今週はLINEの「クラウドAIプラットフォーム構想」について。15日に開催されたLINEの事業戦略発表会で、出澤剛CEOは3つのビジョンを発表し、この構想が含まれていた。同社はAIプラットフォーム「Clova」搭載音声ア […]
今週はLINEの「クラウドAIプラットフォーム構想」について。15日に開催されたLINEの事業戦略発表会で、出澤剛CEOは3つのビジョンを発表し、この構想が含まれていた。同社はAIプラットフォーム「Clova」搭載音声アシスタント「WAVE」を発表。Clovaをめぐってトヨタ、ファミリーマートと協業すると明らかにした。LINEがAIに取り組むのはかなり大きな転換だろう。
LINEは日本、タイ、インドネシア、台湾を中心にユニークユーザー1億7000万という規模がある。ユーザーのアクティビティがスマホに集中するなかで、コミュニケーションを握るのが強みだ。
しかし、テック企業の開発者はすでにポストスマホを開拓している。LINE事業戦略発表会に先立って開催されたGoogle、マイクロソフト、Apple、Facebookの開発者会議では、AI / IoT、AR / VR などに関する技術を、プロダクト開発により一般の人々にどう提供するかが検討された。
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少し乱暴だが、Google、マイクロソフト、Apple、Facebookの開発者会議でこの領域に関する傾向をまとめるとこうだ。
- 多量のデータをクラウド上の知性、接点における知性により活用する
- 人工知能の学習・活用に利用される特化型のチップの開発
- IoTの第一歩として、音声データの収集方法としてのホームデバイス
- 音声認識、AR / VRのほかクラウドコンピューティングの進歩によるデバイスの多様化、あるいは消失
グラフィカルユーザーインターフェイス(下図)は現在の圧倒的な主役の座を失う可能性がある。音声、VR、アシスタントをインターフェイスに採用するテストが常に行われている。ユーザーをネット接続させ続けるさまざまなコネクティッドデバイスに、アプリケーションとして存在できなければ、価値を表現できない。LINEがモバイルを制圧していたとしても、ユーザーがスクリーンを見ていない時間、別の接点で別のアプリを音声で操作していれば、優位性が揺らぐ。おそらくこういう危機感が今回のビジョンの背景にあるだろう。
AI開発戦争を追走できるか?
スクラッチから始めたLINEは果たしてAI開発競争にキャッチアップできるのか? 後発で、人工知能開発における効果的なパートナーシップをもたないLINEが食い込む隙間があるだろうか?
音声アシスタントにおいて重要な音声認識技術をとっても、グローバル企業は認識の精度をめぐる激しい競争をしている。マイクロソフトは昨年9月に誤認識率6.3%を達成。IBMは3月に誤認識率を5.5%まで落としマイクロソフトを上回ったと発表。さらにGoogleは5月に、誤認識率を1年前の8.5%から4.9%まで減らしたと発表。「畳み込みニューラルネットワーク」を用いて精度を高めている。上記の企業はこの領域の研究者・エンジニアを軒並み囲い込んでいる。
米国では音声アシスタントの普及が進み、音声の学習データの蓄積でAmazonとGoogleが先行している。音声アシスタント普及以降、センサーデータを解析し、アクションする高いパフォーマンスのAIを提供するプラットフォームになりたければ、特化型チップの採用や巨大なコンピューティングパワーの確保、「畳み込みニューラルネットワーク」開発などに莫大な投資が必要になる。ハイレベル人材は自身の業績を伸ばし、発表できる場にしか集まらない。LINEのAIビジョンは、それが「マーケティング上のAI」か、それともそうではないかが問われることになるはずだ。
以下、今週のほかのトピック。
▼Googleクラウド事業の強みは人工知能
「Google Cloud Next ’17 in Tokyo」が14、15日に東京で開催された。Google クラウドビジネス担当シニアバイスプレジデント、ダイアン・グリーン氏は記者会見でGoogle Cloud Platformの強みは機械学習 / 人工知能のケイパビリティと強調した。
▼ベライゾンの米Yahoo買収完了
米通信大手ベライゾンは米国時間6月13日、45億ドルで米Yahooの中核事業買収を完了したと発表。Yahoo事業はAOLと統合する。
▼GoogleとFacebookで米広告市場の7割
IAB-PwCのデジタル広告収益レポート(Q1)が発表された。Q1の米国のデジタル広告収益は196億ドル。デジタルコンテンツネクストのジェイソン・キント氏によると、GoogleとFacebookで収益全体の72%を占め、収益の成長分の84%を取った。
sorry, been in meetings. Q1 data is out. My math – Duopoly took 84% of the growth in the industry. Congrats “Everyone Else.” @DCNorg pic.twitter.com/hhGhRiMezL
— Jason Kint (@jason_kint) June 14, 2017
▼アドテクスタートアップへのベンチャー投資が激減
米国市場でのアドテク企業の新規参入は難しい状況。GoogleとFacebookの寡占に隙間なし。
▼アマゾンがクレカ以外を優遇
Amazonは米国のプライム会員に、デビットカード払いには2%のキャッシュバックをつけるキャンペーンを開始。
▼セールスフォースがDMP提供開始
昨年買収したDMPのKruxをインテグレート。マーケティングクラウドの一機能になる。
Written, Photograph by 吉田拓史