ライブクイズの「HQトリビア」、広告ビジネスを拡大中

2018年3月26日、ある広告が100万人を超える人々から称賛された。バイラルアプリの「HQトリビア(HQ Trivia)」がナイキ(Nike)と提携し、10万ドル(約1110万円)の賞金に加えて100組の特別仕様の「エアマックス(Air Max)」スニーカーをゲームの勝者にプレゼントするゲームを実施したからだ。これはアプリの開発元であるHQにとって初のスポンサー契約だった。同社はこのゲームのおかげで、広告でオーディエンスを惹きつける力があることをユーザーとブランドの双方に証明することができた。実際、ピーク時には170万人がこのゲームを同時に視聴していたという。

そして、広告事業への大々的な参入から1年あまりが過ぎたいま、HQはさらに大口のスポンサーや広告契約を獲得できるようになったものの、その道のりは簡単なものではなく、同社は数えきれないほどの問題に悩まされてきた。たとえば、視聴率数とダウンロード数の減少に見舞われているほか、12月には共同創設者のコリン・クロール氏が薬物の過剰摂取で亡くなった。また4月には、ブランドの顔であったメインホストのスコット・ロゴウスキー氏が、契約に関する意見の相違でHQトリビアを離れている。さらに、同社の一部の従業員が、共同創業者で暫定CEOを務めるルス・ユスポフ氏に反旗を翻す出来事もあった

そのような混乱のなか、HQはいまも数百万ドル規模の広告ビジネスウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が2月に報じたところによると、同社は創業以来1500万ドル(約16.7億円)の収益を上げたという。また、クイズに負けたユーザーが復活できる権利(1回分が3.99ドル[約445円]、3回分が9.99ドル[約1115円]、5回分が15.99ドル[約1784円])を積極的に販売したり、18.95ドル(約2115円)のマグをオンライン販売したりするなど、アプリ内購入と商品の販売からも利益を上げている。だが、収益の大半は広告からもたらされていると、財務状況に詳しい情報筋は米DIGIDAYに対して語った。

規模も分野もさまざま

クロール氏は亡くなる前の9月、米DIGIDAYの取材に対し、2018年3月に初のスポンサー付きゲームを開催して以来、1000万ドル(約11億円)の収益を記録したと述べていた。当時のスポンサーは、ワーナー・ブラザース(Warner Bros)、ナイキ、ターゲット(Target)などだ。そのうち、ナイキなどは1回限りの取引だったが、ワーナー・ブラザーズのように長期的な提携が続いている企業もある。2019年には、Amazonのオーディブル(Audible)、CBSオールアクセス(CBS All Access)、ウェンディーズ(Wendy’s)などのような新たな広告主を獲得した。

HQのスポンサーシップは、規模も分野もさまざまだ。たとえばGM(General Motors)は、2019年度第1四半期に自動車の分野でHQトリビアの独占スポンサー契約を締結したが、その契約額は100万ドル(約1.1億円)を超えていたとバラエティー(Variety)は報じている。米DIGIDAYが取材したほかの広告主と同じく、GMもこの広告枠に満足したようだ。

「HQトリビアは、シボレー(Chevrolet)がまったく新しい2019年型『シルバラード(Silverado)』をはじめて発表したときから関わりを持っているメディアパートナーのひとつだ。第1四半期の独占パートナーシップ契約では、ゲーム内でのプロモーションとソーシャルでの展開、それにコンテクスト重視のモバイルクリエイティブの制作が行われ、最終的にシルバラードを賞品として提供した。具体的な成果をお伝えすることはできないが、HQトリビアとの提携にはとても満足している」と、シボレーの広報担当者はメールで回答を寄せた。

米DIGIDAYはこの件に関してHQにコメントを求めたが、回答は得られていない。

売り文句は同時視聴機能

HQのチームは、スポンサーシップを販売するにあたって、ゲームの同時視聴機能を前面に押し出している。だが、いまのところ、2018年と同じリーチは獲得できていない(2018年3月には、賞金25万ドル[約2790万円]のゲームで同時視聴者数が240万人に達した)。それでも、ゲームあたり数十万人の同時視聴者を獲得している。たとえば、CBSオールアクセスのスポンサー付きゲーム「トワイライト・ゾーン(The Twilight Zone)」は、ひとつ目の問題で約47万8000人の視聴者を獲得したことが、このゲームの映像から明らかになっている。これに対し、Facebookが始めた勝ち抜き形式のトリビアゲームやTwitterのライブ番組は数万から数十万レベルだと、HQの情報筋は米DIGIDAYに対して語った。

とはいえ、HQがさらに成長できるかどうかは何ともいえない。テッククランチ(TechCrunch)がアップアニー(App Annie)のデータをもとに報じたところによれば、HQは3月のiOSアプリのトップ1500ランキングから転落している。TechCrunchが入手したセンサータワー(Sensor Tower)のデータによれば、2019年3月のHQのダウンロード数は前年同月比でわずか8%しかなかったのだ。HQは現在、よりテーマを絞った番組を配信したり、「シーズン」制を取り入れたりするテストを行っている。プレイヤーは、一定数のクイズに正解するたびにレベルを獲得し、さらにゲームに参加するため、答えを間違ったときのためにキープしておくことができる。また、あるファンページに最近掲載されたリーク情報によれば、HQは新しいゲームフォーマットをテストしているようだ。

HQの広告ビジネスは、かなり厳密に練られている。従来のテレビコマーシャルと異なり、HQトリビアでは、番組の前後や途中に広告が流されることはない。広告主は、短いインタースティシャル広告を流すことも、番組全体をスポンサードすることもできる。たとえば、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)が3月に新作映画『シャザム!(Shazam!)』を宣伝したときには、ゲームのライブカウントダウン中に流される10秒の縦型動画広告を採用した。一方、CBSオールアクセスはカウントダウン中に「トワイライト・ゾーン」の10秒間の垂直動画広告を流すだけでなく、この新しいテレビ番組シリーズのエピソードをテーマにしたクイズを出題している。

価格に関してもさまざま

価格に関しては、さまざまな取引形態がある。アドエイジ(Ad Age)によれば、ワーナー・ブラザーズは2018年3月、3本の映画を宣伝するために300万ドル(約3.3億円)を支払ったという。その3本の映画とは、『レディ・プレイヤー1(Ready Player One)』と『ランペイジ巨獣大乱闘(Rampage)』、それに『オーシャンズ8(Ocean’s Eight)』だ。だがワーナー・ブラザーズは、その後もHQを宣伝に活用している。2月には、HQのチームがシドニーを訪れ、映画『レゴ・ムービー2(The Lego Movie 2)』のスポンサー付きゲームを配信したとバラエティーは報じている。さらに、3月には『シャザム!』を宣伝した。この取引に詳しい情報筋によれば、CPMはゲームのカウントダウン中に流される縦型動画広告1本につきおよそ30ドル(約3340円)だという。

HQのブランドとの提携には、広告収益を上げることだけでなく、マーケティングの機会を増やすことを目的としたものもある。同社は2018年のホリデーシーズンに、Googleアシスタント(Google Assistant)向けのゲームを開発した。Googleの広報担当者によれば、この契約にはGoogleからの広告購入と「共同マーケティング」が含まれていたという。

もっとも、以前の広告主のすべてがHQに戻ってきたわけではない。NBCは2018年5月、『ザ・ボイス(The Voice)』のスポンサー付きゲームを実施した際に、5万ドル(約550万円)の賞金の一部を支援したほか、ゲームの優勝者を番組の最終回に招待するための交通費を提供した。だがそれ以来、NBCはこのアプリでキャンペーンを行っていない。もっとも、NBCは2019年の「サウスバイサウスウエスト(South by Southwest:SXSW)」で、自社のブースをHQに提供してライブゲームを開催した。ただし、1万ドル(約110万円)の賞金に対する支援は行ってないとNBCの広報担当者は述べている。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)