インスタグラムとShopify(ショッピファイ)が、アフィリエイト報酬の分野に参戦するようだ。商品のアフィリエイトリンクにおけるAmazonの優位性を、両社が崩そうとしているのが見てとれる。
インスタグラムとShopify(ショッピファイ)が、アフィリエイト報酬の分野に参戦するようだ。商品のアフィリエイトリンクにおけるAmazonの優位性を、両社が崩そうとしているのが見て取れる。
インスタグラムは6月、同社が計画するアフィリエイトシステムの詳細を発表。このシステムでは、インフルエンサーがインスタグラムチェックアウト(Instagram Checkout:日本では未実装)に組み込まれている商品を宣伝し、報酬を得ることを可能にする。チェックアウトは、ユーザーがインスタグラム上で直接商品を購入できる、アプリ内決済機能だ。一方のShopifyは、BuzzfeedやVox Mediaなど、複数の大手パブリッシャーに対して独自のアフィリエイトリンクシステムの提案をはじめていることを、テクノロジー系メディアのインフォメーション(The Information)が6月21日に報じている。これはAmazonの商品の代わりに、Shopifyのストアで販売されている商品への購入リンクを掲載することで収益を得られるシステムだという。
両社の参入は、アフィリエイト分野を支配するAmazonへの挑戦となりうる。ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)などの小売業者も、独自のアフィリエイトプログラムを運営しているが、Amazonはもっとも知名度が高く、90万人以上のインフルエンサーを擁している。
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各社のこうした動きは、さまざまな人をインフルエンサーに変えることで、アフィリエイト市場全体の間口を広げる可能性を秘めている。
「ソーシャルコマースの世界には、さまざまな小売業者やクリエイターにとって未開拓の可能性が広がっている」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのコレクティブリー(Collectively)で最高イノベーション責任者を務めるナタリー・シルバースタイン氏は話す。今回のインスタグラムとShopifyの動きから、「今後、より競争力のある手数料率が設定され、アフィリエイトプログラムの提供を試みる小売業者がさらに増えることが予想される」と同氏は述べている。
アフィリエイト市場に新規参入しようとする企業の動きに先立ち、Amazonは2020年4月にアフィリエイト手数料率の引き下げを決定し、一部の商品カテゴリーでは料率を半分以下に引き下げた。この決定により、Amazonからの手数料に大きく依存しているパブリッシャーと個人のインフルエンサーは、ともに収益が予想を下回る状態に陥った。
アプリ上で購買が完結するインスタグラム
まずは、インスタグラムのアフィリエイトシステムの仕組みを見ていこう。インフルエンサーはこのシステムを使うことで、チェックアウト機能のエコシステムに組み込まれている商品をインスタグラム上で販売し、報酬を得ることができる(現在、少数のクリエイターや企業に限定してテストを行っているという)。またTikTokも、独自のアフィリエイト報酬システムをテストしており、同社が発表した情報によるとインスタグラムのシステムと同様の仕組みになるようだ。
こうしたシステムの最大の利点は、各ソーシャルアプリ内でネイティブに機能することだ。対するAmazonのプログラムは外部リンクに依存しており、インフルエンサーは手数料を得るため、YouTube動画の説明文やブログ記事、あるいはインスタグラムやTikTokのプロフィールに、自分が推薦するAmazon商品へのリンクを掲載しなければならない。一方インスタグラムやTikTokのシステムでは、インフルエンサーはアプリ上で商品を販売することができる。この方がコンバージョン率が高くなり、紹介した商品の売り上げに関しても、インフルエンサーたちはより大きな取り分を得られる可能性がある。
またインスタグラムにとっては、同社のチェックアウト機能を採用するブランドを増やす手段になりうると、Amazonのインフルエンサープラットフォーム、リファラゾン(Referazon)のCEO、タナー・ランキン氏は述べている。「ブランドとしても、自分たちの商品がインスタグラムショップ(Instagram Shops)に組み込まれることを望むはずだ」。
Shopifyはパブリッシャーにアプローチ
一方、Shopifyのシステムは、前出のインフォメーションの報道によると、よりパブリッシャーに照準を合わせているようだ。Shopifyは、Buzzfeedなどのメディア企業と契約を結び、Shopifyのストアにリンクする見返りとして、同じパブリッシャーがAmazonにリンクした場合よりも高率のアフィリエイト報酬を提供する。シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、サードパーティパブリッシャーは、少なくない量の参照トラフィックをAmazonにもたらしている。Amazonの参照トラフィックのうち、約2%が割引情報サイトのスリックディールズ(SlickDeals.net)から、また同じく約2%はヤフー(Yahoo)経由となっている。
ただ少なくとも短期的には、Amazonのアフィリエイトリンクの価値は今後も高いままだと考えられる。というのも、Amazonは依然としてインターネット上でもっとも簡単な決済システムを提供しているからだ。ある推計によると、米国におけるeコマース売上の40.4%をAmazonが占めているため、顧客は支払い情報をShopifyやインスタグラムよりもAmazonに入力する可能性がはるかに高い。このことが、Amazonのアフィリエイトプログラムのポジョションを強固にしている。
Amazon一強は変わらない?
ランキン氏は、インスタグラムとShopifyのアフィリエイトプログラムが、Amazonから多くのシェアを奪うことはないだろうと話す。むしろ「Amazonを助ける結果になると思う。その第一の理由は、アフィリエイトマーケティングの分野に、より多くの人を呼び込むことになるからだ。これは人々にとって、アフィリエイトへの入口のような役割を果たすと考えている」。
ただ、インスタグラムのチェックアウト機能が今後普及すれば、状況は変わってくるかもしれない。というのも前述したように、インスタグラムの方が購入プロセスがアプリ内で完結するからだ。これは、インスタグラムのユーザーにとっては特に魅力的な選択肢となる可能性がある。とはいえ賢いインフルエンサーは、おそらくインスタグラムのアフィリエイトプログラムと、Amazonの両方を利用するとランキン氏はみている。
予想されるのはアフィリエイト市場の拡大
コレクティブリーのシルバースタイン氏は、これまで一緒に仕事をしてきたインフルエンサーたちは「インスタグラムのクリエイターというだけでなく、YouTubeチャンネルやTikTokも持っているかもしれない」として、さしあたり「サードパーティのリンクは今後もなくならないだろう」と述べている。
シルバースタイン氏が予想する大きな変化は、アフィリエイトインフルエンサーの定義が拡大し、自称インフルエンサーだけでなく、小規模なフォロワーグループを持つ意欲的な消費者にも、アフィリエイトシステムが開放されることだ。「私が興味を持っているのは、より幅広いインフルエンサーやコンテンツクリエイター、またそれよりはるかに多くのナノクリエイターが参加して、ブランドの価値をオンラインで伝えてくれる機会につながることだ」。
「すべてのクリエイターがアフィリエイトプログラムに参加しているわけではない」現状を踏まえれば、大きな成長が期待できる。
[原文:Instagram and Shopify are poised to join the new affiliate link wars]
MICHAEL WATERS(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)