このところCDPは勢いづいている。CDPは、主にブランドのファーストパーティデータを基に、複数のデバイスを通じてひとりの顧客についての単一ビューを提供すると約束するからだ。そのため、ベンチャーキャピタルの資金の多くがCDPに流れ込んでいる。
デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)とサプライサイドプラットフォーム(SSP)が、ベンチャーキャピタルの資金は尽きはじめていると気づく一方で、カスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)はその真逆で、テック幹部や投資家たちはこれをBtoCマーケターのための顧客関係管理プラットフォーム(以下、CRM)として見るようになっている。このところCDPは勢いづいている。CDPは、主にブランドのファーストパーティデータを基に、複数のデバイスを通じてひとりの顧客についての単一ビューを提供すると約束するからだ。
ベンチャーキャピタルの資金の多くがCDPに流れ込んでいる。たとえば、ブルーコア(Bluecore)は2017年10月に投資ラウンドのシリーズCで3500万ドル(約38億円)を調達し、エムパーティクル(mParticle)は同年9月に同額を得ている。セグメント(Segment)も2017年7月に投資ラウンドのシリーズCで6400万ドル(約71億円)を調達した。
「2018年の流行語になる」
CDP市場はまだ定義の途中だが、オークリンズ・デシルバ+フィリップス(Oaklins DeSilva+Phillips)のマネージングディレクターで、企業のイグジット戦略についてアドバイスを提供しているジョン・マシューズ氏は2018年、CDPはアドテク企業の買収ターゲットになるだろうと述べる。アドテクやマーケティングテクの収束を考えると、よりリッチで、より統一されたターゲティングデータを標的にする能力を下支えに、クロスオーバーな合併・買収活動がすでに起こっているからだ。「全体としてこれが、マーケターのためによりCRMに焦点を絞る方向へアドテク企業を動かすだろう」と、マシューズ氏はいう。
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エムパーティクルに初期段階で投資をしたエリック・フランチ氏もまた、CDPはいまホットな話題で、「とてつもなくメリットがある」ので、それ自体の市場が成長する可能性があると話す。フランチ氏は、CDPをアドテク企業に分類していない。
だが、データマネジメントプラットフォーム(以下、DMP)やCRMのソフトウェアが進化するにつれて、CDPがやると主張している多くのことを、これらでできるようになる。たとえば、DMPであるアドビ・オーディエンス・マネージャー(Adobe Audience Manager)の製品マーケティングマネージャーを務めるマット・スキナー氏によると、従来サードパーティーデータに依存していた主要DMPが、ファーストパーティやセカンドパーティのデータを処理しはじめているという。「CDPは興味深い新興分野だ。個人情報(PII)をファーストパーティデータに含める話をしていて、これはDMPはやらないことだ。だが、CDP、CRM、DMPが容易にしていることのなかには重複している部分もたくさんある。CDPは2018年の流行語になると思う」と、スキナー氏はいう。
「CDPが力を与える時代」
一方、マシューズ氏は、15年にわたってCRM業界アナリストやコンサルタントを務めてきたが、CDPはオンライン広告データを統合してオフラインとオンラインの複数のチャンネルをまたいでリアルタイムの解析やターゲティングを可能にする、DMPとCRMプラットフォームのハイブリッドだと考えている。「(CDPの隆盛は)顧客や見込み客と同様に一般大衆も意識した、最近よく話題になっている人間ベースのマーケティングという発想にも結びついている」と、マシューズ氏は話す。
フランチ氏もまた、CDPは投資家コミュニティーの新たな寵児になりつつあると考えている。モバイルやデスクトップ、とりわけ「Amazon Alexa」で消費者体験が断片化されているので、マーケターがギャップを埋めるうえでCDPが役に立つ可能性があるからだ。フランチ氏は次のように語る。「マーケターが望むようなマーケティングにCDPが力を与える時代になってきた。クッキーを使うDMPは、欧州の『一般データ保護規則』(GDPR)の下では効果が薄れてしまうのと、CDPにはデバイスをまたいで消費者をつなぐ機会を増やしてくれる」。
だがマシューズ氏は、CDPがファーストパーティデータとその他のデータソースをミックスすることをブランドが認めるか否かにかかわらず、規制やプライバシーの問題に加え、大量の顧客データをどのように管理するかがCDPの課題だと考えている。そもそもブランド側が自社の顧客のファーストパーティデータへのアクセスを快く提供するかという問題さえあると、マシューズ氏は語る。
「同じものに違う名前」
「ブランドのファーストパーティデータを利用する価値は大きく、私はそれを強く支持している。しかし、業界はときどき、同じものに違う名前をつけようとする」と語るのは、DSPであるチューズル(Choozle)の共同創設者兼最高製品責任者、ジェフリー・フィンチ氏だ。「私にとっては、CDPとCRM企業とは同じものだ。お金を稼ぎたいならば、それに新しい名前をつけるのが賢明だ」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)