米司法省がGoogleの検索事業をめぐって起こした反トラスト法訴訟は、インターネットの未来をめぐる戦いといわれているが、この訴訟の初期段階の手続きで、Googleの広告販売業務に関する重要な情報が明らかになった。 注目す […]
米司法省がGoogleの検索事業をめぐって起こした反トラスト法訴訟は、インターネットの未来をめぐる戦いといわれているが、この訴訟の初期段階の手続きで、Googleの広告販売業務に関する重要な情報が明らかになった。
注目すべきポイントは、Googleが収益目標を達成するために価格調整を行っていたこと。そして、広告オークションに関して、勝ち負けを意味する言葉を意識的に使わないようにしていたことだ。
証拠を非公開にしようとするGoogle
この法廷闘争の核心は、「iPhone」でデフォルトの検索エンジンとなるためにAppleに年間数十億ドル(数千億円)を支払うなど、Googleがデフォルトの検索エンジンとしての地位を維持すべくメディア企業、通信事業者、デバイスメーカーと行っている取引が、米国の競争法に違反しているという米司法省の主張にある。
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当然ながら、Googleはこのような見方を否定し、オンラインサービスプロバイダーが「デフォルト」によってサービスを提供するのは長年の慣行であり、ユーザーは「数回クリックするだけで」競合他社のサービスにアクセスできると主張している。
この裁判は10週間にわたってベンチトライアル(非陪審審理)形式で行われ、アミット・P・メータ裁判長が証拠の評価、法律の適用、および評決の責任を単独で担うことになるため、訴訟の進捗を追いかけることは難しいかもしれない。
審理の様子がライブ配信されず、提出された証拠の多くが司法省サイトの本訴訟のページに掲載されておらず、さらに一部の審理が非公開で行われていることもその一因だ。証拠を非公開にしようとするGoogleの行動に、原告が大きな不満を抱いていることは興味深い。
それでも、これまでに開示された情報をまとめた以下の記事を読めば、広告主は眉をひそめるだろう。
見逃せない証言の数々
司法省の主な標的のひとつは、Googleの1630億ドル(約24兆3300億円)規模の検索広告事業だ。9月下旬、証言台に呼ばれたGoogleの広告担当バイスプレジデント、ジェリー・ディッシュラー氏がいくつかの注目すべき事実を認めたため、この広告事業に対する詳しい精査が行われた。
秘密裏の値上げ
ディッシュラー氏は9月18日、当初の売上予測の達成を求める圧力を感じていたGoogleが、広告オークションに調整を加えていたことを認めた。
コマーシャルチームが目標を達成しようとあらゆる手段を講じることは珍しくない。だが、オークションの最低価格の引き上げといった戦術に関して、Googleが常に透明性を確保していたわけではないという証言は、広告主のあいだで懸念を引き起こすだろう。
「価格変更に関しては、広告主に伝えないことがよくある」とディッシュラー氏は述べ、このような調整を「チューニング」と表現したと、ブルームバーグ(Bloomberg)は伝えている。
ディッシュラー氏の証言によれば、場合によっては10%ほどの値上げになることもあったという。
検索広告サービスの見直しを求める圧力は感じず
この点に関して、ディッシュラー氏は2016年4月、オーガニック検索サービスの改善を働きかけていたと思われる製品チームのメンバーとの社内メールで、「広告サービスの見直しを求める圧力を市場から受けたことは一度もなかった」と記している。
だが、付随資料に記載された社内議論の一部を調べたところ、ディッシュラー氏が当初の売上予測を達成するために「調整」の検討をチームに促していたことが、開示手続きのなかで見つかった2019年5月のやり取りの記録から明らかになった。
「この四半期の数字をどこまで悪くしたいのか」と、同氏のメールには書かれている。
とはいえ、ディッシュラー氏は証言台で裁判官に対し、価格を15%も引き上げることは「危険な行為」だと述べ、市場ではメタ(Meta)やTikTokといった大手ハイテク企業のプラットフォームが待ち構えていると指摘した。
対外コミュニケーションに関する指示
また、2011年に制作された「Antitrust Basics for Search Team(検索チームのための反トラスト法基本ガイド)」というタイトルの文書も、証拠として提出されている。「秘匿特権」とされていたこの文書で、Googleは従業員に対し、「市場シェア」、「規模」、「バンドル」、「提携」といった言葉の使用を避けるよう指示している。
このような言い回しはいずれも、シャーマン反トラスト法で特に禁止されている独占的慣行を連想させるものだ。そのため、パートナーとの書面によるコミュニケーションでこうした言葉や「勝ち負け」を意味する表現を用いないよう、同社はこのガイドで指示していた。
[原文:Key takeaways from the DoJ’s battle with Google that advertisers really should know]
Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)