記事のポイント TikTokはほかのプラットフォームとは異なり、コンテンツの制作速度や量が非常に重要。そのため、舞台裏事情の要素やビジネス上の事項も加味すると、専門知識を持ちながらコミュニケーションが上手いチームが必要と […]
- TikTokはほかのプラットフォームとは異なり、コンテンツの制作速度や量が非常に重要。そのため、舞台裏事情の要素やビジネス上の事項も加味すると、専門知識を持ちながらコミュニケーションが上手いチームが必要となってくる。
- マーケターやブランドはTikTokでの成功を追求し、TikTok専門の広告エージェンシーと提携し始めている。エージェンシーの幹部によると、過去1年間でTikTokサポートのリクエストの数と内容は加速しているという。
- TikTokでの成功には、専門知識だけでなくクリエイティブな戦略も必要となる。多くのブランドがTikTokの影響力を理解し、エージェンシーとの提携を通じて効果的な戦略を構築している。
TikTokの成熟が進むなか、マーケターたちはTikTokをマスターするための専門知識を求めている。
たとえば、飲料容器ブランドのスタンリー(Stanley)は、オースティン拠点のGSD&Mを同社が起用する初めてのTikTok専門の指定広告エージェンシー(AOR)として選定した。「TikTok専門の指定エージェンシー契約は珍しいかもしれないが、TikTokに関する専門知識をマーケターたちは求めている」と、エージェンシーの幹部たちは口を揃える。
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TikTokでコンテンツを素早く制作し、トレンドを活用して、そのプロセスを管理するための機動性を実現するためには、エージェンシーが率いる形での効率的なアプローチが必要だと、マーケターやブランド幹部たちは認識しているようだ。
量と速度に対応するため
VMLY&Rの最高ソーシャル責任者であるリズ・コール氏は、「TikTokでのコンテンツ制作・投稿の量と速度は、ほかの多くのチャネルと比べて非常に独特だ」と述べている。「TikTok投稿には、表からは見えない舞台裏事情やビジネス上の要素が多く関わっている。タレント、権利、規則・法遵守、これらどの要素も素早くこなしていくのは単純ではない。これらの専門知識を持ちながら、コミュニケーションが上手いチームが必要だ。TVのコマーシャルやバナー広告をするための広告エージェンシーでは、必ずしもこの要素を持ち合わせていない」。
コール氏によると、過去1年間でTikTok(での広告)サポートのリクエストの数と内容は加速しているという。VMLY&Rは、特定のクライアントのためのTikTok指定エージェンシーではないが、ウェンディーズ(Wendy’s)などのクライアントのTikTok戦略、クリエイティブ、制作を取り扱っており、これらのクライアントにとってVMLY&Rはソーシャルエージェンシー、デジタルエージェンシー、クリエイティブエージェンシーの立場にある、と同氏は説明する。
一方で、「検索コンサルタントのあいだでは、TikTokに限定しての提案依頼(RFP)は見たことがない」と、取材に応じた検索コンサルタントたちは述べた。TikTokサポートに関するリクエストについては、マーケターがエージェンシーに直接、提案依頼することもあるものの、TikTokサポートに対するエージェンシーへのリクエストはそれほど公式ではない。TikTokを取り囲む環境がより複雑かつ混雑したものになっているなかで、どうやったら目立つことができるのか、広告主ブランドの経営者や最高マーケティング責任者がアドバイスを求めるという形で議論になることが多い。
戦略を真剣に考えなければいけないプラットフォームに
ジェリーフィッシュ(Jellyfish)のパートナーであるジェフ・マティソフ氏は、「ブランドたちはTikTokを実験の場ではなく、戦略を真剣に考えなければいけないひとつのプラットフォームとして捉え始めていることを、私たちは常に聞いている」と述べている。それでも、現状では公式な提案依頼よりは非公式にサポートを求めることのほうが多いと言う。
「マーケターたちはTikTokをひとつのプラットフォームとして認識しており、迅速かつスムーズに、メディアとコンテンツ、オーガニック投稿と有料広告を使い分けていきたいと思っている。この中心に位置するインフルエンサーの存在が、戦略とコラボレーションの必要性を生み出している」。
(TikTokに)専門化することの価値、そしてこの流れに勢いが集まっている理由は、「コンテンツをTikTok向けに再利用するだけではなく、TikTokのためにコンテンツを制作することで、多くのブランドがエージェンシーによる(TikTok運営の)リード、もしくは指定エージェンシーの関係を求める方向に進むことにある」と、クリエイティブエージェンシーのバーブ(Verb)の共同創設者であるシャノン・シンプソン・ジョーンズ氏は語った。
「ブランドたちは、TikTokの影響力をより理解するにつれて、TikTokとその専門知識を実際に理解しているエージェンシーを探している。時には『専門家』というラベルを(自分たちのサポートとして)持つことで、自分たちよりもその領域をよく知る者の力を借りることができ、リスクを軽減できる」。
AORやリードエージェンシー契約が盛んに
TikTokのクリエーター環境を理解することも重要だ。インフルエンサーマーケティング分野が成熟するなか、今年、マーケターたちはインフルエンサーエージェンシーとの指定エージェンシー(AOR)契約の関係を求めている。コレクティブリー(Collectively)の最高イノベーション責任者であるナタリー・シルバースタイン氏は、多くのブランドとクリエーターのAOR関係に取り組んでいる。そうしたなかで、TikTokで成功するための「特定の専門知識」の必要性を認識している。
「それは適切なクリエーターを見つけ、コンテンツを作成する手助けをし、ブランドに適した内容を見極めることから始まる」とシルバースタイン氏は言う。「(TikTokの)『For You』ページに(表示されるために)は専門的な知識が求められる。本当に楽しめるコンテンツを作成する必要がある」。
マッキニー(McKinney)の戦略ディレクターであるオースティン・ヌル氏は、来年に向けてTikTokのAORやリードエージェンシー契約が求められることが増えると予想している。「間違いなく、その方向にトレンドは続くだろう」と同氏は語り、「従来であれば、エージェンシーが『(特定の分野)のためのクリエイティブAORだ』と言うとき、TVのことを指していた。しかし新世代、特にZ世代やアルファ世代にとって、TikTokこそが彼らのTVとなっている」と結論づけた。
また、ヌル氏はこう言い添える。「多くのクライアントが気づき始めている。面白いTikTokを作成することやトレンドに乗ること以上に、TikTokの影響を最大限に引き出すための全体的な戦略が真に必要だということを」。
Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)