日常のお得情報を提供するサービスで知られるグルーポン(Groupon)だが、そこからの脱却を目指している。目標とするのは消費者がチケットや食品を注文できるだけでなく、ブランド各社の提供する体験型サービスや、繰り返し購入による割引情報なども探せるプラットフォームだ。
クーポンビジネスを展開するグルーポン(Groupon)が、Airbnb(エアビーアンドビー)と料理宅配プラットフォームとの提携を進めている。
日常のお得情報を提供するサービスで知られるグルーポンだが、そこからの脱却を目指している。目標とするのは消費者がチケットや食品を注文できるだけでなく、ブランド各社の提供する体験型サービスや、繰り返し購入による割引情報なども探せるプラットフォームだ。
同社は2000年代のはじめに地元企業が提供するさまざまな割引情報をメールで一斉配信することでブランドを構築した。だが、グルーポンのような毎日のお得情報や期間限定割引の紹介サイトはいまや斜陽で、同社は窮地に立たされている。そこで試みているのが、提携企業の多様化と、大手マーケターのプラットフォームへの引き込みによる事業転換だ。
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グルーポンの新CMOを務めるクレイグ・ローリー氏に求められているのは、この事業転換についてマーケターと消費者に周知すること。ローリー氏はREIでマーケティング部門のバイスプレジデントを務めていたが、今年3月にグルーポンに入社した。
「割引クーポンというこれまでのあり方から脱却しようとしている」と、ローリー氏は語る。「真のグローバルなマーケットプレイスを作ろうとしているところだ。新しいパートナーと提携し、これまでのように地元にとどまらない、幅広いサービスや体験を提供していく」。
グルーポンの現在の姿
現在、グルーポンのアクティブなカスタマーは世界で4700万人、そのうち米国のカスタマーは3000万人で、提携ブランドにはサムズクラブ(Sam’s Club)、コストコ(Costco)、パンドラ(Pandora)などがある。ほかにも、体験型サービスを提供する企業としてAMCシアター(AMC Theatres)やトリップアドバイザー(TripAdvisor)などが同社と提携。狙いは、プラットフォームに地元の小規模店舗だけでなく、米国大手ブランドを引き込むことだ。
「戦略的パートナー関係を結ぶ国内トップブランドの数を増やしている」と、ローリー氏は説明する。「ほぼオープンなプラットフォームにして、当社の非常に大規模なカスタマーベースにブランドが参入できるようにすることで、双方にとって有益なパートナー関係を結びたいと考えている」。
ブランドにとって真のECマーケットプレイスとなるように、同社はプラットフォームにおけるカスタマー体験の向上に取り組んでいる。毎日のお得情報のかわりに、グルーポンは現在、「クーポンレス」なインベントリー、すなわち商品やサービスの直接販売を行っている。同社のCEO、リッチ・ウィリアムズ氏によると、この分野で同社は前四半期比で20%の伸びを記録しているという。
同氏は第1四半期に投資家に向けた書簡のなかで、「なによりも大切なのはカスタマー体験の向上だ。グルーポンのクーポンレス化への取り組みはとりわけ重視している。前四半期でも述べたように、2019年はさらに大胆な取り組みを進めていく予定だ」としている。
「クーポンレス」の取り組み
この「クーポンレス」の取り組みの一環として、同社はプラットフォーム上でのチケット購入や直接予約などを行っている。グルーポンのアプリは、同社の発表によると、2億ダウンロードを記録している。消費者がプラットフォームに戻ってきてもらえるように、同社は特定の業者から繰り返し購入しているユーザーにキャッシュバックを提供しているグルーポンプラス(Groupon Plus)を一新することも検討している(ローリー氏は名称が変更される可能性が高いとしている)。
グルーポンのアプリは割引を中心とした仕組みから、毎日使うユーティリティアプリへと移行し、いつでも好きなものを買えて割引や特典の付いたサービスを展開することで消費者とより深い関係を築くことを狙っている。
コンサルティング企業メタフォース(Metaforce.co)の共同ファウンダーであるアレン・アダムソン氏は、同社のこの変化は理にかなったものだと指摘し、次のように語っている。「割引はいまやありふれていて、差別化になっていない。だから(グルーポンは)自らのあり方を作り変えようとしており、それ自体は賢い。グルーポンはクーポンにとどまらないビジネスモデルを目指しているが、進出しようとしている分野は競争がとてつもなく激しいのも確かだ」。
あるメディアエージェンシーの関係者は、グルーポンの変化は早く、まだ同社の計画の詳細を把握していないが、業界のニーズを埋めるようなサービスになるかは不明だとしている。
メディアへの投資方法
同社の方針転換がブランドに受け入れられるかは不透明だが、ひとつ確かなことは、グルーポンがビジネスモデルを変えなければいけないということだ。昨年7月に複数の関係者がテック業界ニュースサイトのRecode(リコード)に語ったところによると、お得情報の紹介というモデルからの客離れが進んでいるため、グルーポンは売却先を探していたという。
そのためローリー氏は、同社のメディアへの投資方法を調整したいと考えている。カンター・メディア(Kantar Medeia)によると、グルーポンの2018年のメディア投資は4380万ドル(約48億円)で、2017年の6450万ドル(約71億円)から大きく減少している。
同社にとって未開拓なのはソーシャルメディアで、ローリー氏もグルーポンはソーシャルへの攻勢が足りていないと認めている。また、グルーポンはYouTubeや映画広告、体験型サービスへの投資を増やすとしている。
「クーポンだけを提供し、割引情報だけを提供するプラットフォームから脱却しつつある」と、ローリー氏は語る。「ブランドへのサービス提供の背景にある理念やマーケティングへの取り組みは、グルーポンがこうした要素を多く取り入れ、本当の意味でローカルなマーケットプレイスとなったことの表れだ」。
Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)