Shopify(ショッピファイ)で販売を行っているCPG(消費者向けパッケージ商品)ブランドのいくつかは、食料品販売プラットフォームのインスタカート(Instacart)とのあいだで最近行われた広告統合の意味をどうにか理解しようとしている。
インスタカートは9月6日、新しいアプリ「インスタカートフォーShopify(Instacart for Shopify)」の導入を発表した。Shopifyに出店しているCPG新興企業が、インスタカート広告(Instacart Ads)で自社商品を宣伝できるようにするものだ。このパートナーシップは大まかにいうと、Shopifyの加盟店(マーチャント)が、インスタカートマーケットプレイス(Instacart Marketplace)で利用できる小売店を通じて、店頭での購入の際にインスタカート広告を簡単に活用できるようにすることを主な目的としている。「インスタカートフォーShopifyアプリにより、ブランドはインスタカートですでに生み出されている売上について知ることができ、インスタカート広告を設定して即座に対応を行い、発見と売上を大幅に増やすことができる」とインスタカートの商品管理担当バイスプレジデントを務めるアリ・ミラー氏は会社のプレスリリースに記した。
Shopifyを使用しているCPG新興企業2社は、インスタカートのマーケットプレイスは売上データのトラッキングが簡単で、広告の機会が得られ、パフォーマンスを簡単に追跡できると称賛している。また、インスタカート広告への見方が変わったという企業も多い。しかし、その程度の認識だ。一部の売り手は、このパートナーシップが店舗内の販売に特化しすぎており、小売店舗で十分なプレゼンスが発揮できていない新興企業には適していないかもしれないと考えている。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Shopify(ショッピファイ)で販売を行っているCPG(消費者向けパッケージ商品)ブランドのいくつかは、食料品販売プラットフォームのインスタカート(Instacart)とのあいだで最近行われた広告統合の意味をどうにか理解しようとしている。
インスタカートは9月6日、新しいアプリ「インスタカートフォーShopify(Instacart for Shopify)」の導入を発表した。Shopifyに出店しているCPG新興企業が、インスタカート広告(Instacart Ads)で自社商品を宣伝できるようにするものだ。このパートナーシップは大まかにいうと、Shopifyの加盟店(マーチャント)が、インスタカートマーケットプレイス(Instacart Marketplace)で利用できる小売店を通じて、店頭での購入の際にインスタカート広告を簡単に活用できるようにすることを主な目的としている。「インスタカートフォーShopifyアプリにより、ブランドはインスタカートですでに生み出されている売上について知ることができ、インスタカート広告を設定して即座に対応を行い、発見と売上を大幅に増やすことができる」とインスタカートの商品管理担当バイスプレジデントを務めるアリ・ミラー氏は会社のプレスリリースに記した。
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Shopifyを使用しているCPG新興企業2社は、インスタカートのマーケットプレイスは売上データのトラッキングが簡単で、広告の機会が得られ、パフォーマンスを簡単に追跡できると称賛している。また、インスタカート広告への見方が変わったという企業も多い。しかし、その程度の認識だ。一部の売り手は、このパートナーシップが店舗内の販売に特化しすぎており、小売店舗で十分なプレゼンスが発揮できていない新興企業には適していないかもしれないと考えている。
Shopify加盟店にとって旨味はあるのか
インスタカートとの統合の核心的な課題のひとつは、Shopifyが、実店舗販売には大きく進出していない小規模ブランドを主に取り扱うeコマースプラットフォームであるということだ。そのため、いくつかの小規模な食料品チェーン以外に実店舗販売を大規模に行っていない新興企業にとって、この統合はあまり利益をもたらさない。
この新しいパートナーシップが発表されたのは、インスタカートがS-1届出によって株式を公開する計画を発表した1週間後のことだ。大まかに見ると、インスタカートはIPO(新規公開株)の前に広告ビジネスを成長させるため、可能な限り多くの契約を締結しようと試みている。そしてそれは、Shopifyのように将来有望な新興企業へのリーチとアクセスを持つプレイヤーと取引することを意味するが、Shopifyのコアな顧客の多くはインスタカート広告を購入するような立場にあるとは限らない。
「この発表で目を引いたことのひとつは、ブランドがオムニチャネルモデルに移行する勢いや注力がどれだけのものかということだ。このパートナーシップは、eコマースビジネスにとって直感的にわかるものではないためだ」と、コーヒー会社エクスプローラーコールドブリュー(Explorer Cold Brew)の創設者ケイソン・クレイン氏は述べる。
エクスプローラーコールドブリューは3年前のパンデミックの最中、eコマース専業のビジネスとして創設された。これは、従来型の小売に特化したCPGビジネスと比較して参入の障壁が低かったのが大きな理由だとクレイン氏は述べている。「また、パンデミックの禍中だったため、オンラインコマースは隆盛中で、対面のビジネスより現実的だった」とeメールで回答に記している。
エクスプローラーコールドブリューは実店舗販売とShopifyサイトの両方で販売を行っており、収益としてはオンラインのほうがはるかに大きいが、現時点で広告パートナーシップは自社のビジネスに適していないかもしれないとクレイン氏は語る。同社は、シカゴのドムズキッチン・アンド・マーケット(Dom’s Kitchen and Market)、ユタのグッドアースマーケット(Good Earth Markets)、ハワイのダウン・トゥ・アース・オーガニック・アンド・ナチュラル(Down to Earth Organic & Natural)など、米国全体にわたって100店舗以上の独立店舗で販売を行っている。「将来的に広告パートナーシップを活用することには前向きだが、食料品店での扱いがより大規模になってからの話だ」と同氏は述べる。
認知拡大のチャンス
カナダのウェルネスブランドであるノムズ(Nomz)の創設者兼CEOのヤナ・ザイバック氏は、この統合についてもっと強気で、テストすることに期待している。「新興企業が、ビジネスのいくつかの側面を管理できるようになり、アナリティクス、売上、広告をトラッキングできる、より集中化されたシステムを構築できる。それによってShopify加盟店は業務を効率化し、バックエンドに費やす時間を減らして、顧客の対応に多くの時間を充てられるようになる」と同氏は付け加える。
ノムズは2013年後半、実店舗で販売を開始し、2015年にはShopifyで販売を開始した。「オンライン上で多数のリピーターの顧客基盤」を抱えているとザイバック氏は話す。これは実店舗でのプレゼンスによって促進されているという。
「オンライン顧客のほとんどは実店舗で当社のことを知り、それからオンラインに移行し、通常はサブスクリプションで買い物をするようだ」と同氏は話す。
ノムズのオーガニックバイツは、ナッツ、デーツ、ココア、海塩だけで作られており、ロブローズ(Loblaws)、プサテリズ(Pusateri’s)、ザ・ビッグキャロット(The Big Carrot)、マキューアン(McEwan)、イータリー(Eataly)など、いくつかのインスタカートに参加する小売店で扱われている。そのため今回の統合は、インスタカートマーケットプレイスでブランドの認知を高め、販売を行うのに役立つだろうとザイバック氏は述べる。
「ソーシャルメディアによるオーガニックのリーチに頼ってきたが、インスタカートを試して、さらに多くの顧客にリーチするのに役立つかどうかをたしかめられるなら、素晴らしいことだ」と、同氏は述べている。
「トラッキングおよびアナリティクス機能は、広告がどのような人々に届いているのかを理解するために役立つ。そして、より多様なオーディエンスを巻き込むためには何がもっとも影響が大きいかを見つけるためのA/Bテスト機能が特に気に入っている」と、同氏は付け加えている。
実店舗小売への投資
食料品配送の成長が減速するにつれ、インスタカートは広告収益を増やすために、さらに多くの方法を使用するようになってきた。8月には、小売店がホリデーやその他の特別な機会に買い物できるキャンペーンを簡単に開始できるようにした。また6月には、トップスフレンドリーマーケット(Tops Friendly Markets)、プライスチョッパー(Price Chopper)、マーケットサーティーツー(Market 32)を運営する親会社であるノースイーストグロッサリー(Northeast Grocery)と、より強固なリテールメディア広告パートナーシップを発表した。
それとは別に、Shopifyもほかのeコマースパートナーとの関係を広げつつあり、Amazonのバイウィズプライム(Buy With Prime)と新たに契約をまとめた。
全体として、Shopifyがこの提携に投資したことに驚いたとクレイン氏は述べる。というのも、同社はオムニチャネル小売ではなく、eコマースに主眼を置いているからだ。「悪いパートナーシップだとは思わない。ただ、わかりやすい独自の価値がまだどうしても見いだせない。これは私の理解が不足しているだけかもしれない。しかし、価値があるとしても、両社はそれをeコマースの加盟店に的確に伝えることができていないと思う」と同氏は述べる。
「Shopifyは、長期的に実店舗小売を補完するサービスやサービスに投資しようとしている可能性があり、今回の統合をその最初のステップと見ているか、あるいは段階的にその方向に進むことを望んでいる可能性は考えられる」とクレイン氏は付け加えた。
[原文:Instacart adds new Shopify integration, but CPG brands aren’t jumping to test it out just yet]
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Instacart