ソーシャルメディアプラットフォームそのものは、現れては消えを繰り返し、現時点でも必要以上に存在している。オーディエンスの分散に合わせてブランドやマーケターは新しいソーシャルメディアが出現すればリソースを投じる必要があるが […]
ソーシャルメディアプラットフォームそのものは、現れては消えを繰り返し、現時点でも必要以上に存在している。オーディエンスの分散に合わせてブランドやマーケターは新しいソーシャルメディアが出現すればリソースを投じる必要があるが、すべてに対応することは不可能だ。仮にそう対応できたとして、サービスが消えてしまっては元も子もない。2021年、まだβ版だったClubhouseの話題を聞きつけ、専任マネージャーまで雇ったエージェンシーやブランドがいたことを忘れてはいけない。
重要なのはどのソーシャルメディアがデジタルの墓場行きになり、どのソーシャルメディアが生き残るのかを見極める点にある。今の情勢に合わせて表現するなら、TikTokのハイプサイクルやユーザーエンゲージメントと同程度に安定しているサービスをどうすれば見出せるのか、ということだ。そして、これは非常に難しい。
なぜなら、ブランドやマーケターにとってのメディアプランの文脈において、ソーシャルメディアに求められるのは広告的影響力であることが多いが、ソーシャルメディアの隆盛自体は文化的影響力が左右する。逆説的ではあるが、ふたつの影響力の溝が少ない、あるいは埋まりつつあるソーシャルメディアは、この先も生存し続けられると考えられる。
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広告的影響力
はっきり言って広告的影響力は極めて明白だ。例えば米国のソーシャルメディア広告費において75%を占めているのはMetaだ。Facebookとインスタグラムの「合算」であることを加味しても、その影響力が圧倒的であることがよくわかる。そもそもブランドはメジャープラットフォームで大規模なオーディエンスにリーチしようとしがちなのだから、Metaに大量の広告費が投じられるのは当たり前ではあるにせよ。
そしてもうひとつはっきりしているのは、この広告的影響力に匹敵する存在がいないということだ。このままでは今回のBriefingがここで終わってしまう。広告的影響力の成長が著しいソーシャルメディアについて考えてみよう。
成長という意味では、明らかにTikTokがそうだ。TikTok広告のサポートリクエストは年々増加し、広告主から専門エージェンシーが求められるほどになっている。2023年だけでも相当の拡大を記録しているが、米広告業界のエグゼクティブたちはに、2024年におけるTikTokへの支出増は2023年を25%も上回る勢いだと口にしている。Insider Intelligenceの予測では、TikTokのデジタル広告市場占有率は2023年の2.2%から、2025年3%へ増加する。この勢いを超えるものはないだろう。
ただし、前述の通りそのTikTokの影響力もMetaの前ではごく小さいものだ。TikTokは依然、広告的影響力よりも文化的影響力のほうが大きい。ただし、その差を着実に埋めつつもある。
文化的影響力
ブランドがソーシャルメディアを好むのは、そこにオーディエンスだけでなくカルチャーが存在するからだ。そこでのコミュニケーションは、うまくいけば広告的文脈から離れることができる。広告的影響力はまだまだ小さいTikTokがこれほどブランドやマーケターから注目されるのも、その文化的影響力の大きさによる。
広告的影響力では他者を圧倒するMetaですら、これまでに何度も新興プラットフォームの文化的影響力とその勢いを利用すべく、それを模した機能をリリースしてきたのはよく知られている。インスタグラムのストーリーズはスナップ(Snap)の後追いであり、ThreadsはXの危機に乗じてローンチされた。しかもこの「文化的影響力ロンダリング」は、意外に効果的だ(ただし後者に関してはかつてのTwitterのエンゲージメントの半分程度で、このままThreads戦略を続けるべきか、それともそのリソースをXへ戻すべきか悩んでいるエージェンシーやブランドは多いとのこと)。
一方で、カルチャーはメディアプランやコミュニケーションにおいて「あるといいもの」だが、「なくてはならない存在」ではない。Metaの文化的影響力ロンダリングを始め、各ソーシャルメディアが互いにフォーマットを模倣し合うところからも、ある程度の代替が可能でもある。
トレンドに置いていかれる恐怖感もあって、ソーシャルメディアでは先陣を切らなければならないという謎のプレッシャーがある。しかし、マーケティングエージェンシーのランドリー・サービス(Laundry Service)で代表を務めるジョーダン・フォックス氏は、オーディエンス数やユーザーエンゲージメントが着実に成長していないのなら(場合によってはメディアに取り上げられて、自分たちが1番だと自慢はできるが)、文化的影響力だけを信じて新興プラットフォームで真っ先にプレゼンスを示すことに本質的な価値はないと指摘している。
主な数字
1万4000ドル(約210万円円):TikTokで2023年度第4四半期の広告費が7万ドルを超えた広告主に提示される、2024年に使用可能な広告クレジット。これによりTikTokは2024年の広告費を確保しようとしている。
92%:2023年3月のDIGIDAYリサーチにおいて、インスタグラムにマーケティング予算を割り当てていると回答した広告主の割合。
1億人:Threadsローンチから1週間で登録されたユーザー数。ただし完全新規ではなく、インスタグラムのアカウント流用を相当に含む数字ではある。