Amazonの広告ビジネスが成熟しはじめている。そんななか、広告主たちは同プラットフォーム上で、ブランド認知とストーリーの訴求を目指したキャンペーンをはじめている。これまでペイドサーチ広告に重きを置いてきた広告主が方針を転換しつつあるのだ。
Amazonの広告ビジネスが成熟しはじめている。そんななか、広告主たちは同プラットフォーム上で、ブランド認知とストーリーの訴求を目指したキャンペーンをはじめている。
これまでペイドサーチ広告に重きを置いてきた広告主が方針を転換しつつあるのだ。サイト利用者が増えつづけ、滞在時間がますます伸びている現状を背景に、広告主はAmazonにブランド認知とストーリーテリングの可能性を見出している。そして、消費者の関心を惹くように設計されたアーンドメディアとペイドメディアの双方で、彼らのAmazonブランドページのコンテンツを構築するためにより多くの時間と労力を費やしている。
一方、Amazonは現在、より多くのユーザーをブランドページに誘導する方法のテストを行っている。あるメディア幹部が匿名を条件に語ったところによると、ストアページは多機能化され、フォローボタンが実装される予定だという。
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あるAmazonの広報担当者によれば、ブランド向けのライブ配信サービス「Amazon Live」にはフォローボタンがすでに追加されたという。
全体として、Amazonは「ブランドエンゲージメントの深化」に取り組んでいると、同社の投資家関係担当責任者を務めるデビッド・フィルデス氏は、1月末に行われた2019年第4四半期収支報告で述べた。フィルデス氏はとりわけストアページの機能強化の取り組みに言及し、アーンドメディアのライフスタイルコンテンツの投稿が可能になることや、ストーリーテリングの機会拡大を謳った。
認知プラットフォームとして
広告主はここ数カ月、有料動画広告への関心を高めていると、アナリストは指摘する。こうしたタイプの広告は現在、Amazonのセルフサービス広告プラットフォーム(一部の広告主向け)およびOTT(オーバーザトップ)メディアの有料広告掲載を通じて利用できる。
「一部のクライアントは、検討や認知といったファネルの段階に関して、Amazonで何ができるかを真剣に考えはじめている」と、マークル(Merkle)でAmazon広告オンライン販売担当シニアディレクターを務めるトッド・ボウマン氏はいう。「Amazonはますます動画のベータ版や動画機能を拡大し、OTTやストアページの充実を進めており、広告主はこれをブランド認知を高め、売上を伸ばすチャンスだと見込んでいる」。
広告主がAmazonをブランド認知とストーリーテリングの場と位置付けるこの変化は、ここ1年ほどのものだが、とりわけ過去数カ月で顕著になったと、エージェンシーのバイヤーはいう。「1年前からAmazonへのブランド認知関連の広告支出が見られるようになった。従来は地下鉄やバスの広告、野外大型広告に投入されてきた広告費が、Amazonにも流れるようになったのだ」と、ワンダーマン・トンプソン・コマース(Wunderman Thompson Commerce)でマーケットプレースサービス担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるエリック・ヘラー氏は語る。さらに同氏によれば、Amazonのサイト上で展開される認知向上キャンペーンは、売上データと関連づけできる点で独特だという。「認知プラットフォーム、あるいはローンチプラットフォームとして、ますます有力になってきている」。
エージェンシー担当者の見解
この話題は、米DIGIDAYが先日ニューヨークで開催したAmazon戦略に関するイベントでも大きな注目を浴びた。エージェンシーと小売企業の参加者たちはいずれも、Amazonが単なるコンバージョンファネルだった時代は過ぎ去ったと考えている。いまや企業は動画やストアページなどの広告機能を活用し、見込み顧客の発見と囲い込み(すなわち「ハンドレーザー」)を行って、ファネルの頂上の認知の部分を強化していると、アイクロッシング(iCrossing)でメディア担当アソシエイトディレクターを務めるエンリコ・ミラベリ氏はイベントで語った。
検索広告の成功により、Amazonの広告ビジネスは大きく成長した。2019年第4四半期、Amazonは48億ドル(約5260億円)の売上を「その他」カテゴリーから得ていて、この大部分は広告事業からなる。前年同時期の34億ドル(約3730億円)から41%の増加だ。さらに、Amazonは広告主に(現在はほかのプラットフォームで展開されている)ブランド認知やストーリーテリングといったタイプの広告の可能性を売り込んでいる。
Amazonが広告機能を強化して、ファネルの低層にあるコンバージョン広告に限らない選択肢を提供しようとしていることは驚くにあたらない。Amazonの広告ビジネスが成長するにつれ、同社は検索広告の枠にとどまらないさまざまな機能を実装し、みずからをFacebookとGoogleに対抗する第三勢力と位置付けている。「Amazonは挑戦に本腰を入れていて、FacebookとGoogleのマーケティングコストが増大するなか、広告インベントリー(在庫)を拡充している」と、ボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)のCEO、キリ・マスターズ氏はいう。「(FacebookとGoogleの)クリック単価が上昇しつづけるなか、(Amazonが)インベントリーを充実させて、広告主に向けた選択肢を増やしているのは良いことだ」。
「蛇口を開けたようなもの」
しかし、Amazonがブランドにストーリーテリングの可能性を売り込んでいるのは、単純にデュオポリーへの対抗に役立つからというだけではない。むしろAmazonが長期的視野で推し進める、広告主向けの出稿機会の多様化と深化の一環なのだと、アナリストはいう。
Amazonの最新のPrime会員数も好材料だ。直近の収支報告で、Amazonは全世界のPrime会員数が1億5000万人に達したと発表した。これは広告枠を売り込むうえで「きわめて魅力的」な数字だと、マスターズ氏は話す。
「(収支報告の)データは事実上、(Amazonの広告ビジネスの)蛇口を開けたようなものだ」と、ヘラー氏はいう。「頑健なデータが、Amazonこそ人々が商品を見つけて購入する場所であると示しており、ブランドもこれを認識している」。
2019年の終盤、ブランド認知広告を売り込む際に、Amazonは動画広告やOTTのチャンスを活用するよう広告主に勧めた。アナリストの見通しでは、Amazonは今年もこのアプローチを続けつつ、ストアページとそこでのペイドメディア・アーンドメディアの機能拡充にも力を入れ、トラフィックを呼び込んで消費者にブランドの情報を提供するだろう。
大中小すべてのブランドが
可能性として、広告主がストアページに「ピンタレスト(Pinterest)的な」コンテンツを挿入することが許可されれば、プラットフォーム上で小規模ビジネスがブランドのストーリーテリングを展開する機会が生じるだろう。こうした機会に恵まれるのは普通、巨額の予算を持った大口広告主だけだったと、マスターズ氏はいう。
「従来、ブランドストアは『CEOのキャンディ』と呼ばれていた。ブランドストアをしっかり作っておくのは、夜中にCEOからの電話で叩き起こされて、『どうしてAmazonのブランドストアはこんなに古臭いんだ』と問いただされないようにするため、という意味だ」と、ヘラー氏はいう。「要するに、誰も(ブランドストアを)使わなかったのだ」。
「いまでは(ブランドストアに)広告を掲載したり、まともなコンバージョンソースを実装できる。どれもここ半年で起きたことで、ブランドはAmazonストアの拡充を優先事項にしている。デジタルネイティブブランドに限った話ではなく、世界的に有名なブランドもそうだ」と、ヘラー氏は述べた。
Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)