インスタグラムの IGTV 、「ヨコ型」動画にようやく対応:ただし、広告には未対応

個人の動画クリエイター、パブリッシャー、ブランドが長編動画を投稿する際のハードルを下げるため、インスタグラム(Instagram)がIGTVをヨコ型動画に対応させた。しかし、メディア企業やマーケターによるIGTV導入を本気で促したいのであれば、広告に対応した方がいいかもしれない。

5月23日から、IGTVにヨコ型動画をアップロードすると、タテ型がデフォルトのビデオプレーヤーに縮小されたヨコ型動画が表示されるようになった。上下の大きな余白は黒く塗りつぶされている。スマートフォンを90度回転させるか、拡大ボタンをタップすると、ランドスケープモードでフルスクリーン表示できる。

IGTVの製品責任者アシュリー・ユキ氏は、「我々は多くのクリエイターから、一部のクリエイターあるいはいくつかのタイプのコンテンツにとって、(IGTVがヨコ型動画に対応していないことは)大きな制約になっていると聞かされてきた」と説明する。ユキ氏はIGTVに毎月どれくらいの動画がアップロードされているか、サービス開始以降、アップロード数がどのように推移しているかを明かしていない。ユーザー数の1日平均、1カ月平均も明かしていないが、アクティブユーザー数は「間違いなく急増している」と述べている。

IGTVはメインストリームの仲間入りを果たすのに苦労しており、ヨコ型動画への対応はインスタグラムの最新の強化策となる。2月には、動画のプレビューをフォロワーのインスタグラムのフィードに表示できるオプションを追加。その結果、メレディス(Meredith)のIGTVの番組は視聴者数が2桁増加した。そして5月には、IGTVの動画をさらに目立たせるため、インスタグラムのエクスプロア(Explore)タブにIGTVの動画が追加された

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IGTVのヨコ型動画は、タテ型表示にすると上下に黒帯が追加され、ヨコ型表示にするとフルスクリーンで再生される。

IGTVの参入障壁

2018年6月のサービス開始以降、IGTVがタテ型動画にしか対応していないことはクリエイターやメディア企業の障壁となってきた。IGTVはコンテンツクリエイターに、異なる形のコンテンツでインスタグラムのオーディエンスにリーチする新たな機会をもたらしたが、タテ型動画という制約は多くの場合、IGTV専用のコンテンツを作らなければならないことを意味した。ホイッスルスポーツ(Whistle Sports)でコンテンツ、パートナーシップ、タレント責任者を務めるジョシュ・グランバーグ氏は「特にクリエイターにとっては、かなり大きな投資であり、多大な時間を費やさなければならないことを考えると、おそらくROIに関する疑問が生じることになるだろう」と話す。

クリエイターやパブリッシャーの多くは実績のないプラットフォーム専用にオリジナル動画を制作することに二の足を踏み、様子を見るため、FacebookやYouTubeのためにつくっていた動画をクロスポストすることを選んだ。一部のクリエイター、パブリッシャーはそれを続けている。その方法はヨコ型動画をタテ長にトリミングするか、ヨコ型動画をそのままアップロードし、視聴者にスマートフォンを回してもらうかのどちらかだ。しかし、インフルエンサーマネージメント会社デジタル・ブランド・アーキテクツ(Digital Brand Architects)のマネージメント担当エグゼクティブバイスプレジデント、バネッサ・フラハティー氏は、タテ型動画という制約へのこうした対応は「本当の意味で効果的な治療法ではない」と指摘する。

IGTVがヨコ型動画に対応したことは、YouTubeのクリエイターたちが積極的にIGTVを試す「助けになるのは間違いない」と、フラハティー氏は話す。グランバーグ氏もヨコ型動画への対応は、IGTVでの「制作活動を強化する助けになる」と予想している。YouTubeの「ダンクリーグ(Dunk League)」シリーズのようなヨコ型動画をインスタグラムの長編動画プラットフォームに配信できるようになるためだ。

FacebookやYouTubeの動画を追加編集なしでIGTVにクロスポストできるだけではない。インスタグラムで58万9000のフォロワーを獲得し、IGTVで動画1本当たり平均110万の再生回数をたたき出しているクリエイターのビンセント・マーカス氏は、IGTVがヨコ型動画に対応したことで、クリエイターやパブリッシャーは、さまざまな種類のオリジナル動画を制作できると語る。一度に多くの人が登場する動画などだ。

広告に対応してない

ヨコ型動画への対応はクリエイター、パブリッシャー、マーケターがIGTVを導入、利用するための障壁をひとつ取り除いたかもしれないが、もっと大きな障壁が残されている。もっと大きな障壁とは、広告に対応していないことだ。クリエイターやパブリッシャーはIGTVにスポンサード動画をアップロードすることができ、IGTVがヨコ型動画に対応したことで、YouTubeとFacebookだけでなくIGTVにもまたがるスポンサード動画キャンペーンを販売しやすくなるだろう。ただし、現在のところ、IGTVから利益を得る方法はスポンサード動画しかない。YouTubeやFacebookと異なり、インスタグラムはIGTVに広告を表示していない。もし広告収入を得られれば、クリエイターやパブリッシャーがIGTVを利用するインセンティブになる。

もしIGTVがYouTubeの視聴者を奪い、その結果、クリエイターが得られるはずの広告収入を奪うことになるのであれば、スポンサーの付いていないYouTube動画をIGTVにクロスポストするのは「諸刃の剣」だと、フラハティー氏は指摘する。「マネタイズの問題はまだ解決していない」。

ユキ氏はマネタイズの問題にも取り組んでいると語ったが、「とても複雑な問題」というほかは詳細には踏み込まなかった。インスタグラムは、IGTVで公開されるどのような収益化製品が、視聴者の利益を損なうことなく、クリエイターやパブリッシャーにとって効果的なものになるのかを確認したいとしている。

導入はなかなか進まない

広告がないことはクリエイターやパブリッシャーだけでなくマーケターにとっても問題だ。PMGのソーシャル責任者カーリー・カーソン氏は、「ブランドによるIGTVの導入はいまだ低迷している。アスペクト比は一因にすぎない」と話す。

マーケターによるIGTVの導入を妨げているもっと大きな要因は、長編動画を制作するのにリソースが必要であること、十分な数の人々にリーチできるよう、動画を宣伝する方法が存在しないことだ。その結果、マーケターはインスタグラムのフィードやストーリーとほかのプラットフォームに広告として表示できる短編動画に注力している。カールソン氏は次のように述べている。「Facebookとインスタグラムが有料プラットフォームであり続ける限り、それ以上に確実な広告機会がIGTVにもたらされるまで、導入はなかなか進まないだろう」

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)