多くのインターネットユーザーは疑問に思っている。数週間前に購入したスニーカーの広告が、いまだにネット上で表示されるのは、どうしてなのか? こうしたよくありがちな状況では、関係者すべてが損をする。本記事では、このようなことが、いまだに起こる理由、しつこく表示される広告を止めることができない理由を探る。
リターゲティング広告は、非常に効果的であったとしても、顧客コンバージョンに対して、かなり遠慮のないアプローチであることは周知の事実といえるだろう。
多くのインターネットユーザーは疑問に思っている。数週間前に購入したスニーカーの広告が、いまだにFacebookなどインターネット上に表示され続けるのは、いったいどうしてなのか? こうしたよくありがちな状況では、関係者すべてが損をしてしまう。スニーカー購入者はイラだちを感じ、広告主はすでに購入してくれた人間にモノを売り込んでいることになる。そして、リターゲティング広告を出している会社もインプレッションを無駄にしているわけだ。「この商品は購入済!」ボタンを用意するべきだと、みんな思っているかもしれない。
本記事では、このようなことが、いまだに起こるのはなぜか、そしてインターネットでしつこく表示される広告を止めることができない理由を探る。
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ロジスティックス障害
アドテク企業のビーズワックス(Beeswax)、メディアマス(MediaMath)そしてミノデス(Minodes)のエグゼクティブたちは揃って、以前に購入した商品が広告に表示された場合、すでに購入済みであることを表明できるような、ボタンやデジタルデータベースを実装できる技術が存在していることを米DIGIDAYに語った。しかし、いくつかの理由で、その技術はまだ大々的に展開されていない。「『オプトアウトオプション』が、いまだに開発されていないかもしれないという以外に、技術的な障害があるとは想像しがたい」と、どの機関にも所属しない、デジタルマーケティングコンサルタントのステファン・ペルソン氏は語る。
明白な技術的障害は存在しないのかもしれないが、ミノデスCEOのティム・ウェグナー氏は、この技術の実装を困難にしているロジスティックス問題が存在するという。「問題は、リターゲティングを行っている個々の企業が、独自のエコシステムを有していることだ。彼らのあいだで共通のクッキーやトラッキングツールがあれば、ユーザーにオプトアウトさせることは、より簡単だろう」と、彼は述べる。
メディアマスのプログラム・ストラテジー・オプティマイゼーションディレクターのパーカー・ノレン氏はこう付け加えた。「運営上の唯一のハードルは、関係者すべて(小売、マーケティング、テク)に協業してもらい、そして、ほかの関係者から得たデータすべてを取得する許可を得ることだ」。
クロスデバイスの問題
これから先、アドテク専門用語を使用することを知っておいてほしい。ユーザーがすでに購入済みの製品において、広告のオプトアウトが可能になったとしても、別のデバイスでふたたび、それらの広告を目にすることになるかもしれない。ユーザーが確定的にマッチングされる場合よりも、確率的にマッチングされる場合に、こうしたことが発生する可能性が高くなる。
確率的マッチングは、IPアドレスやブラウザ設定などのログイン情報以外からユーザー識別を推測している。一方で、確定的マッチングは、電子メールやFacebookのプロフィールなどの個人的なログインアカウントを通して、複数デバイスに渡り個のユーザーを追跡していく。
確定的データは、追跡を目的にしていることがより明らかだが、FacebookやGoogleに通常限定される。そのために、多くのマーケターたちが、デバイス間でユーザーをペアリングする際に、確率的データを利用することになるのだ。
Tapad(タパッド)のメディアビジネスシニアバイスプレジデントであるケイト・オローリン氏は、画面間で個人識別のコネクションがなければ、将来的にオプトアウトオプションが利用できても「モバイル上で意味をなさない。インプレッションは継続される」という。ビーズワックスのCEO、アリ・パパロ氏は、「ある機能がたとえ存在したとしても、クッキーブロックを設定しているユーザーも、正常にオプトアウトすることができないだろう」と述べた。
明確なROIが存在しない
すでに購入済の商品に対するリターゲティング広告はどうやら、みんなの悩みのタネのようだ。しかし、そうではないかもしれないという話も出ていると、パパロ氏は語る。
「消費者に 『オプトアウト』オプションを与える場合、正負に関わらず、なんらかの影響をもたらす。そして、ユーザーの興味を広告からそらす仕組みは、なんにせよ二の次にされる」と、パパロ氏は語った。
パパロ氏が伝えたいのは、ユーザーにオプトアウトを促すことで、予期せぬ結果を生むことになるかもしれないことだ。オプトアウト機能が実装された際、広告そのものに目を向けることよりも、ユーザーはその機能に注目するようになるかもしれない。特定の広告を避けるために、ユーザーはウソをつき、実際に購入してない商品を購入したとすることも可能だ。
そうなると企業は、クリエイティブのA/Bテストから得られるデータの裏付けを失うことになると、パパロ氏は述べる。本件に関する問い合わせに返信をくれたアドテク企業はなかった。
「最終的に、広告主は広告からの総収入だけを気にしている」とパパロ氏はいう。「アナタや私のような人間がイラ立っていることなど、彼らは気にしていない。そして「『オプトアウトオプション』は聞こえはいいが、こうしたサービスを利用する消費者の数は、無視できるほど小さい」。