ここ数週間に大手ハイテク企業各社がジェネレーティブAIやそのツールの新製品をローンチするなか、メタ(Meta)もこれに負けまいと、9月27日に開催された年次開発者会議「メタコネクト(Meta Connect)」の場で、VR、MR、ジェネレーティブAIに関連した主なハードウェア・ソフトウェアアップデートの展望について発表した。
新しいMRヘッドセット「Quest 3」と「レイバンマートグラス」のお披露目の合間に、同社CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、ユーザー、開発者、企業向けに開発中の数々のジェネレーティブAIツールの新製品をプレビューした。
オープンAI(Open AI)のChatGPTやGoogleのバード(Bard)に対抗するため、メタはMeta AIという独自のチャットボットを投入した。これはさまざまなメタのアプリで使用でき、新製品のRay-Ban Metaスマートグラスにも搭載されるものだ(8月にAmazonが同社独自のスマートグラスの新バージョンを発表したが、こちらはアップデートされた新バージョンのAlexaと連携している)。
メタはまた、新しい「AI Studio」も発表した。これはAIチャットボットを構築するためのプラットフォームで、APIだけではなく、自分ではコードは書かないがチャットボットの開発はしたいという層のための新しいサンド
ボックスも含まれる予定だ。またその他の計画として、AIボットをメタバースと統合する方法や、クリエイター向け・企業向けの新しいツールなどがあり、これらはすべて後日リリース予定である。
「親しみやすい」セレブAIチャットボット
ザッカーバーグ氏は9月27日水曜日の基調講演で、「これは単に問い合わせに回答するだけのものではない。エンターテインメントであり、人々が周りとつながるためのサポートであり、またそれがどのようなものであれ、人々が望むさまざまな目標を達成するための手助けをするものなのだ」と話している。
また、メタはAIボットをより魅力的に見せる方法も開発しており、チャットボットを「楽しく」「親しみやすい」ものと感じてもらえるだろうと同氏はいう。手始めに、20数人を超える有名人と提携し、AIキャラクターとしてさまざまな話題についてユーザーとチャットしてもらう予定だ。トム・ブレイディやスヌーブ・ドッグ、パリス・ヒルトン、ドウェイン・ウェイド、ケンダル・ジェンナー、大坂なおみなどの有名人が自身の画像やイメージを提供するほか、関与するセレブには、シェフのロイ・チョイ、ミスタービーストやチャーリー・ダミリオのようなSNSスターらが含まれている。
同社はMeta AIを巨大ソーシャルメディア企業である自社のアプリにのみ限定するのではなく、マイクロソフトとも提携し、ユーザーがBing(ビング)経由で検索できるようにしている(ちょうど9月第3週にマイクロソフトはSnapchatとの新たな提携を発表し、スナップ[Snap]のMy AIチャットボットにBingのチャット広告を統合した)。その他の新しいAI機能としては、10月にリリースされるテキストベースのプロンプトでステッカーを作成できるツールや、「近日中」にリリースされる画像作成および編集のためのAIツールもある。これらはすべてメタの新しい画像生成モデルであるEmu(エミュ)を採用している。
メタがチャットボットをメインストリームに据えようと試みるのは今回が初めてではない。2016年から2017年にかけて、他のスタートアップ企業が俳優で歌手のリンジー・ローハンや人気ラッパーのカーディB、50セントといったセレブリティのボットバージョンを作成するなか、当時のFacebookはブランドのチャットボット向けに新しいツールを開発し、チャットボット・ストアまで新たに立ち上げた。しかしジェネレーティブAIブームが到来するまでは、ボットで発言できることには制限があったため、それを使う人々との関わり方も限定的だった。
「人間のような」AIを設計することのリスク
これだけの魅力があるAIだが、消費者運動団体からは「人間のような」AIを設計することの危険性について警告する声があがっている。9月第4週の初めには、非営利団体「パブリックシチズン(Public Citizen)」が、擬人化されたAIシステムがそれを相手にチャットする人々に対してどのような脅威をもたらす可能性があるかについて、新たな報告書を発表した。
「偽造人間」はより簡単に人間を操ることができるため、人は無意識のうちにマーケティングや、さらに悪質な行為による影響さえも受けやすくなるかもしれない。たとえば、「人間のような」チャットボットと会話すると、ユーザーは自分自身の個人情報を漏らしてしまう可能性が高くなることが研究結果からわかっており、データプライバシーの面だけでなく、心理・感情面での悪用に関する新たなリスクが生じるとされる。
ごく普通の人間に見える、あるいは人間っぽく話すというだけのチャットボットだと人は信じないかもしれないが、実在の人、特に有名人に変身させることは、ユーザーに不信感を抱かせないようにするための「近道」になり得ると、パブリックシチズンのプレジデント室でリサーチディレクターを務め、この報告書の著者でもあるリック・クレイプール氏はいう。同氏はDIGIDAYの取材に対し、悪用される可能性は「憂慮すべき」ものであり、企業や悪質な業者が(AIが持つ)最悪の能力を探りだすのを止めることは難しい、と述べている。
「人間に染み付いたこうした資質や弱点さえも利益のために利用するのは、非常にリスキーだ」とクレイプール氏はいう。「数百年前、私たちは生き残るために甘く脂肪分の多いものを味わうように進化した。今、われわれはベーコンダブルチーズバーガーをよろこんで食べている。それとほぼ同じことだ」。
ここ数週間に大手ハイテク企業各社がジェネレーティブAIやそのツールの新製品をローンチするなか、メタ(Meta)もこれに負けまいと、9月27日に開催された年次開発者会議「メタコネクト(Meta Connect)」の場で、VR、MR、ジェネレーティブAIに関連した主なハードウェア・ソフトウェアアップデートの展望について発表した。
新しいMRヘッドセット「Quest 3」と「レイバンマートグラス」のお披露目の合間に、同社CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、ユーザー、開発者、企業向けに開発中の数々のジェネレーティブAIツールの新製品をプレビューした。
オープンAI(Open AI)のChatGPTやGoogleのバード(Bard)に対抗するため、メタはMeta AIという独自のチャットボットを投入した。これはさまざまなメタのアプリで使用でき、新製品のRay-Ban Metaスマートグラスにも搭載されるものだ(8月にAmazonが同社独自のスマートグラスの新バージョンを発表したが、こちらはアップデートされた新バージョンのAlexaと連携している)。
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メタはまた、新しい「AI Studio」も発表した。これはAIチャットボットを構築するためのプラットフォームで、APIだけではなく、自分ではコードは書かないがチャットボットの開発はしたいという層のための新しいサンドボックスも含まれる予定だ。またその他の計画として、AIボットをメタバースと統合する方法や、クリエイター向け・企業向けの新しいツールなどがあり、これらはすべて後日リリース予定である。
「親しみやすい」セレブAIチャットボット
ザッカーバーグ氏は9月27日水曜日の基調講演で、「これは単に問い合わせに回答するだけのものではない。エンターテインメントであり、人々が周りとつながるためのサポートであり、またそれがどのようなものであれ、人々が望むさまざまな目標を達成するための手助けをするものなのだ」と話している。
また、メタはAIボットをより魅力的に見せる方法も開発しており、チャットボットを「楽しく」「親しみやすい」ものと感じてもらえるだろうと同氏はいう。手始めに、20数人を超える有名人と提携し、AIキャラクターとしてさまざまな話題についてユーザーとチャットしてもらう予定だ。トム・ブレイディやスヌーブ・ドッグ、パリス・ヒルトン、ドウェイン・ウェイド、ケンダル・ジェンナー、大坂なおみなどの有名人が自身の画像やイメージを提供するほか、関与するセレブには、シェフのロイ・チョイ、ミスタービーストやチャーリー・ダミリオのようなSNSスターらが含まれている。
同社はMeta AIを巨大ソーシャルメディア企業である自社のアプリにのみ限定するのではなく、マイクロソフトとも提携し、ユーザーがBing(ビング)経由で検索できるようにしている(ちょうど9月第3週にマイクロソフトはSnapchatとの新たな提携を発表し、スナップ[Snap]のMy AIチャットボットにBingのチャット広告を統合した)。その他の新しいAI機能としては、10月にリリースされるテキストベースのプロンプトでステッカーを作成できるツールや、「近日中」にリリースされる画像作成および編集のためのAIツールもある。これらはすべてメタの新しい画像生成モデルであるEmu(エミュ)を採用している。
メタがチャットボットをメインストリームに据えようと試みるのは今回が初めてではない。2016年から2017年にかけて、他のスタートアップ企業が俳優で歌手のリンジー・ローハンや人気ラッパーのカーディB、50セントといったセレブリティのボットバージョンを作成するなか、当時のFacebookはブランドのチャットボット向けに新しいツールを開発し、チャットボット・ストアまで新たに立ち上げた。しかしジェネレーティブAIブームが到来するまでは、ボットで発言できることには制限があったため、それを使う人々との関わり方も限定的だった。
「人間のような」AIを設計することのリスク
これだけの魅力があるAIだが、消費者運動団体からは「人間のような」AIを設計することの危険性について警告する声があがっている。9月第4週の初めには、非営利団体「パブリックシチズン(Public Citizen)」が、擬人化されたAIシステムがそれを相手にチャットする人々に対してどのような脅威をもたらす可能性があるかについて、新たな報告書を発表した。
「偽造人間」はより簡単に人間を操ることができるため、人は無意識のうちにマーケティングや、さらに悪質な行為による影響さえも受けやすくなるかもしれない。たとえば、「人間のような」チャットボットと会話すると、ユーザーは自分自身の個人情報を漏らしてしまう可能性が高くなることが研究結果からわかっており、データプライバシーの面だけでなく、心理・感情面での悪用に関する新たなリスクが生じるとされる。
ごく普通の人間に見える、あるいは人間っぽく話すというだけのチャットボットだと人は信じないかもしれないが、実在の人、特に有名人に変身させることは、ユーザーに不信感を抱かせないようにするための「近道」になり得ると、パブリックシチズンのプレジデント室でリサーチディレクターを務め、この報告書の著者でもあるリック・クレイプール氏はいう。同氏はDIGIDAYの取材に対し、悪用される可能性は「憂慮すべき」ものであり、企業や悪質な業者が(AIが持つ)最悪の能力を探りだすのを止めることは難しい、と述べている。
「人間に染み付いたこうした資質や弱点さえも利益のために利用するのは、非常にリスキーだ」とクレイプール氏はいう。「数百年前、私たちは生き残るために甘く脂肪分の多いものを味わうように進化した。今、われわれはベーコンダブルチーズバーガーをよろこんで食べている。それとほぼ同じことだ」。
メタの誤情報やデータプライバシーに関するこれまでの経緯を考えれば、AIが生成するコンテンツがこれらの懸念を増幅させるのではないかというリスクもある。メタの基調講演では、ジェネレーティブAIがもたらす潜在的な利点に焦点が当てられていたものの、ザッカーバーグ氏は「いくつかの新たな課題があるのは間違いないだろう」とも指摘している。
そしてさらに、「メタとしては新しいAI機能を『通常よりもややゆっくりと』展開する計画であり、それによって深刻化する前に問題に対処することが可能になる」と付け加えた。一般に大規模言語モデルについて多くの人が懸念している透明性を向上させるため、メタはAIモデルがどのように機能するかを詳細に記したシステムカードも公開する予定だ。
「私たちはこの点についてあらかじめ考え、どのようなものになるのかブレインストーミングをし、できる限り多くのセーフガードを組み込む努力をしてきた。そして安全性と責任に関するガイドラインに合うように、モデルを細かく調整した」とザッカーバーグ氏はいう。「専門家とともに数多くのレッドチームを設置し、不適切なカンバセーションに対するガードレールを構築してきた」。
マーケティングの新たな可能性を生み出すか
一部のアナリストは、メタによるジェネレーティブAIの発表はオープンAIのChatGPTとGoogleのバードに対する「事前通告」と受け止めているという。
9月27日にエクイティリサーチ会社のウィリアム・ブレア(William Blair)が発行した調査報告書には、新しいツールはメタのアプリ群全体に「拡張されたユースケース」を提供し、ユーザーをより長くエンゲージさせることができるかもしれない、と書かれている。長期的にみれば、メタのジェネレーティブAIツールは中小規模の企業により多くのターゲット広告の機会をもたらし、メタはそこからマネタイズできると、これらのアナリストは考えている。
ウィリアム・ブレアのアナリストであるラルフ・シャッカート氏は、「メタはこのテクノロジーに今何ができるのかを示し、それが将来どのような方向に進むと思われるかについても示した」といい、ジェネレーティブAIツールはメタが多様な製品ポートフォリオを揃え、より幅広い消費者層にリーチする上で役に立つだろうと付け加えた。そして「われわれはまた、AIによってメタが大規模な新製品の開発と展開をごく短期間のうちに行うことが可能になると信じている」のだと話した。
ジェネレーティブAIだけでなく、特にXboxとの新たな統合やVR版Robloxを含む多くのVRゲームとその他の多彩な機能など、VRとMRに係るメタの意欲に新たな可能性を見出すものもいる。また、AppleのVision Proよりも3000ドル(約43万5000円)も安い499ドル(約7万2000円)という低価格は、Quest 3の普及促進を後押しするだろうと、独立系広告エージェンシーのPPKでデジタル戦略・投資のディレクターを務めるサラ・モリス氏は指摘する。ゲーミング、エンターテインメント、ソーシャルインタラクションはすべて、メインストリームの消費者にアピールできる用途であると、同氏は考えている。
「こうしたデジタル・リアリティへの入り口には魅力的なところがたくさんある」とモリス氏はいう。「バーチャルなプロダクトプレースメントは、エクスペリエンスをよりいっそう現実に近いものと感じさせることができ、広告主が視覚面・感情面の両方で消費者とつながっているかのような没入型の環境をつくることができるので、非常に適している」。
現実の人間の問題解決に役立つか
メタが7月に発表したLlama 2をテストするチームをすでに立ち上げたエージェンシーもある。
マッキャンワールドグループ(McCann Worldgroup)のアプリケーション・イノベーションのヘッドであるエラブ・ホーウィッツ氏によると、初期のテスト結果は「かなり良く」、自由に使えてオープンソースでもある同製品は操作しやすいのだという。同氏はまた、Meta AIを新しいスマートフレームに搭載することはライブストリーミングにとっては興味深いことかもしれないが、大きな問題は、新機能が現実の人間の問題解決に役立つのかどうかだと述べている。
「いつも、テクノロジー側の立場から『ほら見て、これいいだろ?』っていわれているような気持ちになる」とホーウィッツ氏。「なぜセレブをモデルに作成されたAIキャラクターが28種類も必要なのか? 本当のユースケースはどれなのか? そのメガネをかけたらどんなふうに障がいのある人たちの役に立つのかを教えてほしい。そこにすばらしい使い方があるかもしれない」。
[原文:Meta adds a human element to AI, while others warn it all could be too ‘human like’]
Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)