IGTVがローンチされてから2年が経った。インスタグラムはようやく、クリエイターがコンテンツを広告で収益化できるようにする計画を立てている。しかし、インフルエンサーたちは、これが自分たちのオーディエンス拡張とマネタイズを、どの程度助けてくれるものなのか、懸念を持っているようだ。
IGTVがローンチされてから2年が経った。インスタグラムはようやく、クリエイターがコンテンツを広告で収益化できるようにする計画を立てている。しかし、インフルエンサーたちは、これが自分たちのオーディエンス拡張とマネタイズを、どの程度助けてくれるものなのか、懸念を持っているようだ。
2月初旬、インスタグラムはインスタグラムパートナープログラム(Partner Program)の内部向けプロトタイプを開発したと認めた。これはIGTV動画に広告を表示させることで、クリエイターたちが収益を得られるプログラムだ。このプログラムの詳細はまだ少ない。Facebook広報担当者は「今後も継続してIGTVを使ってクリエイターたちが収益を得られる方法を探索していく。現時点ではシェアできる詳細はこれ以上ないが、開発が進むにつれて出てくるだろう」と述べた。
マネタイゼーションは「確かに心配になる」と旅行に特化したパブリッシャーであり、クリエイターであるアダム・グロフマン氏はいう。彼はトラベルズ・オブ・アダム(Travels of Adam)というブログを運営している。彼は、Facebookが動画に転向したことでパブリッシャーたちが動画に重点をおいて投資をし、その後Facebookがアルゴリズムを変更したことで2018年の広告収益が激減した事態を思い出す。「動画に転向して小金を広告から稼げと言われても、そこに参入するのはためらうだろう。動画への転向の一連の流れは悲惨だった」と、彼は述べる。
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「広告主はどこも(インフルエンサーやクリエイターによる)動画が欲しいと示唆する。だが、動画はまだバブルだと、私は感じている」。労力に見合った報酬を定期的にクリエイターへプラットフォームが支払うかどうか「信頼できるかは分からない」と、グロフマン氏は付け加える。
インフルエンサーたちの反応
IGTVのマネタイズ計画を公式なものにする前に、インスタグラムはグロフマン氏のようなクリエイターたちへ、まずIGTV向けのコンテンツを制作することに投資するよう、説得しなくてはいけない。グロフマン氏にとってIGTVは、YouTubeと比べて、全体的に提供するデータや分析が欠けており、本格的に投資をはじめる気にならないという。その点で納得するまでは、特定のプラットフォームに向けてのコンテンツは作らずに、まず自分のプラットフォームを第一に作ることを優先し続けると、彼はいう。
クリエイター向けのIGTVのマネタイゼーションは、ビューティとライフスタイル分野のインフルエンサーであるドゥ・フェアリー氏の動画戦略やコンテンツを変えるものではないと、彼女は言う。しかし動画制作に「割く時間を増やす」ことにインセンティブが追加されるだろうと述べた。彼女はYouTubeとIGTVに専用のオリジナルコンテンツを制作する。YouTubeと類似の広告収益シェアのモデルをIGTVも導入することを期待する、と彼女は語る。
エラヴィーガン(ElaVegan)のクリエイターであるミカエラ・ヴェ氏は、3分以上の動画だけでなく、IGTVが短尺も長尺の動画も両方マネタイズできるようにして欲しいと思っている。彼女の収益のほとんどはElaVegan.comの広告から得ているものの、ときおりスポンサードコンテンツをインスタグラムで投稿している。
競合プラットフォームとの差別化
マネタイズができる動画の最低限の長さ制限の設定は、TikTok(ティックトック)といったほかの短尺ビデオプラットフォームと競争するなかで重要になるだろう。TikTokはクリエイター向けのマネタイズはまだ行われていないが、IGTVのようにその方向に向かっている。もしもクリエイターたちが15秒や20秒だけの動画を制作し、TikTokに投稿することで収益があげられるのであれば、それよりも長い3分以上の動画を作ってIGTVでシェアするインセンティブは比較的小さくなるだろう。
IGTVプログラムのプロトタイプはFacebook Watch(ウォッチ)でクリエイターが得られるマネタイズと類似の形になるだろうと多くの人が考えている。インストリーム広告(In-Stream Ads)は3分以上の長さの動画に表示され、広告はミッドロールで開始される形だ。
インスタグラムはまた、IGTVをユーザーが必ず視聴してくれるような場所にする必要がある。これは親会社のFacebookがFacebook Watchで取り組んでいるのと同様だ。先月、インスタグラムはIGTVのアイコンをメインのアプリインターフェースから取り除いた。広報担当者によると、ホームスクリーン上のIGTVアイコンをクリックしていた人数は「非常に少なかった」と認めている。
「IGTVは、YouTubeとTikTokから差別化をし、この分野で注目を集める方法を見つける必要があるだろう」と、ライフスタイルインフルエンサーであるブルック・ミッキオ氏は言う。「もし彼らが本格的な差別化コンセプトなしに、ただ動画プラットフォームとして取り組み続ければ、ユーザーたちが利用できる、ほかのアプリのなかに埋もれてしまうだろう」。
より良いIGTV広告体験のために
しかし、バイヤーたちのなかにはIGTVが、彼らのクライアントたちが消費者にリーチする助けになるだろうと期待している者もいる。フォワードPMX(ForwardPMX)のソーシャルコンテンツ部門バイスプレジデントであるトニー・ボックス氏は、Facebook Watchに対する彼女のクライアントの注目は非常に小さく、IGTVも注目を集めるのに非常に苦労してきたというものの、インスタグラムが抱える若いオーディエンスはFacebook Watchよりも広告主にとって魅力的だ、と語った。
「(インスタグラムが)これまでに生み出した拡張機能が見せてきたような成功は、IGTVは市場において体験していない。しかしプロダクトとして失敗しているわけでは決してない」と、マイク・ドセット氏は言う。ドセット氏はRPA広告(RPA Advertising)のデジタル戦略ディレクターだ。インスタグラムのデフォルトのフィードからIGTVのコンテンツへと誘導してきたことで、オーディエンスは成長していると述べる。
フォーマットや配置に関して、具体的にどうすればIGTVにおける広告体験が良いものにできるか、バイヤーやクリエイターからの提言もあるようだ。ミッキオ氏は、バナー広告や、15秒ほどの長い広告に関しては動画内の一時停止が欲しいと述べた。また、彼女はミッドロール広告は「オーディエンスをキープ」するので好ましいとも語った。
さらなるユーザー体験の改善を
しかしPMGのソーシャル・メディア部門ディレクターであるカーリー・カーソン氏は、ミッドロール広告を好ましく思っていない。「ミッドロール広告を避けてくれることを期待する。ユーザーに与える体験は基準以下だからだ」と、彼女は言う。
ボックス氏は、IGTVに表示される広告はどれも「シームレスなアプリ内購入体験」を持っていて欲しい、と語った。ユーザー体験が広告によって衰退しないような形だ。そしてYouTubeのように広告をスキップする方法も期待している、と語った。
Deanna Ting(原文 / 訳:塚本 紺)