イーベイ 、決済システムの「 内製化 」を目指す理由

2003年からペイパル(PayPal)の決済サービスを利用しているイーベイ(eBay)が、2年後を目処に独自の決済システムを立ち上げようとしている。

イーベイによれば、「管理型決済」と呼ぶシステムに切り替えることで、決済の流れを自社で管理できるようになるという。その結果、商品の発見から購入に至るまでの顧客体験を管理し、取引を簡素化し、顧客の行動に関してより詳しいインサイトを得られるというのだ。また、決済代行費用を販売手数料の一部として直接販売者に請求できるため、収益の拡大につながるという。同社は2018年初頭にこの計画を発表すると、9月から一部の販売者を対象に決済サービスのテスト利用を許可した。新しいシステムでは、決済サービスプロバイダーのアディアン(Adyen)がバックエンド業務を担当するが、イーベイは引き続きフロントエンドで意思決定を行い、購入者の決済手続きを管理するという。イーベイの狙いは、データと顧客関係を自社で管理することによって、取引量を増やし、さらに多くの顧客を呼び込むことにある。同社が特に念頭に置いているのは、ペイパルを利用していない可能性がある人だ。

「コマースが進化を続けるなかで、(新しいシステムは)将来に向けた戦略的柔軟性を提供してくれる。この柔軟性のおかげで、決済の流れをコントロールし、顧客体験を繰り返し強化できるようになるのだ」と、イーベイでグローバル決済担当バイスプレジデントを務めるアリッサ・カットライト氏は語る。

20億ドルの収益機会

同氏によれば、決済システムを所有することで、販売者と購入者の両方の決済プロセスを簡素化できるようになる。具体的には、販売者は管理すべき取引が2回から1回に減り(現時点では、イーベイ用の口座とペイパル用の口座の両方が必要だ)、購入者はペイパル経由で使えない「Apple Pay(アップルペイ)」など、好きな決済方法を選べるようになる。決済処理が、ペイパルのプラットフォームに移動して行われるのではなく、イーベイ内で完結するようになるからだ。また決済を管理することで、取引データにアクセスし、コントロールを強化し、決済処理にまつわるリスクを最小限にできるとカットライト氏は説明した。

「(現時点では)イーベイで販売者から靴を買おうとすると、VISAカードを登録し、ペイパルに(決済を承認するかどうかを)判断してもらうことになる」と、カットライト氏。「だが将来は、このすべてをイーベイが管理するようになる」。

イーベイは2018年第4四半期の決算発表で、この新しい決済システムを3500人以上の販売者にテストしてもらい、その総取引額(GMV)が合わせて1億4000万ドル(約154億8000万円)に達したことを明らかにした。また、テストプログラムの開始以来、販売者が支払う決済関連のコストは100万ドル以上減少しており、プログラムの規模が大きくなればさらなる減少が見込まれるという。決済システムが本格稼働する2021年には、20億ドル(約2212億6000万円)の収益機会が決済によってもたらされると、イーベイは予想している。

データを入手するため

イーベイが2002年にペイパルを買収したとき、ペイパルのビジネスの大部分はイーベイのオークション関連だったといわれている。だが、2015年にイーベイがペイパルを分社化すると、両社は異なる方向に目を向けはじめた。ペイパルは、モバイル決済のスクエア(Square)に対抗するため、小規模な販売業者向けのPOS機能を拡大した。これに対してイーベイは、自社のマーケットプレイスで顧客体験を強化して収益を拡大するために、決済システムを活用したいと考えたのだ。イーベイによれば、自社のプラットフォームで直接決済を処理することで、販売者のコストを削減できるという。ただし、その具体的な金額は明らかにしていない。

イーベイによると、同社が販売者に新たなデータを提供する予定はなく、決済プラットフォームのデータは決済の安全性を高めるために利用するという。だからといって、決済をサードパーティに委託してしまっては意味がない。イーベイの狙いは、販売者との関係、ひいては顧客との関係を強化することにあるからだ。イーベイが顧客や顧客の決済に関して得られる情報は、どのようなものであっても、同社にとって大きなアドバンテージになるだろうと、ペイジリティ・アドバイザーズ(PayGility Advisors)のパートナーを務める決済コンサルタントのデイビッド・トルー氏は述べている。

「いまビジネスを行っている人なら、誰もができるだけ多くのデータを保有したいと考えるものだ」と、トルー氏はいう。「プライバシーに関するさまざまな懸念に注意しなければならないが、一般的には、誰もがより多くのデータを手に入れようとする。たとえ、そのデータで何をすればいいかよくわかっていなかったり、データの取り扱いに細心の注意が求められたりしてもだ」。

決済手続きの軽減も

さらに、購入者が決済手続き中に行う手順を少なくし、途中で買い物をやめてしまう人を減らすことも、イーベイの動機のひとつかもしれない。

「消費者は、買い物の途中で面倒なことに直面すれば、決済手続きを完了せずにやめてしまうだろう。これは、収益に悪い影響をもたらす。たとえその割合がわずかであっても、イーベイの収益に重大な結果を及ぼす可能性があるのだ」と、顧客データプラットフォームを手がけるイグニッションワン(IgnitionOne)の最高業務責任者、クリス・ハンセン氏は語った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)