Amazon傘下のゲーム専用ライブストリーミング配信サービスのTwitchが、双方向ゲームのストリーミング配信の購入を広告主に呼びかけている。視聴者がゲームを見ながらゲームのプレイヤーに指示を出せる、ライブストリーミングとビデオゲームのハイブリッドコンテンツを広告主とエージェンシーに売り込んでいるのだ。
「きみならどうする?(Choose Your Own Adventure)」スタイルのブランデッドゲームが、Twitch(ツイッチ)に続々と登場しそうだ。
Amazon傘下のゲーム専用ライブストリーミング配信サービスのTwitchが、双方向ゲームのストリーミング配信の購入を広告主に呼びかけている。双方向テレビ番組への出資を計画しているNetflix(ネットフリックス)と同じように、視聴者がゲームを見ながらゲームのプレイヤーに指示を出せる、ライブストリーミングとビデオゲームのハイブリッドコンテンツを広告主とエージェンシーに売り込んでいるのだ。広告が多すぎるという批判を視聴者から受けているTwitchは、顧客体験をなるべく損なわずに広告を配信する手段として、ブランデッドゲームに期待を寄せている。
ポルシェのケーススタディ
ポルシェ(Porsche)は、Twitchで視聴者がお気に入りのストリーマーではなく「きみならどうする?」スタイルのブランデッドゲームを選ぶかどうかテストした最初の広告主だ。ポルシェは、同社初のEレーシングカーを18〜34歳の若いオーディエンスに宣伝したいと考えていたが、従来のテレビやラジオの広告購入に依存しない方法を探っていたと、Twitchで欧州地域のカスタムソリューションディレクターを務めるアダム・ハリス氏は述べている。
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レースとゲームには重なっている部分が多い。そこで、一部の自動車広告主はゲーマーをターゲットにした取り組みを強化している。キアモータース(起亜自動車)のようにeスポーツのイベントをスポンサードする企業が現れるなか、ポルシェなどのメーカーは、1500万人以上いるとされるTwitchのデイリーアクティブユーザーを狙おうとしている。
Twitchで8月28日に行われたポルシェ初のゲームは、VR(仮想現実)体験を提供するものだった。このゲームをプレイした視聴者は、実際のポルシェの施設を走る2人のドライバーにさまざまな指示を出した。4時間にわたるライブストリーミング中、視聴者は各ドライバーが巨大な迷路のようなさまざまなコースを脱出する方法を、投票によって決めることができた。そして、ドライバーがすべてのコースを制覇すると、広告主であるポルシェの新しいフォーミュラEレースカーが披露された。
ハリス氏によれば、このゲームは、Netflixの双方向動画番組「ブラック・ミラー: バンダースナッチ(Black Mirror: Bandersnatch)」とそれほど違ったものではなかったという。
視聴者&エージェンシーの反応
視聴者はおおむね、このようなアプローチを好んでいたようだ。Twitchによれば、ポルシェのブランデッドゲームは、ライブ配信中のビュー数が最大で約2万8000件を記録し、配信開始以来のビュー数は200万件を超えたという。ただし、この双方向ゲームに参加した人の数をハリス氏は明らかにしていない。Twitchでもっとも人気の高いストリーマーであったニンジャ(Ninja)の同時視聴数は、彼が競合ゲーム動画サイトのミキサー(Mixer)に移るまでの数週間で4万件前後だった。
「バンダースナッチは、『きみならどうする?』スタイルのゲームが人々の関心を集めることを気づかせてくれた」とハリス氏はいう。ポルシェのキャンペーンは、視聴者がキャンペーンをコントロールする「体験型ゲーム」をTwitch社内のクリエイティブチームが制作するきっかけになったと、欧州地域のクリエイティブディレクターも務めるハリス氏は語った。「我々が目を向けているのは、ストリーミング中に視聴者が話の流れをコントロールできるような、創造的な物語やストーリーだ」。
ただし、広告主にお金を出してもらうには、いくつかの課題について説得する必要があるかもしれない。たとえば、広告主はキャンペーンのコントロールをオーディエンスに渡すことになるため、ブランドを激しく嫌う視聴者にキャンペーンを乗っ取られる可能性がある。さらに、ブランデッドゲームは、Twitchでの通常の広告キャンペーン(CPMあたり2ドル~10ドル(約212円~1060円))より費用がかかる可能性があると、Twitchとの取引に影響が出ることを懸念して匿名を希望したあるエージェンシー幹部は述べている。
ハリス氏はブランドセーフティについて、提携しているストリーマーを活用してブランデッドゲームを制作することで、ブランドの広告や商品が不適切なコンテンツに表示するのを防ぐつもりだと述べている。また、ブランデッドゲームのうえにオーバーレイ表示される双方向機能をさまざまなゲームに簡単に導入できるようにすることで、広告主にかかるコストを下げる取り組みをはじめる予定だという。
広告主がTwitchの双方向ゲームに予算を振り分けるとすれば、テレビ広告の予算が使われる可能性が高いと、ユニバーサル・マッキャン(Universal McCann)のロンドンオフィスでアカウントディレクターを務めるチャーリー・リガル氏はいう。「メディアキャンペーン計画の方法を変更しようとしているブランドが、双方向テレビとしての視聴コンポーネント、そしてキャッチアップサービスを念頭に置くことはもはやない」と、同氏は語った。「動画への全体的なリーチを確実に獲得できる場所として彼らが念頭に置いているのは、TwitchやYouTubeなどのプラットフォームだ」。
クラウドゲーム化する試み
Twitchはかなり前から、双方向のブランデッドゲームに取り組んでいる。2014年には、人気の高いゲームをプレイするクラウドゲーム化する試みの一環として、「TwitchPlaysPokemon(トゥイッチ・プレイズ・ポケモン)」を開始した。その4年後には、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)と提携し、視聴者がグループチャット機能を使って、ビデオゲームの人気キャラクターであるララ・クロフト(Lara Croft)をさまざまなパズルで操作できるゲームをリリースしている。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)