YouTube動画の使い回しが多い、 IGTV の現状とこれから

IGTVは、インスタグラム(Instagram)がYouTubeに対抗してリリースした動画プラットフォームだ。だが、登場から半年以上が経過したいま、IGTVはますますYouTubeらしくなっている。パブリッシャーの多くが、YouTubeの動画をIGTVに流用しているからだ。

使い回しがほとんど

たとえば、ホイッスルスポーツ(Whistle Sports)は、YouTubeで公開しているシリーズ作品「ノー・デイズ・オフ(No Days Off)」をIGTVで再利用している。すでに作られた動画を縦長にトリミングする以外、必要な作業はほとんどないそうだ。同社によれば、IGTVでの視聴数は驚くほど増えている。10歳のバスケットボール選手を取り上げたIGTV動画は218万ビューを獲得した。YouTubeにある同じ動画が獲得したビューは220万だ。ただし、すべての動画がこうなるわけではない。ロック・クライマーを取り上げた動画は、YouTubeでは67万6000ビューだが、IGTVでは1万9000ビューどまりだ。IGTVで公開しているほかの動画はたいてい100万ビューを超えていると、ホイッスルでソーシャルメディア担当VPを務めるジョー・カポロソ氏は語った。

ファーストメディア(First Media)のブランドのひとつ、ブロッサム(Blossom)は、FacebookとYouTube、また最近ではSnapchat(スナップチャット)でバイラル動画を配信している。ファーストメディアのデジタル責任者を務めるユバル・レヒター氏によれば、ブロッサムの動画はIGTVで300万~400万ビューを獲得しており、チームは「IGTVに夢中になっている」という。また、IGTVでの視聴完了率は平均35~40%と、YouTubeより高い。「意外なことに、面白くてわかりやすく、ちょっと風変わりなライフハック動画がとても好調なのだ」と、レヒター氏は説明する。だが、ブロッサムがIGTVで公開している動画も、やはりほかの場所で公開した動画の使い回しだ。

グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)は、IGTVの開始当初から傘下ブランドを通じてIGTVに参加し、その後もスリリスト(Thrillist)の「インスタシェフ(Instachef)」やNowThis(ナウディス)の「ネバー・シーン(Never Seen)」といった新たな動画シリーズを配信している。映画『ジョーズ(Jaws)』を取り上げたネバー・シーンの動画は、133万ビューを獲得した。しかし、グループ・ナインがIGTV専用の作品を制作したことはない。

パブリッシャーの本音

ホイッスルのカポロソ氏によれば、ほかで公開した作品をIGTVに流用していることを、インスタグラムからとがめられたことはないという。「私の印象では、彼らはとにかく(IGTVを)利用してほしいと考えているようだ。YouTube、Facebook Watch(ウォッチ)、インスタグラムのフィード、インスタグラムのストーリー(Stories)という配信ローテーションに(IGTVを)加えてもらおうとしているのだ。専用コンテンツを求めるより、動画配信リストに加えてもらうことが先決だと考えているのだろう」と、カポロソ氏は話す。

オリジナル作品の制作を求められないとはいえ、ある元パブリッシャー幹部によれば、彼のチームは、IGTVが登場したばかりの頃はもちろん、登場から数カ月経った時点でも、IGTVへの参加に関心を示さなかったそうだ。この人物が匿名を条件に語ったところによれば、IGTVはパブリッシャー向けの製品を作ろうというFacebookの下手な試みだというのが、彼の見立てだという。

「私が見たところ、(IGTVが)役に立つのは、(動画と動画の)あいだのスペースを購入するインフルエンサーかブランドだけだ。メディア企業が簡単に成長できる余地があの場所にあるとは考えにくい。Facebookと仕事をした経験からいえば、彼らはその場所がパブリッシャーからどのように見えるのかについて完全に誤解しており、製品を出すたびに失敗を繰り返している。これ(IGTV)は彼らにとって最大の失敗作になる可能性もあるが、落ち込みはじめるまでそれほど長い時間はかからなかった」と、この元幹部は語った。

実際、パブリッシャーらは、Facebook Watchの戦略が何度も変更されるのを目の当たりにしてきた。ただし、インスタグラムの場合は状況がやや異なる。インスタグラムのアプリはあらゆるユーザー層に人気があることが評価されており、その規模も拡大を続けていると、複数のパブリッシャーが指摘している。

マネタイズもいまだ課題

一方、IGTVへの取り組みを続けている著名な動画クリエイターもいる。たとえば、シンガーソングライターのジョン・メイヤー氏は、IGTVで「カレント・ムード(Current Mood)」という番組を公開し、チャーリー・プース氏、ホールジー氏、デビッド・スペード氏といったゲストにインタビューしたり、楽曲を演奏したりしている。YouTubeのスター、リリー・シング氏が公開しているコメディーニュース番組「スパイス・ニュース(Spice News)」は、インスタグラムが9月に開催したIGTVのプレスイベントで盛んに宣伝していた。ミス・ジェイデンBの名で知られるジェイデン・バーテルズ氏や、ブライアント・エスラバ氏といったクリエイターも、IGTVをメインの動画プラットフォームと位置づけている。インスタグラムの広報担当者によれば、IGTVでコンテンツを作成しているクリエイターに同社がお金を払っていることはないという。

IGTVを利用するパブリッシャーや動画クリエイターにとって、いまも障害となっているのはマネタイズだ。IGTVには公式の広告ユニットがないが、一部のパブリッシャーは、2019年にも広告マネタイズ製品が登場すると予想している(インスタグラムの広報担当者は、IGTVの広告製品についてコメントを拒否した)。

「まだ時期尚早だと思う。期待して配信を続ければ最終的にマネタイズが追いつくはずだと信じて、このようなプラットフォームを辛抱強く使い続けるというのが、我々の学んだことだ」と、カポロソ氏は述べている。

提供される指標も少ない

IGTVがインスタグラムユーザーのあいだでどれほど人気があるのかを、正確に判断するのは難しい。ソーシャル・ストラテジストのマット・スタソフ氏は、長編動画を見るためのプラットフォームとしては、YouTubeのほうが「自然なチャンネル」だと考えている。「しかも、(IGTVは)リサイクルされたコンテンツばかりだ。私があるとき、たくさんのティーンがいる場所でIGTVを見ているか尋ねたところ、誰も手を上げなかった」と、スタソフ氏は語った。

インスタグラム自身も、IGTVの利用状況に関するデータを提供していない。パブリッシャーの動画がたくさんのビューを獲得する一方で、IGTVのスタンドアロンアプリのダウンロード数はリリース以来着実に減少していると、モバイルアプリ分析企業のアップトピア(Apptopia)は指摘している。これまでのダウンロード数は合わせて230万件だ。とはいえ、IGTV自体はインスタグラムですぐに見ることができる。したがって、スタンドアロンアプリの利用状況がIGTVの成長を図る指標というわけではない(IGTVのコンテンツはインスタグラムの「検索」ページにも表示されるが、このページはインスタグラムの利用時間の20%を占めていると、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は10月の決算発表で述べていた)。また、IGTV動画をユーザーがインスタグラムのストーリーでシェアしたり、パブリッシャーがサイトに埋め込んだりすることもできる。

グループ・ナインの最高インサイト責任者、アシシュ・パテール氏によれば、同社のIGTV動画の視聴数は、2018年の第3四半期から第4四半期にかけて20倍以上増えたという。ただし、この増加がどこからもたらされたのかはわからない。インスタグラムがデータを提供していないからだ。

「いまのところ、提供される指標はきわめて限られている。視聴数を見るのが成功への一番の近道だ」と、パテル氏は話す。

大きな成長の機会?

指標が得られないなかでも、グループ・ナインは2019年にIGTVとインスタグラム全般への投資を拡大する計画だ。

「インスタグラムが、2019年以降の我々にとって、非常に大きな成長の機会になることは、すでにわかっている。これ(インスタグラム)はさまざまなものが混在したプラットフォームで、フィードとストーリー、そして今度のIGTVという3つの異なった利用形態がある。短編(コンテンツ)から長編(コンテンツ)までを、ひとつの場所から展開できるのだ」と、パテル氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)