インスタグラムとSnapchat(スナップチャット)の争いが続くなか、3番手が少しずつ、その存在感を増している。それはAppleのクリエイティブ写真アプリ「クリップス(Clips)」だ。1カ月ほど前にローンチされたクリップスは、動画や画像、音楽を組み合わせて、ソーシャルビデオを簡単に制作できるようになっている。
インスタグラムとSnapchat(スナップチャット)の争いが続くなか、3番手が少しずつ、その存在感を増している。それはAppleのクリエイティブ写真アプリ「クリップス(Clips)」だ。
1カ月ほど前にローンチされたばかりのクリップスはビデオ、画像、音楽を組み合わせることでソーシャルビデオを簡単に制作できるようになっている。「iMessage(アイメッセージ)」だけでなく、あらゆるSNSともシームレスに共有することも可能だ。
ユーザーはフィルター、タイトル、スタンプ機能なども利用できる。と、ここまで聞けばお分かりだろう。こういった機能は、すでにほかのプラットフォームに存在している。フィルターはSnapchatでも利用でき、テキストや絵文字をレイヤーとして載せることはSnapchatやインスタグラムでも楽しめる。
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ブランドがクリップスに飛びついて、ソーシャルビデオを作りはじめるのも時間の問題だろうと、エージェンシーのエグゼクティブたちは見ている。音声だけを使ってアニメーションキャプションを作成できるなど、ブランドにとって魅力的な機能がいくつかあるからだ。
クリップスはすでに100万ダウンロードを達成。インスタグラムといったビジュアルプラットフォーム上に、専用のハッシュタグも存在している。
AppleのiMessage戦略
メディアソシエイツ(Mediassociates)のマーケティング/コンテンツ部門シニア・バイスプレジデントであるベン・カンズ氏は「Appleがハードウェアからソフトウェアにシフトしようとしているなかで、長期的なマイクロモーメントがいま起きている。Appleはこれまでソフトウェアは苦手だったが、iPhoneがコモディティ化し、改善することがなければ彼らのビジネスは崩壊すると気づいている」。
Appleは去年から競合他社のソーシャルやメッセージアプリからユーザーを奪おうとする動きを見せてきた。クリップスは、もっとも最近の彼らのそうした施策のひとつとなる。
メッセージアプリ界隈を独占すべく狙いを定めたAppleは昨年9月、iOS10のローンチ以来最大規模のアップデートを行った。その際に、スタンプやフォント、そして専用のアプリストアを含め、メッセージ関連の新機能が追加された。
米エージェンシー、KBSのSNSマーケティングスタジオ、アテンション(Attention))の社長であるトム・ブオンテンポ氏はいう。「iMessageを通じてAppleは、常に巨大なオーディエンスを抱えてきた。しかし、ユーザー体験を十分に高めることをしたり、オーディエンスの意識を捉えるような感情に訴える戦略は行ってこなかった。今回の動きは、Appleがほかのプラットフォームからオーディエンスの時間と意識をさらに奪おうとする試みを示している」。
機能の統合が今後のカギ
「AppleはFacebookの競合として成長しており、ブランドや広告主にとって非常に重要なプラットフォームとなりつつある」と語るのは、ブランデッドスタンプを制作する企業ベア・ツリー・メディア(Bare Tree Media)のCEO、ロバート・フェラーリ氏だ。「Facebookはインデペンデントのクリエイターやエンターテインメント企業からのスタンプにフォーカスしていることを考えると、Appleには優位性がある。比べてみると、Appleの方がブランドにやさしいのだ」と彼は語る。
Appleはまた独自のマーケティング力を活かしてスタンプを宣伝している。最新のテレビCMでは、つい数週間前にデビューしたばかりのクリップス(Cips)を宣伝。その広告はミレニアル世代の多様な人々が街中を走り回り、アニメーション化されたiMessageのスタンプをほかの人に貼り付けてまわるというものだった。これは、Appleが必死で、楽しくやんちゃなイメージを与えようとしている風にも見える内容だった。
「ライバルとの競争という観点から見ると、Facebookとインスタグラム、Snapchatは現在、ビデオとメッセージアプリの両方の機能を提供している。しかし、Appleはまだ、こういったアプリをそれぞれ独立させている。アップルが今後ライバルと競争していくためにはクリップスの機能をiMessageに統合し、さらにはFaceTimeも統合する必要がある。そして、ソーシャルプラットフォームが、モバイルのフィード上におけるビデオコンテンツ、デザイン、消費傾向といったものを最適化してきたことに気付かなければいけない」と、エッセンス(Essence)のソーシャル部門アソシエイトディレクター、シャーウィン・スー氏は語った。
Tanya Dua(原文 / 訳:塚本 紺)