「 IGTV はまだ、クエスチョンマークがあまりにも多い」:全力投球に躊躇するパブリッシャー各社

米メディア企業のディスカバリー(Discovery)なら、いかにしてインスタグラム(Instagram)の「IGTV」がいい結果をパブリッシャーにもたらしているかについて、他社に負けない深い知識を持っているはずだ。

YouTubeとSnapchat(スナップチャット)を足して2で割ったような、長尺・バーティカル(タテ型)動画用のIGTVが6月20日に発表されて以来、ディスカバリー傘下の11のチャンネルは、動画を同プラットフォームにアップロードしてきた。たとえばフードネットワーク(Food Network)は、これまでに70本の動画をIGTVに配信している。平均すると1日に約1本の割合で動画をアップロードしており、1本につき3万5000回の視聴回数と、12件のコメント数を獲得している。とはいえ、YouTubeやFacebook、Snapchat(スナップチャット)、インスタグラムの通常の動画などがひしめくなかで、ディスカバリーがIGTVの地位を評価するのに十分な量の情報を集めるには、あと数カ月かかるだろう。

「およそ半年分のデータが手に入るまでは、内部でも外部でも、何らかの意味を浮かび上がらせることは難しいだろう」と、ディスカバリーのライフスタイル・デジタル・スタジオ(Lifestyle Digital Studios)でゼネラルマネージャーを務めるヴィッキ・ニール氏はいう。

今回取材に応じてくれたディスカバリーとほか3社のパブリッシャーにとって、ローンチから2カ月経ったものの、IGTVは依然として不可解な存在だ。したがって同プラットフォームに対しては、実験は行うべきだが、それに特化したリソースを多く費やすわけにはいかない。少なくとも、その見返りに売上を手にできる方法が出てくるまでは。

「ある種の実用性がある」

となるとパブリッシャー各社は、すでにほかのプラットフォームに配信している動画をIGTVで再利用することになる。これには通常、YouTubeやFacebookにアップロードしたホリゾンタル(ヨコ型)動画をクロップする作業がともなう。数年に前にメディア企業各社がSnapchatに参入したときの再来だ。その一方でメディア企業各社は、Snapchatに投稿したバーティカル動画をIGTVにも配信している。

このコンテンツリサイクリングのおかげで、実験にかかるコストは抑えられている。とくに、テレビやYouTube、Facebook、インスタグラム、Snapchatなど広範囲に及ぶ動画ライブラリーの引き出しを持っている、フードネットワークのようなチャンネルにとっては。

「これらプラットフォームに対する我々の関わり方には、ある種の実用性がある」と、ニール氏は述べている。

フードネットワークがIGTVで活発な動きを見せている一方で、ディスカバリーのほかのチャンネルはどうかというと、必ずしもそうではない。ディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)は6月20日に8本の動画をアップロードして以来、休眠状態が続いている。HGTVは7月30日を最後に、新しい動画をIGTVにアップロードしていない。しかし、IGTVに一点賭けするのは時期尚早であるのと同じように、そこから完全撤退するのも時期尚早だ。

「HGTVは現在、IGTV向きと思われるコンテンツを特別に作成している。近日中に公開されることになるはずだ。ディスカバリーをはじめとする我が社の一部ブランドは、このライフスタイルコンテンツがどう転ぶのかを見守っているところだ」と、ニール氏は語る。

「まだまだテストが必要だ」

ナショナルジオグラフィック(National Geographic:以下、ナショジオ)も、大半のメディア企業に比べると、IGTVに全力を注ぐ高いモチベーションを維持しているようだ。これまでのところ同社のIGTV動画は、平均で160万回の視聴回数と1250件のコメント数を獲得している。ただしナショジオは、IGTVがローンチされて以来、2本しか動画を同プラットフォームにアップロードしていない。そのうちの1本は、同社の番組「宇宙の奇石(One Strange Rock)」から、5月28日にアメリカで放送された47分のエピソードだった。6月20日にフルレングスでIGTVに配信され、同プラットフォームの最長60分というフォーマットが存分に生かされた。もう1本は8月16日にIGTVに配信された。ナショジオが8月14日にフルレングスで同社サイトに配信し、15日にYouTubeにアップロードした22分のドキュメンタリーを3分に縮小した動画だった。

「まだ早すぎると、私は考えている」と語るのは、ナショジオでインスタグラム部門のディレクターを務めるジョシュ・ラーブ氏。「我々はいま、IGTVが何なのかといったことや、それが我々に対して担ってくれる役割を定義しているところだ。インスタグラムも、IGTVがインスタグラム全体で担う役割をまだ築いている途中だ」

ナショジオの動画は長さに大きな差がある一方で、それぞれが100万回を超える視聴回数を獲得しているという事実は、IGTVの視聴者は長尺と短尺の両方に対してオープンであるということを示しているのかもしれない。とはいえ、繰り返しになるが、結論に飛びつくにはまだ早すぎるだろう。

「IGTVには、まだまだテストが必要だ。だが私が思うに、最適な長さという点では、インスタグラムストーリーズ(短尺)や従来のテレビ番組(長尺)よりも、YouTubeやFacebookに近いのではないか」と、ラーブ氏は語る。

「クエスチョンがあまりに多い」

CNN傘下のメディア企業、グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story:以下、GBS)で新興ブランドオーディエンス部門のバイスプレジデントを務めるハリル・ジェタ氏も「IGTVに関しては、いまのところクエスチョンマークがあまりにも多い」と述べる。GBSは答えを得るべく、IGTVに対するA/Bテストを行う一手段として、同プラットフォームで既存の動画を再利用してきた。GBSがIGTVにアップロードした動画7本のうちの5本は、同社が手がける「アンチャーテッド(Uncharted)」シリーズの一部として、以前にYouTubeに配信されたものだった。さらに別の1本は、もともとは2016年3月にYouTubeに配信された動画だった。これら6本の動画はYouTubeで、1本当たり平均22万6000回の視聴回数を獲得している。それに対してIGTVでの平均視聴回数は2400回だ。

ジェタ氏はIGTVがまだ初期段階にあることを考慮に入れて、YouTubeと比較するとIGTVの視聴回数が少ないことに対して、平静を保っている。「IGTVに動画を配信する際は、YouTubeと同じ視聴時間を獲得できるとは最初から思っていない。IGTV、そしてインスタグラム全体が、プラットフォームとしては、いまなお発展途上の段階にある。それに対してYouTubeは、登場してから10年以上が経っている」と、同氏は述べる。

とはいえ、IGTVにとっての主な比較対象はYouTubeであるという点は動かしがたい事実のようだ。パブリッシャーがIGTVに投稿している動画の大多数が、彼らがYouTubeにアップロードした動画をタテ型にクロップしたバージョンであることだけが理由だとしても。

「フィードバックが足りない」

男性向けファッション・カルチャー誌のGQは7月17日、満を持してIGTVに初の動画を投稿した。GQがアップロードしたのは、ファッションモデル/TVタレントのカイリー・ジェンナーとラッパーのトラヴィス・スコットに対して行ったインタビューのバーティカル動画だった。同誌は同日、2018年8月号に掲載されるこのセレブカップルの特集記事のプロモーションで、同じ動画をYouTubeにもアップロードしていた。YouTubeでは、この動画は現在までに2880万回の視聴回数と7万2000件のコメント数を獲得している。対するIGTVの視聴回数は13万6000回、コメント数は130件だ。GQはこれまでに、5本の動画をIGTVにアップロードしている。GQの広報担当者によれば、これら5本の動画は平均で4万6000回の視聴回数と34件のコメント数を獲得しており、視聴者の半分以上がこれら動画の半分以上を視聴しているという。

ジェンナーとスコットの動画で最大の成功を収めたGQだが、彼らはIGTVのために動画を制作してきた数少ないパブリッシャーのなかの1社だ。同誌は7月、コミコンでセレブたちに3本のインタビューを行い、それらをインスタグラムストーリーにティーザーとして投稿した。動画クリップをスワイプアップすると、フルバージョンの動画がGQのIGTVチェンネルで視聴できるしくみになっていた。これら3本の動画は、平均で1万6800回の視聴回数と7件のコメント数を獲得している。だがGQは、どのようなコンテンツがIGTVで受けるのかを見極めるまで、しばらく実験を続けるつもりだ。

「我々はいまも、IGTV向きのコンテンツとはどのようなものなのかを解明しようとしている。十分なフィードバックがまだ得られていないからだ」と、GQのエグゼクティブデジタルディレクターを務めるジョン・ワイルド氏は語る。

「いまのところまだ黎明期」

売上も、GQをはじめとするメディア企業がIGTVをどれくらい優先すべきかを評価するうえで役に立つだろう。インスタグラムはいまのところ、IGTV動画から利益を得る手段をメディア企業に提供していない。またパブリッシャーは、IGTVに配信するスポンサード動画の価値を広告主に売り込むことはできるが、実際にはそうしていない。ひとつには、IGTVのオーディエンス数はパブリッシャーが広告主に売り込みをかけられるほどの規模に達していないと思われるからだ。またIGTVには、パブリッシャーが広告主から料金の支払いを受けた際にその旨を簡単に開示できる、ブランデッドコンテンツ用のタグ付けツールがまだ実装されていない。ワイルド氏によれば、GQはこのツールがIGTVでも利用できるようになるまで待ってから、スポンサードコンテンツのアップロードを開始するつもりだという。

インスタグラムの広報担当者はメールで「IGTVにとって、いまはまだ黎明期だ。かつてのインスタグラムストーリーズやフィードと同じように、収益化やブランデッドコンテンツに対しては、よく考えてアプローチしたい。現在、これら分野のクリエイターたちを支援する方法を探っているところだが、いまのところ公表できる計画はこれだけだ」と述べている。

Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)