こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です ※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです 1月にアパレル・マーケットプレイスのモドクロス(ModC […]
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
1月にアパレル・マーケットプレイスのモドクロス(ModCloth)の暫定CEOに就任したアン・ビューリーバーマン氏は、機械学習を使い、仕入れの決定について「ディープな部分まで掘り下げて調べた」という。
同氏は人工知能(AI)を通じて、自社ブランドだけでなく、ほかのブランドも扱っているモドクロスが、特定のサイズの衣服を適切な数量で仕入れしていなかったことを知った。「当社はあらゆるカテゴリーで、間違った仕入れをしていたことに気づいた。小さいサイズの仕入れの数は少なすぎたし、プラスサイズは仕入れしすぎていた。今では、正しい仕入れの仕方を正確に理解している」と、同氏は米モダンリテールに語った。
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同氏がモドクロスに入社する前、同社は「今よりはるかに伝統的な小売業者だった」と、同氏は述べる。現在は、新しい親会社であるノギン(Nogin)のもとで、新しいテクノロジーを、オペレーションやマーケティング、および総合的な顧客体験全体に統合しようとしている。この変化はすでにビジネスの結果に影響を及ぼしつつあり、AIのパーソナライゼーションはモドクロスの収益の11%強を占めていると同氏は共有した。
パーソナライズ化に活用
AIと機械学習は、この1年間で業界全体の大きなバズワードになった。AIは、コスト高、雇用が奪われる、セキュリティ上の懸念など、いくつかの危険もあるが、多くの小売業者やブランドは、業務のスピードアップや効率化のためにこのツールを使用している。モドクロスも、このテクノロジーを統合して、すでに良い結果を出している企業のひとつだ。
モドクロスはさまざまな方法でAIをテストしていると、ノギンのコンバージョン率担当バイスプレジデントも務めているビューリーバーマン氏は語る。新しい顧客がモドクロスのサイトを訪問すると、もっとも売れている商品が一覧表示される。しかし、その顧客がサイトで商品を探しているうちに、顧客がどのようなタイプの商品をクリックしたかに応じて、おすすめの商品を調整する。これらのおすすめは、同社の「あなたへのおすすめ」ページに集められ、「あなたが買いそうな商品が、あなたに合うサイズで」このページに表示されると同氏は説明する。このページは通常のページと比べてコンバージョン率が2倍高い。
リピート訪問する顧客の場合、モドクロスは注文履歴と現在の行動の両方に基づいておすすめを選択する。これを行うのは、顧客が誤ったサイズの商品を購入してしまうこともあるためだと、ビューリーバーマン氏は述べる。顧客が以前にXSサイズのシャツを購入したが、今度はSサイズのシャツを検討しているなら、ほかのシャツもSサイズで表示するようにする。
モドクロスは、顧客の地理的な位置に基づいて、定期的に表示される商品を微調整している。たとえば北半球と南半球の顧客では、天候のパターンが異なるため、提示する商品も異なる。あるテストでは、オーストラリアとニュージーランドの顧客に季節に合った衣服を提示したところ、クリック率が45%も高くなった。「これが、人々の買い物に大きな影響を与えることは間違いない」と、ビューリーバーマン氏は述べた。
カート戦略で売上向上
モドクロスは、eメールやテキストの会話(ChatGPTなど)にもAIを使う。また、AIは、顧客にカートを表示するタイミングや方法を切り替えるためにもAIを使用する。後者については、「顧客がまだどんな商品があるのかを見ている段階なら、『カートを表示』ボタンを見せる。しかし、サイトに戻ってきて、探しているものがわかっているなら、チェックアウトボタンを表示する」とビューリーバーマン氏は述べる。カートを変更することで、コンバージョン率が「5〜10%変化する」と、同氏は述べている。
自社のビジネスにAIを組み入れるアパレルマーケットプレイスや企業は増え続けている。ナイキ(Nike)やワービーパーカー(Warby Parker)などの小売業者はバーチャル試着技術を提供し、ザ・リアルリアル(The Real Real)やStockXなどのリセールプラットフォームは偽造品を発見するためにAIを使用している。ウォルマート(Walmart)やAmazonは、倉庫の品物を見つけるために、AIやコンピュータビジョンを使用し、フリトレー(Frito-Lay)やホームデポ(Home Depot)はサプライチェーンでAIを使用している。
これらの行動は21世紀に成功するには不可欠だと、ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は語る。「マーチャンダイジングについていえば、より顧客中心のビジネスに移行するために、AI主導の重要なマーチャンダイジングプロセスを今すぐ導入しない小売業者は生き残れないだろう」と、同氏は米モダンリテールに語った。
AI導入に躊躇する小売業者も
多くの小売業者は、AIを問題解決用ソリューションとみなしている。たとえばモドクロスは6月末に、ガニーサックス(Gunne Sax)の限定コレクションを出したときにAIを使用した。ビューリーバーマン氏によると、顧客は「少なくとも50%の割合で」検索バーに入力する「Gunne Sax」のスペルを間違えており、モドクロスのAIはそれを検出して正しい結果を返すことができた。この努力は実を結び、最初の24時間でガニーサックスの売上は14万5000ドル(約2030万円)にのぼった。
AIを使用して成功した例が多いにもかかわらず、このテクノロジーの使用を躊躇している企業は多い。ガートナーによると、小売業者の約3分の1は社内の少なくともひとつのプロセスでAIを使用したと回答している。「多くの小売業者は現在、さまざまなタイプのソリューションを寄せ集めてマーチャンダイジングを行っている」と、ソチャ氏は述べた。
「小売業者は、時間を要する非常に複雑な計算やプランニングのプロセスを行うのに、まだエクセルに大きく頼っている。したがって、AIを取り入れることで、あるいは、AIを使って運営を迅速化し、複数のシステムを効率化する方法を考えることで、小売のリーダーは、自社を成功へと導く重要な決定を適時行うことができるだろう。こうした決定を適切な時期に行わなければ、自社の失敗を招くことになる」と同氏は続けた。
[原文:‘I saw we were buying incorrectly’: How ModCloth is using AI to inform product decisions]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
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