「いい恥さらしだ!」:アドテク幹部が振り返る、 ドメキシコ での「赤っ恥」体験

ドイツ・ケルンに、再びあの季節がめぐってきた。毎年、会場の門前に、アドテク業界中から5万人もの来場者が詰めかける世界最大級のデジタルマーケティング・カンファレンス、Dmexco(ドメキシコ)。今年も9月11日から開催され、以降の数日間、日中は目を回すほどの会議に次ぐ会議、夜ともなれば、大量のビールを片手に焼き豚足と焼きソーセージの試食会が催された。それでお開きかと思えば、視察団の面々はカンヌライオンズなら「ガターバー」、Dmexcoなら「バーニーズバレーズ」と言われるアイリッシュバーに集まり、寝しなの一杯、いや三杯を楽しんだ。

回を重ねるごとに、Dmexcoは業界の縮図の様相を呈し、難しい交渉をまとめる場ともなった。6月のカンヌライオンズで端緒を開いた商談が、ここケルンで成約に至るケースも珍しくない。一方で、Dmexcoは野放図に広がる巨大な展示会だ。飛行機の格納庫のような会場には数万人の業界関係者がひしめき合い、業界話にさんざめく。これだけ人が集まれば、不運な出来事のひとつやふたつ、起こったところで不思議はない。

本記事では、Dmexcoで不運に見舞われたアドテク業界の関係者に、その体験談を披露してもらった。

流しのタクシーで赤っ恥

「会場のケルンメッセから出てきたところ、タクシー乗り場に長い行列ができていた。少し歩いて流しのタクシーを拾おうと思ったが、これがなかなか見つからない。そこへ突然、ワンボックスカーがやってきて私たちの隣に停車した。私はドアを開けて乗り込むと、市内へやってくれと頼んだ。運転手は自宅前の小道に駐車しようと停車しただけだという。穴があったら入りたい。結局、市内まで20ユーロ(22ドル)で話がついた。弊社オリジナルというか、違法ウーバー(Uber)だ」ーーアドテクベンダーのCEO

前のめりすぎて赤っ恥

「Dmexcoの前夜祭でハメを外してはいけないことを嫌というほど思い知らされた。そんなことをしたら、残りのカンファレンスが台無しになる。ところが私の同僚はあまり飲み込みがよくなかった。昨年のこと。ブースの準備をしていたら、荷物置き場の床に、そいつが胎児みたいに丸くなって寝ていた。爆睡だ。何とか早めに会場入りしたものの、すぐダメになったのだろう。誰かが白いテープ、ブースの壁の電線をカバーするのに使う白いガムテだが、そいつの体をそのテープでぐるぐる巻きにしていった。ある意味、注目の的だった」ーーアドテクベンダーのマーケティングディレクター

独特の領収書で赤っ恥

「Dmexcoにはじめて参加したときのこと。その夜、私たちはあるビアホールに陣取って、クライアントが慌ただしく出入りする傍ら、しばらく楽しいときを過ごした。地元ビールをトレイにのせたウェイターが何度もテーブルにやってきて、1杯お代わりするごとに伝票代わりのコースターに勘定を走り書きしていった。お開きが近くなって、我が社のCEOが挨拶にやってきた。ありがたくも500ユーロ(約5万7000円)の支払は彼がもってくれるという。ところが支払いはキャッシュのみ、しかも領収書はシミだらけのコースターにボールペンの走り書きだ。こんな経費を申請されて、経理はどんな顔をしたのだろう」ーーアドテクベンダーのマネジングディレクター

ホテルの予約で赤っ恥

「Dmexcoに参加する人は誰でも、その週の宿泊料が跳ね上がることを知っている。何年か前、クライアントのためにホテルを予約した。料金から考えて、まずまずのホテルだろうと思った。実際にまずまずだったのか? いやとんでもない! それはユースホステルだったのだ。結果、バイスプレジデントやCの付く最高責任者クラスの面々を二段ベッド備え付けの部屋で寝かせることになった。これで喜ぶわけがない。この件で嫌というほど思い知った。良いホテルに金を出し惜しんではいけない。なぜなら、長い1日の終わりに、そしてさらに長い人脈作りと接待の夜の終わりに、誰はばかることなくゆっくりできる場所は必要なのだから」ーーアドテク系コンサルティング会社の創業者

ディナーの別れ際に赤っ恥

「いまの仕事に就いたその月に、最初のDmexcoを体験した。ディナーの席で米国の経営陣とはじめて顔を合わせた。ディナーを終えて、すぐに立ち去る人もいたが、私たち英国のスタッフとそのまま残る者もいた。帰る者たちと別れの挨拶を交わしていると、販売担当のバイスプレジデントが立ち上がるので、私は彼に駆け寄り、抱擁した。ところが彼は私の腕をほどき、抱擁を押しとどめるとこう言った。『トイレに行くだけだから』と。死にたいほど恥ずかしかった」ーー動画関連のアドテクベンダー、アカウントディレクター

パネルの登壇で赤っ恥

「以前、Dmexcoの一番寂れた界隈でパネルディスカッションに出てくれと頼まれた。しかしどこをどう探してもその場所が見つからない。6つもの会場を走り回ったが、そのうちひとつは家具の展示場だった。私は汗だくで、ひどい二日酔いだった。15分遅れで登壇した。Dmexcoのパネリストなんて二度とやらない。場所は分かりにくいし、たいていは仕切りも悪い」ーーアドテクベンダーのCEO

ブース設営で赤っ恥

「どの会社もできるだけ人目を引くきれいでクリエイティブなブースを作るために工夫を凝らし、大枚をはたく。北欧の企業で資金調達その他、責任のある仕事を任されていたが、新興のアドテク企業に転職し、当時の私はすこぶる張り切っていた。しかも展示会にブースを出すというのでさらに張り切った。しかしそれも自分の会社のみすぼらしいブースを目にするまでのこと。薄っぺらなグレーの壁、ナイロン製のグレーのカーペット、ありきたりのグレーの家具。私は隣のブースに羨望のまなざしを向けた。組み替え自在のモジュール家具、ガラス板で仕切られたミーティングルーム、ブランド物のカーペットにチョコレートファウンテン。社長が会社のロゴマークをデザインしたクルマ用のステッカーとセロテープと脚立をもって現れたとき、私の気持ちはさらに沈んだ。私は脚立にのぼり、華々しく社名を印刷したその巨大なステッカーを灰色の壁に貼れと命じられた。しかもその後の20分、ステッカーと壁の間の気泡を定規で伸してせっせと押し出すハメになった。まさに『オンリー・フールズ・アンド・ホーセズ』(イギリスの人気コメディドラマ)を地で行くような展開だった。『いったいどんな契約になってるんだ?』、そんなことを考えたのをいまでも覚えている。さらに社長は、会社のロゴステッカーで足跡シールを作り、メインエントランスからうちのブースまでの床に貼って客を誘導しろという。死ぬほど恥ずかしい思いをしたよ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:英じゅんこ)
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