人口13億人のインドのインターネットエコノミーは急激な成長が予測されている。インドは安価なスマートフォンの普及で、急速にネット接続者を増やしており、データ通信料も下落している。29、30日に開かれた「Slush Toky […]
人口13億人のインドのインターネットエコノミーは急激な成長が予測されている。インドは安価なスマートフォンの普及で、急速にネット接続者を増やしており、データ通信料も下落している。29、30日に開かれた「Slush Tokyo 2017」に登壇したインド人起業家 / 投資家に話を聞いてみた。
インドのUberEatである「インナーシェフ(InnerChef)」の創業者であり、エンジェル投資家、アクセラレーターのラジェシュ・サウフネイ氏は「インドは世界に残された最後の超成長市場」と語った。「インドではネット接続しているモバイルが10億台を越そうとしており、13億人がネットエコノミーに入りつつある」。
破壊的な格安モバイル通信の普及
今年に入り、インド最大の財閥リライアンス・インダストリーズが通信キャリア事業に参入。地方も含めた全国に4G通信を供給。契約から最初の3カ月は使用量がかからないなどのアグレッシブなサービスを展開し、既存の大手3社に対して4Gの価格を一気に落としている。
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サウフネイ氏は中国製の安価なスマホがスマホ普及率を押し上げていると語った。アリババが出資するモバイルバンキングプラットフォームPaytmにより銀行口座を使わないままモバイルバンキングを開始する現象が起きており、「リープフロッグ(一段飛ばし)」であると指摘した。
「2010〜2017年インドのユニコーンは7社だが、2017〜2027年にはユニコーンは50社に上ると予測している」。スタートアップのアーリーステージ投資額も伸びており、エンジェルの投資額が拡大しているという。 日本からもソフトバンクを筆頭に数社がインドのスタートアップ界隈に投資しており、サウフネイ氏は「日本とインドの関係はいい。世界最後の機会に投資するべきだ」と訴えた。
インドインターネットモバイル協会とボストン・コンサルティング・グループは極めて強気な予測をしており、2020年にはインドのインターネットエコノミーは2000億ドル(約22兆円)に達するという。
低所得者層までモバイルとネットが届きはじめた
バスチケットオンライン予約サービス「レッドバス」創業者でエンジェル投資家のファニンドラ・サマ氏はDIGIDAY[日本版]のインタビューに応じてくれた。
「リライアンス・インダストリーズの通信キャリア事業『Jio』はインドのネット利用を急激に安くしており、データ消費を強烈に拡大している。年初の開始から3カ月のあいだに7200万人の加入者を手に入れた。インドでもっとも富裕なリライアンス・インダストリーズCEO、ムケシュ・アンバニ氏は通信インフラに100億ドル(約1兆1000億円)を投資した。彼が目標としていたユーザー数1億人は、早々に達成するだろう。いままでモバイルデータ通信にアクセスしていたのよりも、低い所得層にまで浸透がはじまった。影響はすさまじく、YouTubeのトラフィックが6倍に増えたりしている」。
リライアンスは先行する大手3社に対して、資金力を背景にした価格競争で、ネットユーザー数を増やしている。日本の通信業界でも同様の変化が望まれる。「政治の状況もよく、モディ政権が強く、法執行や行政手続きの確実性を高め、産業創造にインセンティブを与えている。産業育成の基盤を与えている。中国が30年間の成長を経験できたのは、政府が経済成長の基盤を強く提供したから」。

バスチケットオンライン予約サービス「レッドバス」創業者でエンジェル投資家のファニンドラ・サマ氏(中央)Via Slush Media
市場は沸騰しているが、インドEC大手フリップカートが評価額を落とすなど、一部のスタートアップには投資と収益のバランスが崩れている面がある。「Amazonがインド市場に入り込むために30億ドル(約3300億円)を投入しなくてはいけなかった。フリップカートも同じように30億ドルを投資した。インド市場はとても大きな市場で、投資額が桁外れだ。ネットビジネスは少数の勝者を生み出しやすい。ただし、インドは米国や中国とは別の勝者を生み出すだろう」。
インドの13億人が莫大なデータを生み出しつつあるため、AIもまた成長領域になる、とサマ氏は語った。巨大なデータを格納する能力が必要になる。 障害はインドの暑い気候だという。「インドは暑すぎ。サーバーを冷やすための冷房設備が大量に必要になるだろう。しかし、インドは電気代が高いのが障害だ。涼しい北部の山岳地帯がいいが、パキスタンや中国との紛争があり、データセンターを攻撃されるとひとたまりもない。だから極めて熱い南部に造らざるを得ないだろう」。
Written by 吉田拓史
Photo by GettyImage