアは、位置情報を不必要に収集しようとするアプリを締め出し、ユーザーのプライバシーを保護することが狙いだ。位置情報ベースの広告市場は、消費者の意識の高まり、規制の強化、オペレーティングシステムの仕様変更によって、GPS信号を利用した消費者ターゲティングをすでに縮小せざるを得なくなっており、今回の動きは業界の混乱をますます加速させるに違いない。

8月からGoogleの承認が必要

Googleは2月19日付のブログ記事で、位置情報データをバックグラウンドで収集する新しいアプリは、8月3日よりGoogleの承認を得なければ「Google Play」ストアに登録されなくなると説明した。また、既存のアプリについても、11月3日から同じポリシーが適用されるという。Googleは開発者に対し、ユーザーがアプリを表示したり使用したりしていないときにデータを収集されることを望んでいるかどうか、位置情報データがなくても同じ体験を提供できないかどうか検討するよう求めている。ただし、スケジュールは変更される可能性がある。

位置情報ベンダーの多くは、アプリ開発者にお金を払って、自社のソフトウェア開発キット(SDK)をアプリに組み込んでもらっている。ユーザーにとって、位置情報データの共有は、ランニングアプリや天気アプリでは意味があるが、懐中電灯アプリや電卓アプリでは許可する理由に乏しいといえるだろう。ベンダー各社は、位置情報を収集する前にユーザーの同意を求めていると主張するが、ユーザーがそのデータを利用する企業の種類や目的を完全に理解しているとは限らない。

「Android」の新しいバージョン(「Android 10」以降)では、アプリがユーザーの位置情報を収集しようとするたびに、許可を求める画面が表示される。そのため、ユーザーはアプリを使用するときにのみ位置情報へのアクセスを許可できる。Googleのブログ記事によれば、Android 10ではユーザーの「半数以上」が「アプリの使用中のみ許可」を選択しているようだ。さらに「Android 11」では、位置情報の共有方法をユーザーがより細かく管理できるようになる。

Appleのポリシーに準じた動き

今回の変更によって、Googleの位置情報に対するスタンスはAppleに準じたものになる。Appleが同じような許可画面や管理機能を導入したのは、2019年9月にリリースした「iOS 13」からだ。位置情報の検証を行うロケーション・サイセンシズ(Location Sciences)によると、iOS 13のリリース以降、バックグラウンドで共有される位置情報データは68%減少したと、CEOのマーク・スレード氏はいう。Google Playのポリシーが変更されれば、GPSデータを利用できる機会はさらに少なくなる可能性が高い。

「Google Playストアではチェック・アンド・バランスの仕組みがそれほどなかったため、アプリ開発者はiOSよりも多くのことが許されてきた」と、スレード氏は話す。だが、今回のデータ利用制限は、特に「大量のGPSデータを供給してきたロングテールアプリにおそらく影響するだろう」。

だが、AndroidとiOSで最近行われた変更によってGPSデータの供給が減っているにもかかわらず、位置情報データの価格はこの半年間変わっていないようだ。「この市場は自由市場のような反応を示していない」と、スレード氏は語った。

メディアバイヤーのなかには、実店舗の近くに来た人に広告を表示することに価値を見出す人もいる。しかし、「位置情報データとそのスケールには、常に疑わしさがつきまとっている」と、データ企業リップル(Rippll)のCEO、ダグ・チズム氏はいう。「私が思うに、一部の(位置情報)アドネットワークは、リーチやハイパーターゲティングが可能になることを説明するうまい方法を見つけ出した。奇妙な言い方だが、彼らが見つけ出したのは、そうしたことが可能になるというストーリーを売り込む方法だ」。

「魔法の薬のようなものではない」

もっとも、現実には多くの広告主が、ベンダーから提供される位置情報データの正確性を検証していない。そう話すのは、メソッド・メディア・インテリジェンス(Method Media Intelligence)のマーケティング分析ビジネス担当CEO、シャイリン・ダール氏だ。たとえば、一部のアトリビューションプロバイダーやターゲティングプロバイダーは、広告IDがない場合に、IPアドレスなどほかのシグナル(複数のユーザーやデバイスが含まれていることが多い)を調べたり、使用されているデバイスやブラウザの種類を調べたりして、データを水増ししているという。

「位置情報データは、キャンペーンの効果を高める魔法の薬のようなものではない」と、ダール氏はいう。それでも、マーケターの側に、位置情報ベンダーから提供されるデータを検証しようという積極的なインセンティブが生まれるわけではない。検証に余分なコストがかかる場合は特にそうだ。「検証しなかったからといって、お金の面で問題を感じる人は誰もおらず、ペナルティもない」、少なくともすぐに明らかになるような問題はないのだからと、ダール氏は付け加えた。

分析企業のビームレイ(Beemray)でビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるラマン・シドゥ氏によると、ターゲティングの面からいえば、市町村レベルのデータがあればほとんどのキャンペーンにとって十分だという。また、位置情報データはターゲティングよりもインサイトに適していることが多いと、同氏は話す。

一部ベンダーはすでに厳しい状況に

一部の位置情報ベンダーは、AppleとGoogleが行った最近の変更に加え、世界各地で登場している新たなプライバシー規制によって、すでに厳しい状況に追い込まれている。2018年には、グラウンドトゥルース(GroundTruth)やバーブ(Verve)といった位置情報ベースの広告企業が、「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」への懸念を理由に欧州から撤退した(バーブは大規模なリストラを行ったあと、1月にドイツの投資グループであるメディア・アンド・ゲームズ・インベスト(Media and Games Invest:MGI)に買収された)。

同じ2018年には、フランスのデータ保護当局である情報処理及び自由に関する国家委員会(Commission nationalede l’informatique et des libertés:CNIL)が、フィズアップ(Fidzup)やティーモ(Teemo)、ベクチュアリー(Vectaury)といった位置情報ベースのアドテクベンダーに警告書を出した。ただし、CNILはその後、調査を終了し、彼らは罰金を免れている。

「(位置情報)データは市場での供給がすでに減少しているうえ、以前から信頼性にやや疑問があった。そのため、(広告主は)ほかのものを探すことになるだろう」と、ビームレイのシドゥ氏は予想している。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)