「IGTV」の インフルエンサー 施策、緩やかながら進行中:いまだ、大ヒットはないけれど

クリエイターやマーケターはインスタグラム(Instagram)が好きかもしれないが、登場からまだ2カ月のインスタグラムの長編動画ストリーミング機能「IGTV」を使うのは躊躇してきた。しかし、このインスタグラムのタテ型動画プラットフォームで実際に何が機能するのかを両サイドが理解しようとするにつれ、初期段階の実験や発展途上のマーケティング技術スタックも出てきた。

IGTVの成長は遅いが、それもインスタグラムの戦略の一部のようだ。IGTVのリリースは、2018年6月20日。それは、年に1度のデジタル動画業界のカンファレンス「ビドコン(VidCon)」が開催される数日前のことで、すべてのインスタグラムユーザーに向けて公開された。これは「ディスカバー(Discover)」向けにパートナーのリストを作ったSnapchat(スナップチャット)Facebookによる「Watch」の公開とは、明らかな対照を成している。この戦略により、もともとYouTubeにあったヨコ型動画から多数のコメディータッチの寸劇まで、奇妙なコンテンツの集まりへとつながったが、まだ大ヒット作品は生まれていない。

前向きなクリエイター

バイナー(Viner:すでに閉鎖したVine[ヴァイン]のクリエイター)からユーチューバーに転身したナッシュ・グライアー氏は、IGTVで実験を繰り返し、印象的なオリジナル作品のセレクションを共有している。グライアー氏がコンテンツ制作を開始したのはIGTVのリリースから2日後の6月22日で、現在はほぼ毎週日曜日に新しいIGTV動画を投稿している。インスタグラムにはグライアー氏のフォロワーが990万人いるが、8月26日に投稿したIGTV動画は1日経っても1万5000ビューしか獲得していない。それでもグライアー氏はひるまない。

グライアー氏は、現在撮影のために滞在しているドバイから電子メールでの取材に応じ、「私は毎日自分の携帯電話を使って、タテ型動画の見た目や感覚にすでに惹きつけられている。このプラットフォームが良くしてくれるものが気に入っている。16:9の画面に提供されているものとは違って、私がIGTVに投稿するものはすべて、YouTube向けの作品よりはるかに視覚的で、動画そのものもずっと短い。YouTubeとIGTVは、オーディエンスやコンテンツ、機会という点で、まったく違う世界だ」と書いた。

グライアー氏は、IGTVでスポンサード動画をまだ作ったことはないが、通常のインスタグラム投稿としてインフルエンサーマーケティングを続けてもいる。

様子見のマーケター

IGTV内でのプロモーションを始めているブランドもいくつかある。たとえばポストメイツ(Postmates)は、歌手のニック・ジョナスをサプライズ配達員にして、その様子を移した2分間の動画を8月24日に共有した。この動画は、投稿から3日間でおよそ16万4000ビューを獲得したが、ニック・ジョナスのインスタグラムフォロワーは1660万人いる。


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他のブランドは、進んでIGTVに多くの時間を注ぎ込もうとしていない。その理由のひとつは、YouTubeと違ってこのプラットフォームに広告共有モデルがないことがある。ビドコンでIGTVをインスタグラムの動画モニターで特集したり、ビドコンでのインスタグラムブースでIRLを登場させたりしたにもかかわらず、セレブポメラニアンのジフポム(JiffPom)は8月第4週にYouTubeで新番組を開始したものの、IGTVではほとんど何もしていない。

ジフポムと仕事をしているメイド・イン・ネットワーク(Made In Network)の最高経営責任者(CEO)であるケビン・グロッシュ氏はこう語る。「我々は目下、YouTubeに番組を出すことに焦点を絞っていて、これはしばらく続けるつもりだ。プラットフォームにはそれぞれ、オーディエンス向けの特定のニーズや要件がある。新番組で、我々がやっていることが正しいと確かめたい」。

プラットフォームの動向

質のよいIGTVコンテンツが欠如しているにもかかわらず、かつてブログラビン(Bloglovin)と呼ばれていたインフルエンサーマーケティング企業のアクティベイト(Activate)は8月最終週に、自社プラットフォーム内でのIGTVのサポートを発表した。これでクリエイターやブランドは、各動画のビューやライク、コメント、平均視聴率を見ることができるようになった。これは、オーディエンスリテンションのグラフをのぞいて、インスタグラムがすでに提供しているアプリ内インサイトに匹敵し、それをより大きなプラットフォームで利用できるようになるということだ。アクティベイトは、インスタグラムのストーリー(Stories)やYouTube、Facebook、Twitter、Pinterest(ピンタレスト)の統計とともにIGTVも解析する。

アクティベイトのスタジオならびに戦略担当バイスプレジデントを務めるローレン・マグラス氏は、「我々はIGTVのテスト段階にいる。ブランド側には『見返りは何か?』『プラットフォームの活性化戦略はどうなるのか?』など、疑問がたくさんある。私が彼らと交わした会話からわかることは、彼らは間違いなくIGTVに関心を持っているし、IGTV向けに番組を制作したいと思っている。だから彼らは、それが効果的かどうか、テストケースを作ることができる」と述べる。

アクティベイトのCEO、カミーユ・リー氏とマグラス氏は、より長い歴史があるので、オンライン動画の王者は依然としてYouTubeだが、彼らが一緒に仕事をしているインフルエンサーは、さまざまなコンテンツフォーマットが使えるという点では、インスタグラムが王者だという、と話す。

「IGTVは、既存のキャンペーンを拡大・増幅し、さらなるエンゲージメントを追加するコンテンツフォーマットだ。長編動画は依然としてYouTubeをベースに展開されているが、IGTVは車輪にとってより重要なスポークになりつつある」と、マグラス氏はいう。

卵が先か、鶏が先か

それでもグロッシュ氏は、IGTVでより多くのコミュニティーが形成されるところを見てから、ジフポムのようなアカウント向けに投資したいと語る。

グロッシュ氏は「コメディータッチの寸劇は、どこでも、どんなときでも機能するが、それ以外にも、違うことを試して、学んで、フォーマットを複製しようとする人々がいる。何が最初にヒットするか、私は見るのが楽しみだ。それはクリエイターの手にかかっている」と話す。

もちろんそれは、卵が先か、鶏が先かという問題につながる。グライアー氏は、インスタグラム、Snapchat、Twitter、YouTube、Facebook、いまはTikTok(ティックトック)となったMusical.ly(ミュージカリー)など、プラットフォームは何でもいいが、タテ型動画を作る仲間たちが増えてくれることを望んでいる。

「IGTVの運命は、インスタグラムやそこにいるクリエイターの注目や認識によるところが大きい。あちらこちらで少しずつ追加されていくことで、プラットフォームとして本当に高められていくことになるだろう」と、グライアー氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)