LinkedIn にはびこる、「偽プロフィール」問題

Googleの顧客担当、ダニー・ファウンテン氏は毎週、平均2~3回、LinkedIn(リンクトイン)からメッセージを受け取るという。それ自体は悪いことではない――その発信元がつねに偽プロフィールでなければ、の話だ。

数週間前にも、このようなメッセージを受け取った――「ダニーさん、こんにちは。GoogleやGoogleで募集中のフルタイムのお仕事について詳しく知りたいのですが、力を貸してください。15分ほど、お電話で話せませんか?」。

そのプロフィールには、写真も、勤務先に関する情報もなかった。

「その手のプロフィールはたいてい、情報がほとんど載っていないか、複製かのどちらかで、後者の場合、名前で検索すると、詳しい情報が載っている別のプロフィールが見つかる。メッセージの内容はGoogleに関する問い合わせがほとんどだ。どうしたら就職できるのか、履歴書を見てもらえないか、推薦/紹介してもらえないか、などなど。なかには、会って欲しいとか、時間を割いてくれとか、そんな図々しい要求をしてくるものまである」と、ファウンテン氏は語る。

「なりすまし」は増加の一途

こうしたなりすましメッセージの数は、増加の一途をたどっている。2018年8月に登録メンバー数5億7500万人を謳ったプロフェッショナルネットワーキングサイト、LinkedInはいまや、Google画像検索から適当に持ってきたプロフィール写真から偽会社の曖昧な肩書きに至るまで、多種多様な問題を抱えた欠陥プロフィールで溢れている。さらには、これのように、承認済みマーク付きの偽アカウントまで存在する。

Screen-Shot-2019-04-11-at-10.11.44-AM

ドウェイン“ザ・ロック”ジョンソン[元プロレスラー/俳優]の偽LinkedInアカウント

こうしたプロフィールは無論、存在するだけに留まらない。数百万人もの合法LinkedInユーザーにつながりを要求するうえ、偽アカウント主がPremium(プレミアム)ユーザーであれば、具体的な要求/質問も直接送りつけてくる。

業界の有力者らは米DIGIDAYに対し、LinkedInは仕事上――たとえば、ネットワーク作りや業界の最新情報の入手など――有用なツールではあるが、大量のスパム[迷惑メッセージ]にはうんざりだと語った。これは言うまでもなく、「世界中のプロフェッショナルの生産性を高め、より成功するよう、つないでいく」という「シンプルなミッション」を掲げるLinkedInにしてみれば、良い状況ではない。偽プロフィールからのつながりリクエストにユーザーが始終煩わされることになれば、LinkedInは生産的ツールどころか、時間食い虫に成り下がる。LinkedInは 動画洗練された広告ツールを導入するなど、商品の向上に努めているものの、偽メッセージは依然、同社プラットフォーム上を横行している。偽プロフィールがどれほど存在するのか、LinkedIn側でも把握しきれていない。

LinkedInの対応と効果

「偽アカウントはLinkedInのサービス利用規約に反しており、弊社としても対策は行なっている。不正ユーザーと特定した者には、それなりの措置をとり、多くの場合、利用を永久に停止している。メンバーをあらゆる不正/悪用から保護できるよう、さまざまな自動検出技術だけでなく、人の目によるチェックや、メンバーからの報告も積極的に利用している。もしも不快に感じる何かに直面したり、身分を偽っていると思われる者を見つけたり、迷惑行為や不正確な情報の記載といった不適当な行動を目にしたりした場合は、弊社にただちに報告するよう、メンバーに促しており、ブロックやつながりの解除はいつでも可能な旨の周知に努めている」と、LinkedInのトラスト&セーフティ(信頼&安全)部門トップ、ポール・ロックウェル氏はメールで回答した。

ところが、LinkedInのこのような努力にもかかわらず、偽アカウント問題の改善は見られていないようだ。

「四・六・時・中(ALL. THE. TIME)」――LinkedInで偽アカウントを目にする頻度を尋ねたところ、アリゾナ州立大学ソーシャルメディアマネージャー、ヴィンセント・オーレック氏は携帯メールでそう回答した。「ひどいなんてものじゃない。その手のメッセージはたいてい、文法もスペルもめちゃくちゃで、とんでもない要求をしてくる。それと、女性モデルとか、そういう写真を載せたくだらないアカウントもある」。

バイイングプラットフォーム、Flytedesk(フライトデスク)のF&O(ファイナンス&オペレーション)部門VP、クリステン・サダス氏によれば、この数カ月間、偽アカウントを目にする頻度は以前にも増しているという。彼女のもとには毎週1本か2本ほど、なりすましと思われるプロフィールから「つながりリクエスト」が届く。こうしたプロフィールにはたいてい、20代後半から30代後半に見える女性の写真が掲載されており、例外なく「はじめまして(Nice to meet you)」と書いてあるという。これまでの対処法は関わらないことだったと、サダス氏は語る。

「以前は、つながりリクエストを拒否するだけだった。だが、これからは報告していくつもりだ。LinkedInは我々にとって非常に有用である。我が社の重要なポストのTOFU(トップオブファネル)リクルーティングには欠かせないツールであるから、LinkedInの迅速な対応と行動を期待している」。

競合プラットフォームとの比較

Facebookやインスタグラム(Instagram)、Twitterにも偽アカウントは無数に存在し、偽情報の拡散やフォロワー数の水増しに使われている。一方、LinkedInにおける偽プロフィールの狙いは、ビジネス関係者の目を引くことにある。

動機/目的はさまざまだ。フィッシング詐欺メッセージを送りつけるものがあれば、広大なつながりネットワークを創り上げ、コンタクトをダウンロードさせ、巨大なメーリングリストの作成を目論むものもある(後者に関しては、2018年末の新プライバシー設定の導入により、かなりの程度規制されている)。

もっとも、この変更はこうした不正行為を念頭に置いたものではないと、LinkedInのロックウェル氏は語る。

「我々は透明性(クラリティ)と管理力(コントロール)を上げる方策をつねに考えている。今回の変更はLinkedInメンバーの保護を念頭に置いて行なった。すでに、データのエクスポートを介して自分のメールアドレスを誰にダウンロードさせるのか、メンバー自身が管理できるようにしてある」。

「なりすまし」が増える理由

とはいえ、メールアドレスを勝手にダウンロードできないようにするプライバシー設定があるからといって、すべてのLinkedInユーザーがその利益を享受できるわけではない。

「LinkedInの偽アカウントは、インスタグラムのそれに比べて、かなりうまみがある。価値ははるかに高いと思う。メールアドレスをエクスポートできるし、メーリングリストは相当な金になる」と、マーケティング会社ソーシャル・ネイティヴ(Social Native)のCEO、デヴィッド・シャドポア氏は指摘する。

シャドポア氏のもとにも、素性の知れないアカウントからのつながりリクエストがひっきりなしに来る。ただ、偽アカウントの悪用法の極みは、自社のリクルーター経由で知ったという。そのリクルーターがシャドポア氏に見せたのは、いかにも理想的な候補者のプロフィールだった――ハーバード大卒、スタンフォード大にてMBA取得、マイクロソフト(Microsoft)で、続いてGoogleにおける長年の営業経験あり。

「じつに狡猾な偽プロフィールだよ。もしも私がヘッドハンティング会社の一員だとしたら、リードジェネレーション[見込み客を獲得するための情報]はどうやって手に入れる? うちのリクルーターがこの候補者に『こんにちは。いま、営業担当者を積極的に採用しているんだけど、どうかな?』という感じで接触すると、2日後には、どこかのリクルーティング会社から私宛てに、『はじめまして。御社は営業担当者をお探しだそうですね』というメールが来るわけだ」。

『全部スキャム(詐欺)だ』

マーケティングエージェンシーのエピック・シグナル(Epic Signal)の社員ブレット・ピーターセル氏のもとには、シンガポールやインドネシア、インドのアカウントから怪しいリクエストが頻繁に届くという。アカウント主はそれぞれ違う会社の社員ということになっているが、その多くは存在していない。

「とある会社のリクルーターだと名乗るプロフィールからしょっちゅうリクエストが来るが、どれもブロックしている。Googleで調べたら、『全部スキャム(詐欺)だ』という書き込みが山ほど出てきたから。実在する会社の場合もあったけれど、『リクルーター』を名乗る連中はみんな偽者で、URLも違っていた」。

Anna Hense(原文 / 訳:SI Japan)