AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス氏は15日、自身が投資家宛に書いた最後の書簡を公開した。ベゾス氏は手紙のなかで、Amazonの過去1年間の成功、そして、1996年にAmazonを創業してからの成功について説明している。
AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス氏は15日、自身が投資家宛に書いた最後の書簡を公開した。ベゾス氏は手紙のなかで、Amazonの過去1年間の成功、そして、1996年にAmazonを創業してからの成功について説明している。
たとえば、ベゾス氏は書簡(および添付された委任状)のなかで、Amazonプライムの全世界の「会員が2億人を超えた」こと、Amazonの顧客が2020年に1640億ドル(約17.7兆円)相当の商品を購入したことを認めている。
しかし、ベゾス氏の書簡に記されているいくつかの数字は、その成長がどこから来ているかを正確に示しており、さらに、サードパーティセラーの台頭、物流拠点の拡大、Alexa(アレクサ)システムの成長について、既存の憶測をおおむね裏付けている。それでは、今回公開された文書のハイライトをいくつか紹介しよう。
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Amazonの売上の「60%近く」をサードパーティセラーが占めている
Amazonのサードパーティセラーは長年にわたり、Amazonの商品とAmazon.comの売上の大きな部分を占めてきた。マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)によれば、Amazonのマーケットプレイスのセラーは最近、全世界で600万を超えたが、実際に出品しているセラーは100万程度だという。Amazonが直近で売上高を報告した2020年第4四半期、サードパーティセラーサービスが前年比54%増の成長を記録した。サードパーティセラーサービスはフルフィルメントの支払いや手数料を含み、サードパーティセラー全体の成長の大まかな目安と言える。
Amazonは自社のビジネスの60%近くをサードパーティセラーが担っていると試算しており、マーケットプレイスがいかに大きな経済力を持つようになったかを示している。ただし、サードパーティセラーのシェアは天井に近づいているように見える。Amazonは2年前、サードパーティセラーは売上の58%を占めていると発表しており、すでに現在とほぼ同じ数字に達していた。
Amazonはまた、セラーがプラットフォーム上での販売によって得た利益を「250億~390億ドル(約2.6兆〜4.2兆円)」と見積もっている。こうした利益は大多数のセラーからもたらされている。ジャングル・スカウト(Jungle Scout)はサードパーティセラーに関する最新レポートで、85%のセラーが利益を上げていると報告しており、2020年の売上は「予想以上」という回答が44%を占めたと述べている。
ジャングル・スカウトのカスタマーサクセス責任者を務めるダニ・ビラリアル氏はメール取材に対し、「サードパーティ市場は非常に重要だ」と断言した。「ウォルマート(Walmart)をはじめとするほかの主要マーケットプレイスもサードパーティセラーの受け入れを急いでいる。サードパーティセラーがAmazonの成功の大きな要因であることに気付いたためだ」。
Amazonは2400のデリバリー・サービス・パートナーと契約している
Amazonは2018年、サードパーティの配送業者に派手なオファーを行った。新進気鋭の物流起業家と提携し、ビジネスの構築を支援するため、バンのリースやトレーニング、Amazonとの契約を提供するという内容だ。
このデリバリー・サービス・パートナーズ(Delivery Service Partners:以下、DSP)プログラムは企業向けのオファーで、Amazonフレックス(Amazon Flex)の請負ドライバー、Amazon所有またはリースの貨物機、請負トラックドライバーを含む複雑なフルフィルメントネットワークの一部に過ぎない。
しかし、オハイオ州立大学のロジスティクス学教授であるテリー・L・エスパー氏は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、配達の現場で「我々が目にするAmazonのバンの大部分はDSPと提携している」と話す。街で見かけるAmazonのロゴが入ったバンの多くは、DSPプログラムに登録している企業のものだ。「ドライバーたちはAmazonで働いているように見えるが、実際はDSPプログラムに参加する地元の物流会社で働いている」。
DSPはフルフィルメントのラストワンマイルに集中しており、急速にパートナーを増やしている。Amazonは2019年末、パートナーの数が800を超えたと発表していたが、1年あまりが経過した今、その数は約3倍になり、世界中で約28億の荷物の配送に貢献しているという。
DSPになることにはリスクもある。「ほとんどのDSPがAmazonの取扱量にほぼ依存している」とエスパー氏は指摘する。ただし、エスパー氏は同時に、このプログラムはAmazonのラストワンマイル事業の成長に不可欠な役割を果たしているとも述べている。
70万以上の開発者がAlexaスキルを開発している
Alexaスキルストアは、ブランドが自社の商品を宣伝し、顧客の生活により深く入り込むための人気の手段となっている。たとえば、Alexaに話しかければ、ドミノ(Domino’s)のピザを音声注文できる。ブランドが関心を持つのも当然だ。Amazonは15日、Alexaは1億以上のスマートデバイスに接続されていると発表した。
ところが近年、Alexaスキルストアの成長は停滞している。そこで、Amazonは3月、Alexaカンバセーションズ(Alexa Conversations)と呼ばれるディープラーニング開発ツールを投入した。ブランドが独自のスキルを容易に、しかも安価に開発するためのツールで、成長の後押しになることが期待されている。
しかし、たとえ新しい開発ツールを追加しても、スキルストアの当初の利点、つまり、サードパーティの開発者やブランドがAlexaで目立つ手段になるという利点は色あせ始めている。Amazonは3月、スキルストアのランディングページを変更。これが大きな転機となった。米国のAlexaスキルストアのランディングページではこれまで、サードパーティが開発した多彩なスキルをユーザーに提供していたが、現在、Amazonが開発したファーストパーティスキルのみを提供している。ボイスボット.ai(Voicebot.ai)が取材したサードパーティのスキル開発者たちによれば、以前はランディングページで取り上げられただけで発見率が最大8倍になっていたという。
Amazonが発表した数字のなかに、Amazonの動向を追う専門家にとって衝撃的なものはほとんどない。しかし、これらの数字を見れば、AmazonのエコシステムのサイロがAmazon自身と小売セクター全体にとってどれほど重要かを大まかにつかむことができる。
[原文:Logistics, third-party sellers & Alexa: What to know from Amazon’s investor letter]
MICHAEL WATERS(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:長田真)