ADVERTISING AND APPLE

ついに来た! iOS14.5 の追跡制限、その「勝者」と「敗者」

Appleが待ち望んでいた規制がついに実施される。

本日より、Appleユーザーはそのデバイス上で、さまざまなアプリケーションによるトラッキングについて、許諾を求められるようになる。さて、ここからが大変だ。これがどのように作用するか、いまのところ誰にもわからないが、モバイル広告が今までとは違うものになることは明らかだ。

これにより、ビジネスモデルが再構築され、モバイル予算が見直されるなか、それに続く混乱において、勝者と敗者が生まれてくる。その結果、誰がもっとも利益を得て、誰がもっとも損失を被るのか? DIGIDAYは次のように考える。


勝者 / Winner

Apple:すべてが計画通りに進み、人々が一斉にトラッキングを拒否した場合、Appleは複数の面で利益を得られることになる。1. ユーザーデータを裏で利用し、利益を得ていた企業を打ち負かしたとみなされることで、Appleブランドのハロー効果が得られる。2. Apple自身の広告ネットワークは、ライバルのプラットフォームでは実現できないレベルで、エコシステム内のユーザーを追跡できるため、市場シェアを拡大できる。3. Appleデバイスの所有者を追跡することで、大規模な広告ビジネスを展開していたFacebookに、ATT(App Tracking Transparency)のフレームワークで大打撃を与えられる。4. そして最後に、この施策よって、App Storeでのオンライン広告を効果的に制限し、アプリの人気ランキングをコントロールしやすくなる。

こうした一連の流れによって、多くのパブリッシャーは生き残りを賭け、アプリ内広告よりもアプリ内決済を優先せざるを得ない状況になるかもしれない。その場合、Appleはそれらの企業に、アプリ内において独自の決済システムを使用するよう働きかけることで、より大きな影響力を持つことになる。なにしろ、このシステムでAppleは、ひとつの取引から最大30%の利益を得ているのだ。

ウォールドガーデン:Facebookのようなプラットフォームが、Appleのエコシステムに存在する多くのプロパティからセラーとバイヤーを結びつけることで利益を得られない場合、唯一の現実的な選択肢は、同じことを自分たちだけでやろうとすることだ。別の言い方をすれば、Facebookのようなプラットフォームは、自分たちのウォールドガーデンに、パブリッシャーのコンテンツ体験を誘い込もうとするだろう。そこで、パブリッシャーたちはAppleを離れ、独自のデータを生成し、制御することができる。実際、Facebookは、インスタントゲーム(Instant Games)やインスタントアーティクル(Instant Articles)、Facebookショップ(Facebook Shops)などのように、何年も前から、この方向に静かに向かってきた。そして、やるべきことはまだまだたくさんある。Facebookは、ATTの危機がチャンスになる前に、eコマース事業を立ち上げなければならない。だが、これは次の項目と重なる。

リテールメディア:リテールメディア全般、そして特にAmazonは、この状況をうまく切り抜けることができるだろう。Amazonのモバイルメディア事業は、アプリを中心に展開されていると、ユー・アンド・ミスター・ジョーンズ(You & Mr Jones)傘下のデータエージェンシー、フィフティ・ファイブ(fifty-five)のヒューゴ・ロリオット氏は指摘する。そのうえ、コンバージョンシグナルもAmazonアプリ上にあるため、パフォーマンスの測定や配信の最適化のために、IDFAは必要ないということだ。

コンソリデーション:アトリビューションやターゲティングなど、Appleのユーザーを追跡するためには、これらのサービスはどれも単独では役に立たなくなっている。Appleは、自社のエコシステム内において、独立した事業者同士によるデータのやり取りを今後許さないだろう。しかし、ひとつの企業が所有する閉鎖的なエコシステムのなかにおいては、関係者間においてデータをやり取りすることは可能だ。これは、モバイル広告の分野で、多くの統合(コンソリデーション)が行われている理由の裏付けとなる。アプリマーケティングのAppLovin(アップラビン)やパブリッシャーのジンガ(Zynga)などは、アトリビューションからアドネットワークまで、より広範なサービスを買収・構築することで、自社が所有していない広告事業者とのデータ共有に依存しなくて済むようにしている。


敗者 / Losers

Appleのカスタマー:ユーザーがATTの許諾ウィンドウに触れた際、決断に関するあらゆるニュアンスが、「はい」か「いいえ」の二択に集約されてしまう。しかし、なぜその人が追跡されているのか、その理由はメッセージに含まれていないのだ。追跡されることを拒否することで、お気に入りのアプリが継続できなくなる可能性があることは、必ずしも知られていない。トレードオフは、広告の仕組みの基本だが、多くのAppleユーザーにとっては、その概念が曖昧なのだ。

「Appleの選択は、あまりにも二者択一的だ。巨大なソーシャルネットワークによってハイパーターゲットされた 『気味が悪い』 広告に対するユーザーの不快感を取り除こうとするあまり、関連広告を見ることの利点を無視している」と、アドコロニー(AdColony)でパフォーマンス・アンド・エクスチェンジのSVPを務めるベン・ホームズ氏は指摘する。「オプトアウトしたユーザーには、ユーザーが利用していない言語、すでに所有している製品、あるいはまったく関連性のない製品の広告が表示されるようになる。そのようなユーザーにとっては、お気に入りのアプリの使用感が著しく低下するだろう」。

パーフォーマンスメディア企業(と、マーケターたち):Appleのトラッキングデータに依存して、アプリのインストールに伴う広告露出を行っている企業は、問題を抱えていると言える。Facebookのアプリ内広告は、インストール時のビュースルーとクリック時のビュースルーを比較して最適化されているため、Googleよりも大きな影響を受ける可能性がある。トラフィックを集約し、販売、アクティベートするデータ企業も、特にサードパーティーアプリとの統合に依存している場合、苦戦するだろう。

言うまでもなく、これらの企業がリスクにさらされているのであれば、それに依存しているマーケターも同様だ。

「マーケティング担当者がCRMや『データレイク』ソリューションに多額の投資をしてきたリソースでは、マーケティング担当者が期待していたポジティブなROIを示すことはできないだろう」と、ホームズ氏は語る。「戦略はいずれ調整されるだろうが、マーケティング担当者がiOSトラフィックから得ている現在の効果は、二度と得られない可能性が高いと思われる」。

パブリッシャー:アプリのパブリッシャーは、さらにひどい扱いを受けることになる可能性がある。たしかに、パフォーマンス広告主が広告をターゲットにすることも、最適化することもできなければ、彼らは大きな損失を被ることになる。だが、それだけではない。もしAppleがパブリッシャーたちにビジネスモデルの変更を強要し、サブスクリプションやその他のアプリ内購入へいままで以上に依存するようになれば、コンバージョンするたびにAppleへの高額な税金に翻弄されることになるかもしれないのだ。

また、パブリッシャーは関連企業にも気を配らなければならないという厄介な問題もある。パブリッシャーは協働する企業に責任を持つだけでなく、その企業が他所で行うことにも責任を持つことになるのだ。その分、アプリがAppleにブロックされるリスクは大きくなる。

「当社収益のほとんど(85%)がプログラマティック広告によるものであることに加えて、ATTの契約条件にある『誰かがあなたのアプリでおかしなことをしていなくとも、別のアプリでやっている場合は、あなたに責任がある』という項目をに対処しようとしている」と、匿名を条件にしたモバイルアプリパブリッシャーの最高収益責任者は述べた。「そのため、ここ数週間、アドテクノロジー市場とのあいだで、難しい話し合いが行われている」。

[原文:It’s here! The winners and losers of Apple’s seismic privacy change

SEB JOSEPH(訳・編集:長田真)
ILLUSTRATION BY IVY LIU