インフルエンサーの「ショッピング実況」、新トレンドに

Twitch(ツイッチ)によって「ゲーム実況」には大きな市場が存在することが明らかになった。そしていま、「ショッピング(買い物)実況」という分野の開拓が続けられている。

ショッピングという分野に関しては、これまでも開封動画やインフルエンサーによる宣伝などは存在した。だが、現在新たに試みられているのがインフルエンサーが実際にショッピングに出かける様子を配信し、ファンとやりとりできるという形式だ。

ショッピング配信自体は新しい試みではなく、中国ではこれまでも急速に成長を続けて分野だ。主流となっているのが著名なオピニオンリーダーやインフルエンサーによるアリババ(阿里巴巴)のタオバオ(淘宝)におけるショッピングのライブ配信で、2018年には44億ドル(約4840億円)もの売上につながっている。それを受けてAmazonは、2月にショッピングのライブ配信を行うアプリ「Amazonライブクリエイター(Live Creator)」の提供を開始した。Facebookもまたショッピングのライブ配信に関する試験を行っていると伝えられている。さらにインスタグラムもIGTVに基づく新たなショッピングアプリの開発に取り組んでいるという。

これまでのショッピング配信では実店舗をはじめとする現実世界でのショッピングが主だったが、ここにきてオンラインにおけるショッピング配信にも目が向けられはじめている。たとえば2019年度のニューヨークファッションテックラボ(New York Fashion Tech Lab)に参加した「バイウィズ(BuyWith)」は、画面の共有やオンラインチャット機能を備えた、買い物客が友達と一緒にショッピングできるようなeコマースソフトウェアを開発している。

ソーシャルショッピングアプリ「ドート」

相互に交流しながらショッピングできるというのは、ソーシャルショッピングアプリ「ドート(Dote)」の中心的な機能だ。同アプリにはショッピングパーティー(Shopping Party)という新機能が実装されている。インフルエンサーのショッピングをドートのプラットフォームで15分間配信し、フォロワーとライブチャットできる機能だ。ベンチャー企業のドートは2300万ドル(約25億円)の支援を受けている。ユーザー数は320万人に達し、10代のユーザーが多い。

ドートの創設者でCEOのローレン・ファーリー氏は同機能をTwitchと比較している。ゲーム実況の視聴と配信を行うプラットフォームであるTwitchでは、2018年の1カ月あたりで300万人の配信者が配信を行っている。ショッピングパーティーでは、ユーザーの携帯電話の画面上でショッピングを行う配信者の様子と、配信者が見ている商品が分割表示される。さらにインスタグラムライブ(Instagram Live)のように、チャットにコメントが表示される形式となっている。

2014年にサンフランシスコで立ち上げられたドートは、Z世代の女性ショッピング客に人気なエイソス(Asos)やフォーエバー21(Forever 21)、ブランディメルビル(Brandy Melville)をはじめとする150の小売ブランドでのショッピングを統合して提供してきた。

ドートのユーザーのなかで、YouTubeやインスタグラムのフォロワー数が多い450人が「ドートクリエイター(Dote Creator)」に指定されている。両プラットフォームで700万人のフォロワーを持つエマ・チェンバレン氏や、200万人のフォロワーを持つサマー・マッキーン氏も、このドートクリエイターだ。ドートクリエイターがショッピングを配信する際には、インスタグラムの投稿に「@doteshopping」のタグをつけると、ドートのプロフィールに投稿がフィードされる。ドートのブランド各社は、ドートクリエイターのスポンサード投稿という形で参加できる。また、ドート上のインフルエンサーのプロフィールから投票や試供品の提供も可能となっている。

ショッピングパーティーという機能

この機能の提供開始にあたり、4月10日から数週間に渡ってドートクリエイター250人が1時間あたり2回、前述のショッピングパーティーを開催する。この期間に実施されるパーティーの総数は400を超える。パイロット版プログラムとして、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)やプリンセス・ポリー(Princess Polly)、ハニーバム(Honeybum)、ドールズ・キル(Dolls Kill)といったブランドが自社ブランドのみを扱わせるという形式でパーティーのスポンサーとして参加する。ユーザーは登録することでフォローするクリエイターが実施するパーティーの通知を受けることができる。この立ち上げ期間を経たあとに、ドートの全ユーザーがこの機能を使ってパーティーを実行できるようになる。

ドートのインスタグラムアカウントには15万人のフォロワーがおり、同社はインスタグラムで同機能の宣伝を行った上でクリエイター向けにロサンゼルスでローンチを祝うイベントを実施する。クリエイターらも自身のパーティーを宣伝する。

ドートクリエイターである15歳のフィオナ・フリルズ氏は、YouTubeで85万人のチャンネル登録者を抱えており、パーティー開催の1時間前にインスタグラムのストーリーにフォロワー向けに投稿で告知を行う。フリルズ氏はこのようなコンテンツには需要があると語る。同氏が最近投稿した卒業式のドレスに合うスニーカーをフライト・クラブ(Flight Club)で買った動画をはじめ、店舗でのショッピングを撮影した動画は、同氏の投稿コンテンツのなかでも最大級の人気を誇るという。

同氏はショッピングパーティーについて「ライブ配信であり新しい試みだ。たとえばイベントで何を着ていくかを決めるときなどに、ファンからどれを買ったら良いかアドバイスを受けられる」と語る。フリルズ氏は週に1度か2度パーティーを開催する予定で、ほかのスタイリッシュなクリエイターのパーティーの様子も自身で確認する予定だという。

失われたつながりを再生

先述のドート創設者、ファーリー氏によると、ドートのユーザーは同アプリを熱心に使用する傾向にある。ユーザーあたり平均で1日に4回アプリを使用するほか、75商品を閲覧しているという。Z世代の購買力は1430億ドル(約15兆億円)にも及び、ブランドにとっては大きなビジネスチャンスだ。ドートは詳細な数値は明かさなかったものの、2018年の収益は10倍の伸びを記録したという。

携帯ゲームのパブリッシャー、ポケットジェムズ(Pocket Gems)でプロジェクトマネージャーも務めたことがあるファーリー氏は、「友人とショッピングモールに買い物にいく時代から自宅でショッピングできるようになり、商品のバリエーションや利便性は飛躍的に向上した。だが、ショッピングにともなう体験や人とのつながりという側面では失われた部分もある」と指摘する。

こうした企業の大半は現在ファッションブランドと提携しているが、ドートはショッピングパーティーによって美容に関心のあるユーザーも惹きつけられると期待している。ファーリー氏は次のように語った。「美容は大きな分野だ。美容商品のハウツー配信など、クリエイターがプラットフォームでどのように美容ブランドを使うかを楽しみにしている。私がこの仕事を気に入っている理由のひとつが、世の中に選択肢を提供し、人々によってどのように利用されるかを見られることだ」。

Jill Manoff(原文 / 訳:SI Japan)