「数字の使い方が間違っている」: Google の広告ターゲティング調査にパブリッシャーが反発

サードパーティのCookieによる広告ターゲティングが使えなくなると、パブリッシャーはプログラマティック広告収益の52%を失うことになるとするGoogleの最近の調査は、一部の大手パブリッシャーにとんでもなく不評だ。

Googleは8月22日、データプライバシー強化の計画に関する一連のブログ投稿を公開した。そのなかに、Googleのアドマネージャー(Ad Manager)でプログラマティック広告を実施しているグローバルなパブリッシャー500社のデータを用いて実施された調査の結果が含まれていた。Googleによると、この調査結果は、広告ターゲティングにCookieを使わない場合、パブリッシャーはプログラマティック広告の収益の平均52%を失い、ニュースパブリッシャーに限るとさらに増えて62%を失うというものだという。

これは明らかに、AppleのブラウザであるSafariのアンチトラッキング機能「インテリジェント・トラッキング・プリベンション(以下、ITP)」を批判しようというものだ。ITPは2017年の登場以来、回避策の撲滅のため繰り返し更新されている。

Appleが最初に実施したアンチトラッキングの変更の結果、パブリッシャーが直面した収益減少の平均と、調査の数字とがかなり一致していることは、おおむねどのパブリッシャーも認めている。しかし、大手パブリッシャー数社がそのうえで強調しているのは、その数字が文脈から切り離され、Googleの利益を拡大する武器として使われていることだ。

パブリッシャーの反論

「数字の使い方が間違っている」と、匿名を条件に話をしてくれた大手パブリッシャー幹部は語った。「広告すべてで10億ドル(約1070億円)分があり、そのうち20%がCookieのない環境の支出だとする。すべての場所でCookieをなくせば、その10億ドルがすべてのブラウザ全体で同じように使われる結果になるはずだ。Googleが示す『4億ドルしか残らない』というのは違う」。

ほかの大手パブリッシャーはこれに同意したうえで、AppleのSafariのCookieからの予想される収益減少は同じようなレベルまで下がったが、その収益がパブリッシャーの金庫からそのまま消えてしまったわけではないと続けた。

大手パブリッシャーの別の幹部は、「Googleがあるところから持ってきた情報に場所を与え、たとえば(AppleのSafariではなく)GoogleのChromeのオーディエンスならまだマネタイズできると、別のシナリオに利用した点は、我々が好むことではなかった。資金はあらためて分配された」としたうえで、「これについては社内で大変な騒ぎになった」と語った。

また、一部のパブリッシャーはこの数字の使い方に対する不満を表明するため、GitHubなどの開発者フォーラムに乗り込んだ。

Googleの言い訳と余波

Googleはレポートで、結果は集計であり、そのためパブリッシャー、国、分野などの要因で結果は違ってくると主張した。また、Googleの結果と整合するレポート2本、「オンライン広告における消費者のプライバシー選択:誰がオプトアウトして業界のコストはどうなるのか(Consumer Privacy Choice in Online Advertising: Who Opts Out and at What Cost to Industry?)」と「オンラインコンテンツ市場における情報共有の価値の実証分析(An Empirical Analysis of the Value of Information Sharing in the Market for Online Content)」を引き合いに出した。

「我々の調査は、Cookieの有無がプログラマティックの収益に与える影響を評価したものだ」と、Googleの広報担当者はいう。「我々の調査結果は、同じくエクスチェンジのデータを使って同じような結論に至った、独立した2つの研究のものと類似している。我々はウェブにおける無料コンテンツへのアクセスを維持するため、この問題の方法論を公開し、さらなる研究と率直な議論を促している」と語った。

Googleの発表は、Googleに対する新たな不満を生み出すよりも、Appleのパブリッシャーの扱いに対する怒りに再び火をつけるケースもあった。あるパブリッシャーは匿名で、「パブリッシャーと広告のエコシステムに深刻な被害をもたらすことをAppleはなんとも思っておらず、我々の巻き添え被害を許容できるものと見なしている」と語った。

Cookieの終焉は大問題

さらに言うと、収益減少という結果が濫用されているという点で大手パブリッシャー数社が一致しているものの、Cookieに関するGoogleの根本的な警告は当を得ている。

「数字が現実世界に完全に一致するかどうかは怪しいが、Cookieの終焉がパブリッシャーにとって大きな問題なのかもしれないという点は間違っていない」と、大手パブリッシャーの幹部は語った。

Safari、Firefox、ブレイブ(Brave)といったブラウザのアンチトラッキング方針と、欧州の「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(The California Consumer Privacy Act)のようなデータプライバシー規則の強化とが相まって、サードパーティのCookieに依存しない効果的な広告ターゲティング方法の探究は切迫感が増した。パブリッシャーとメディアエージェンシーからすると、個人データに依存しないためGDPRと衝突する危険もブラウザの変更で不利になることもないような、コンテクスチュアルターゲティングテクノロジーの次なる手法を開発していくしかない。

サードパーティのCookieに依存しないで大規模に使えるID規格の開発は、パブリッシャー界隈でもアドテク周辺でも大いに議論されている。しかし、依存しない実用的な候補はまだ現れていない。

「Googleの思いのまま」

一方で、GoogleがこのところサードパーティのCookie廃止についてパブリッシャーに影響があるという立場であることが、テック大手のGoogleはAppleに倣ってCookieのブロックをデフォルトにするつもりはないのだという期待につながっている。5月には、広告のターゲティングに使われるサードパーティのCookieについて、ブロックするかしないかの選択を消費者に任せる計画をGoogleが明らかにしたことで、GoogleがCookieを全面的にブロックするのではないかという業界の大きな不安は緩和された。しかし、データ保護法の遵守に対するGoogleの保守的なアプローチは変わっておらず、あとから機能が追加されて損失が出るのではないかと、多くのパブリッシャーは依然として緊張している。

「ChromeがCookieのブロックをユーザー向けにどのように実装するのか、かなり懸念されていることに変わりはない」と、パブリッシャーのある広告運用幹部はいう。収益減少の調査を公開するGoogleは、Cookieによるトラッキングをまだ許可する方針であり、パブリッシャーのオーディエンスターゲティングキャンペーンに深刻な打撃はないと期待していると続ける。「しかし、この件は完全にGoogleの思いのままであり、発表があるまでは推測しかできない」と、この幹部は語った。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)