- 米司法省がGoogleを対象として進めている反トラスト訴訟の審理において、Googleの検索広告が業界での独占的な地位を確立していることを証明すべく、多数の専門家の証言を集めている。
- マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏は、検索サービス普及にはデバイスのデフォルト検索エンジンになることが非常に重要であると証言。Googleの元広告担当者も、Googleがデフォルトの地位を獲得するため膨大な資金を投じていると証言。
- 専門家として出廷したジョシュア・ローコック氏は、Googleの検索広告が市場での絶対的な価値を持っていることを証言。他の広告手法と比べて非常に効果的であると述べた。
「インターネットの未来を占う」といわれている裁判で、米司法省とアルファベット(Alphabet)傘下のGoogleが戦いを繰り広げている。とりわけ司法省が狙いを定めているのは、年間1630億ドル(約24兆4000億円)のメディア収益を生み出すGoogleの検索エンジンだ。
だが、Googleの広告担当責任者であるジェリー・ディシュラー氏が審理の早い段階で出廷したのに対し、Googleの主張に反論するメディア担当者の証言が聞かれるようになったのは、訴訟手続きが始まってから4週目のことだった。メディア側は、マーケターがアルファベットという企業体に依存していることを再度考慮すべきだと主張している。
一方、マイクロソフト(Microsoft)のCEOサティア・ナデラ氏が同じワシントンD.C.の裁判所に出廷し、Googleの元広告担当責任者リダール・ラマスワミ氏も証言台に姿を見せたが、彼らの主張の意味するところは、デフォルト契約を勝ち取った企業が、特に検索に関しては王者になるというものだった。
「デフォルト(契約)が何よりも重要」
10週以上にわたって予定されているこの訴訟手続きは4週目に入ったが、原告側は当初から、Appleやサムスン(Samsung)といったデバイスメーカーとの排他的な取引がGoogleに「強力な戦略兵器」を与え、事実上の独占状態を招いたとの主張を展開していた。
マイクロソフトのナデラ氏は法廷で(同社の検索エンジン「Bing」は一般的な利用度という点でGoogle検索に最も近い)、普及戦略においてはこのような「デフォルト(契約)が何よりも重要になる」と語った。一方、かつてプライバシー重視の検索エンジン「Neeva」を立ち上げてGoogleに挑んだラマスワミ氏は、Googleが「iPhone」のデフォルト検索エンジンとなるためにAppleと結んだ年間100億ドル(約1兆4980億円)の契約と同じような協定を結べなかったことが、Neevaの閉鎖につながったと説明した。
ラマスワミ氏によれば、デバイスメーカーや通信事業者とのこのような取り決めが[続きを読む]
- 米司法省がGoogleを対象として進めている反トラスト訴訟の審理において、Googleの検索広告が業界での独占的な地位を確立していることを証明すべく、多数の専門家の証言を集めている。
- マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏は、検索サービス普及にはデバイスのデフォルト検索エンジンになることが非常に重要であると証言。Googleの元広告担当者も、Googleがデフォルトの地位を獲得するため膨大な資金を投じていると証言。
- 専門家として出廷したジョシュア・ローコック氏は、Googleの検索広告が市場での絶対的な価値を持っていることを証言。他の広告手法と比べて非常に効果的であると述べた。
「インターネットの未来を占う」といわれている裁判で、米司法省とアルファベット(Alphabet)傘下のGoogleが戦いを繰り広げている。とりわけ司法省が狙いを定めているのは、年間1630億ドル(約24兆4000億円)のメディア収益を生み出すGoogleの検索エンジンだ。
だが、Googleの広告担当責任者であるジェリー・ディシュラー氏が審理の早い段階で出廷したのに対し、Googleの主張に反論するメディア担当者の証言が聞かれるようになったのは、訴訟手続きが始まってから4週目のことだった。メディア側は、マーケターがアルファベットという企業体に依存していることを再度考慮すべきだと主張している。
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一方、マイクロソフト(Microsoft)のCEOサティア・ナデラ氏が同じワシントンD.C.の裁判所に出廷し、Googleの元広告担当責任者リダール・ラマスワミ氏も証言台に姿を見せたが、彼らの主張の意味するところは、デフォルト契約を勝ち取った企業が、特に検索に関しては王者になるというものだった。
「デフォルト(契約)が何よりも重要」
10週以上にわたって予定されているこの訴訟手続きは4週目に入ったが、原告側は当初から、Appleやサムスン(Samsung)といったデバイスメーカーとの排他的な取引がGoogleに「強力な戦略兵器」を与え、事実上の独占状態を招いたとの主張を展開していた。
マイクロソフトのナデラ氏は法廷で(同社の検索エンジン「Bing」は一般的な利用度という点でGoogle検索に最も近い)、普及戦略においてはこのような「デフォルト(契約)が何よりも重要になる」と語った。一方、かつてプライバシー重視の検索エンジン「Neeva」を立ち上げてGoogleに挑んだラマスワミ氏は、Googleが「iPhone」のデフォルト検索エンジンとなるためにAppleと結んだ年間100億ドル(約1兆4980億円)の契約と同じような協定を結べなかったことが、Neevaの閉鎖につながったと説明した。
ラマスワミ氏によれば、デバイスメーカーや通信事業者とのこのような取り決めが「エコシステムを凍結」させているという。これほど多くの報酬を支払ってくれるGoogleから離れるのは、企業にとって困難だからだ。
Googleが価格を引き上げても予算は移さない
当然ながら、アルファベットは自社の防衛戦略の正当性を主張している。同社はその根拠として、ユーザーは数回クリックするだけで競合他社のサービスにアクセスできること、そして自社の検索広告は広大なメディアエコシステムの一部に過ぎず、そのエコシステムでは従来のメディア企業に加え、大手テック企業のライバルとの激しい競争に直面していることを挙げた。
しかし、訴訟手続きが4週目に入ると、メディア業界の「ビッグ6」を構成するIPG(Interpublic Group)でメディア担当者を長く務めてきたジョシュア・ローコック氏も法廷に姿を見せ、検索広告枠はあらゆるメディアプランにとって「なくてはならない」要素になっていると証言した。
巨大IT企業の訴訟を扱うブログ「Big Tech on Trial」によれば、さらにこのメディアバイイング担当幹部は、たとえGoogleが価格を5%引き上げたとしても、広告予算を競合の検索エンジンに移さないようブランドに助言すると、法廷にいる人々の前で述べたという。
圧倒的な価値を誇る検索広告
この発言は、検索広告の価値が極めて高いことを示すものだ。広告主が「銀行口座」、「自動車保険」、「住宅ローン」などのキーワードで入札する検索広告は、ユーザーの意図をターゲットにできるため、ソーシャルメディアなどのプラットフォームにある他の広告フォーマットと比べて何かと購入されやすい。
簡単にいえば、ターゲットを適切に絞った検索広告は、(派手さはないものの)アトリビューションの質が高く、ROI(投資対効果)を示そうと躍起になっているメディアチームにとって、非常に価値が高いとみなされているのだ。メディア予算がかつてないほど厳しく精査されている状況では、有利な特徴だと考えられるだろう。
裁判はこれからも続く。
[原文:Media experts argue social media is no search rival in the DoJ’s antitrust tussle with Google]
Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)