一大ブームを巻き起こした音声SNSのClubhouseだが、4月からダウンロード数が急落している。それでも、マーケターの間ではいまだに実験的なチャネルとして注目を集める。それはたとえオーディエンスが多少減っても、リアルイベントを補完する(特に最近注目を集めるハイブリッド型の)チャネルになり得るからだ。
一大ブームを巻き起こした音声SNSのClubhouse(クラブハウス)だが、4月からダウンロード数が急落している。とはいえ、マーケターのあいだではいまだにコロナ禍における実験的なチャネルとして注目を集める。
Clubhouseの魅力について、マリオット・インターナショナル(Marriott International)のグローバルマーケティング担当VPペイジ・フランシス氏は次のように分析する。「オピニオンリーダーが各種のテーマについて語る場として急速に支持を集めた。マーケティングの観点からも、しばらくは人気が衰えることはないだろう」。
ハイブリッドイベント用チャネルとして
2021年に入ってからも、Clubhouseを活用するブランドやエージェンシーが後を絶たない。たとえばマリオットコートヤードホテルも、ClubhouseでNFLのドラフトに関する配信を行った。2020年にiPhone専用アプリとして登場したばかりだが、Clubhouseの利用用途は広い。さらに最近ではコンテンツ制作者を対象とした投げ銭機能や、クリエイターを対象としたアクセラレータプログラムも実装している。そして5月、待望のAndroid向けのベータ版もリリースした。
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しかし新機能が加わったにもかかわらず、Clubhouseのダウンロード数は急落した。モバイルアプリの分析プラットフォームであるセンサータワー(Sensor Tower)のデータによると、4月は92万2000ダウンロードで、3月の270万ダウンロードから66%減となった。Clubhouse人気に陰りが見えているのではないか、と指摘する声もある。
だが、マーケターは引き続きClubhouseに価値を見出している。それはたとえオーディエンスが多少減っても、コロナ禍で開催しづらいリアルイベントを補完する(特に最近注目を集めるハイブリッド型の)チャネルになり得るからだ。
ブランドごとのニーズは異なる
たとえばカリフォルニア州を中心に自動車部品を割安で販売しているカーパーツ.com(CarParts.com)は、3月にClubhouseで投資家向けの収支報告を行い、およそ5000人のリスナーを集めた。CEOのレブ・ピーカー氏はこの結果を受けて、5月に行われる第2回報告もClubhouseで実施したいと述べた。
第2回に集まったのは約300人にとどまったが、ピーカー氏は「世界中の投資家を四半期ごとに集めるのは難しく、Clubhouseのようなバーチャルに集まれる場所は貴重だ」と話す。
「Twitter Spacesなど、Clubhouseの類似サービスが次々にローンチされていることからも、ユーザーの関心の高さがわかるだろう」とピーカー氏。「いろいろなサービスを検討したが、当社のニーズに合致するのはClubhouseという結論に至った」。
ほかにも、ニューヨーク州を中心に展開するヘアケアブランドのサストー(Susteau)は、創業者のケイリー・ブラット氏自身がClubhouseで配信を行っており、クリーンビューティやスタートアップカルチャーなどについて語っている。サストーのマーケティング責任者キャサリン・マルティネス氏によると、同社は今年の後半にリアルイベントを再開する予定とのことだ。それでもClubhouseのリーチは魅力的であり、普段は接することのできない業界のオピニオンリーダーと交流できる。マルティネス氏はClubhouseをSNS戦略の一環として位置づけており、アプリ内のパネルを活用して対面戦略を補完し、ブランド認知度を向上させたいとしている。
「コロナ禍の終息に合わせて、リアルイベントやパネル展示を開催していきたい」とマルティネス氏は展望を口にしつつ、「だが、Clubhouseにより世界中のさまざまな方と素晴らしい関係を構築できた」と付け加える。
「今後の見通しも悪くない」
このようにリアルイベント再開を歓迎するマーケターは少なくない。CEOのメリッサ・リッチフィールド氏に5000人を超えるフォロワーがいるほか、女性のマーケター向けのクラブも立ち上げている、デジタル広告エージェンシーのリッチフィールド・メディア(Litchfield Media)は、1万人以上のフォロワーを有する。「パンデミック以前の生活が戻ってくることを楽しみにしている」というリッチフィールド氏は、「Clubhouseで知り合った人と、実際に会えるかもしれない」と期待する。
また、Androidユーザー向けのベータ版が公開されたことで利用者の減少に歯止めがかかるのではないかと考えているという。「1月ごろに望んでいた変更の多くが実装された」とリッチフィールド氏は語る。「ユーザーの声に耳を傾けている」。
カスタマーエンゲージメントプラットフォームのエアシップ(Airship)で技術責任者を務めるマイク・ヘリック氏は、「Clubhouseはクリエイター支援プログラムやAndroid版の実装といったメジャーアップデートが続いている。マーケターはテストしたいだろう」と話す。
「Clubhouseは、注目度を低下させないよう機能追加やアップデートを続ける必要がある。コロナ禍の終息が見えてきた今ならなおさらだ。それでも、Clubhouseの今後の見通しは悪くないと思う」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)