YouTube の新たなブランドセーフティ問題と、広告主の反応 :以前よりも現実的に

YouTubeで新たに起こったブランドセーフティ問題に対して、広告主は以前とは異なった対応をとっている。2017年の騒動の際は、広告主の多くが安全策として広告出稿を停止する措置をとった。

2020年1月、ガーディアン(The Guardian)によって、YouTubeの新たなブランドセーフティ危機が報じられた。その記事によると、サムスン(Samsung)、ロレアル(L’Oréal)、ワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)、ダノン(Danone)といった企業の広告が、気候変動を否定する内容のYouTube動画で流れていたという。その後、各社はただちに、彼らが不適切と判断したコンテンツから広告を引き上げた。

ロレアルは声明を出し、YouTubeと協力して、気候に関する誤った情報を拡散する動画から広告を削除する作業にあたっていると述べた。それでも今回、同社がほかのYouTube動画に表示する広告の購入を停止することはない。有害動画にマネタイズしている広告の存在が発覚し、広告主の多くがキャンペーンを完全に取り下げた2017年に比べると、今回の彼らの反応はより現実的なものだ。

先のブランドセーフティ騒動で主に問題となったのは、テロリズムや小児性愛関連の動画であり、そうしたコンテンツに関しては、投稿すべきでないという社会的なコンセンサスがある。しかし、気候変動の問題に関しては、気候変動を否定する動画をネットに流すべきか否かについて一般社会のコンセンサスがとれていない。気候変動全般について議論する動画は、サムスンやロレアルといった企業のサステナビリティに関する評価を高めることにもなりうるが、内容が事実と異なっている可能性もあり、今回の件ではそれが後から判明した。とはいえ、現在のYouTubeで得られるコントロールでは、事実と異なる情報を含む動画を広告主が避けることはできない。自社広告が表示されるのが、気候変動を議論する動画の場合もあれば、そうでない場合もある。

YouTubeで厳密なコントロールができない状況では、広告主は事実上モグラたたきに追われるしかない。自社にふさわしくない動画に広告が表示されているのを事後に知り、それらをブラックリストに入れるのだ。しかしその場合、広告主は自社広告のダメージになりかねないトピックを避けるのと引き換えに、オンラインでリーチできる人数を減らす可能性に直面することになる。

より先回りしたアプローチ

不適切なコンテンツに広告が表示されるリスクと、YouTubeでより多くの人に広告を見せるメリットの両方に折り合いをつけるために、広告主はホワイトリストとブラックリストの管理に関して、より先回りしたアプローチをとるようになっている。

たとえばユニリーバ(Unilever)は、どのYouTube動画をブラックリストに入れるかを決定するのに、自社のマーケターやエージェンシー幹部といった人間の判断を参考にしている。モンデリーズ(Mondelez)もこれと同様のアプローチを採用していると、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)は報じている。

「ブランドセーフティに関するリスク許容度を『高』に設定していない限り、あらゆるマーケターはエージェンシー、パブリッシャー、およびコンテンツプラットフォームと協力して、ホワイトリストとブラックリスト、およびその中間にあるものを積極的に、一貫して管理する必要がある」と、ハバス・メディア(Havas Media)の最高データ責任者、ピーター・セドラチェク氏は述べている。

ピュブリシス(Publicis)傘下のメディアエージェンシー、ゼニス(Zenith)では、広告主の広告が不適切なコンテンツに表示されることを事前に回避する取り組みをプランナーが行っている。それはまず、どのようなコンテンツが自分たちの拡散したいメッセージにふさわしいかを、広告主とともに決定するところからはじまると、同社グローバルディレクターのアンドリュー・ジュード・ラジャナサン氏は話す。同氏によると、個々の広告主がブランドセーフティに関する明確なガイドラインを設定しており、それらは定期的に見直され、必要に応じて更新される。たとえば、YouTubeからその日もっとも話題性のあるニュースのリストが提供されると、プランナーはそのなかに、広告主のYouTubeキャンペーンが避けるべきニュースネタはないか判断するのだという。

ブランドスータビリティ(適合性)へ

またオープンスレート(OpenSlate)のプラットフォームを利用すれば、広告主は特定の動画をブロックした場合に、自分たちがどれだけのインベントリー(在庫)を選択肢から外すことになるかを予測できる。そしてそれらの情報をもとに、広告主の評判を傷つける動画、あるいは広告のパフォーマンスを低下させる動画を回避する取り組みがなされる。ほかにも、ゼファー(Zefr)などのアドテクベンダーが立ち上げているデータ管理プラットフォームは、広告主がコンテキストに基づいて動画をターゲティングできるようにすることで、ある動画が広告主にふさわしいかどうかを説明できないキーワードツールに頼らずに済むようにしている。

「広告主は広告の表示先に関して、より細かく検討するようになっている。あまりに的を絞りすぎると、リーチする人数が減り、コストが上がるというリスクが出てくる」と、動画アナリティクス企業オープンスレートのCEO、マイク・ヘンリー氏は述べている。

Googleにおいても、広告主が自社ブランドにふさわしくない動画を避ける手助けを試みている。YouTubeは、2017年に起こった最初のブランドセーフティ騒動以降、人間のコンテンツモデレーターを雇っており、また、動画をスキャンして好ましくない音声や映像が含まれていないか判定する技術に改善を加えている。

「白か黒かの二者択一となっているブランドセーフティから、より主観的な判断となるブランドスータビリティ(適合性)へと議論はシフトしている」と、ヘンリー氏はいう。「そうした議論の中心となっているのは、YouTubeのようなプラットフォームにおける安全地帯からはみ出していないかを判断するにあたって、広告主が検討するコンテンツの幅をこれまでより拡大していくということだ」。

エージェンシーとの契約にも変化

ブランドスータビリティへの方向転換は、ブランドセーフティ戦略がウェブ全体で徐々に洗練の度を高め、きめ細やかになりつつあることを示している。

広告主はエージェンシーとの契約に、自社のブランドセーフティ目標に合致する広告にのみ料金を支払う旨の条件を盛り込むようになっていると、メディア監査企業エビキュイティ(Ebiquity)でデジタルディレクターを務めるアンガス・マクリーン氏は話す。同氏によると、このような基準がエージェンシーのパフォーマンスに関連する料金やボーナスの支払い条件に組み込まれることが増えつつあるという。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)