Hulu(フールー)は今年度の第2四半期に、広告付き配信サービスのオーディエンスが、特定の番組や動画を視聴中、一時停止ボタンを押した際に、画面の一部に静的なバナー広告を掲載する。この広告は、単純にオーディンエスが早戻しや早送りをするためだけに一時停止した場合に備えて、動画を一時停止した5秒後に表示されるという。
バナー広告が廃れたと、誰が言ったのか?
Hulu(フールー)は今年度の第2四半期に、広告付き配信サービスのオーディエンスが、特定の番組や動画を視聴中、一時停止ボタンを押した際に、画面の一部に静的なバナー広告を掲載する。この広告は、単純にオーディンエスが早戻しや早送りをするためだけに一時停止した場合に備えて、動画を一時停止した5秒後に表示される。
また、広告は半透明のオーバーレイで画面の一部に現れるだけだ。なので、オーディエンスは停止したコンテンツをまだ見ることができ、広告が表示されてもそれほど驚かない。
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チャーミン(Charmin)とコカ・コーラ(Coca-Cola)は、Huluの一時停止時の広告フォーマットをテストする最初のブランドとなり、第2四半期にキャンペーンを展開しはじめる予定だ。エージェンシーの幹部がこの広告フォーマットの価値について懸念していることを考えると、ほかのブランドがどの程度、あとに続くのかは、結論のでない問題だ。
チャーミンは、Huluの一時停止時の広告フォーマットをテストする最初のブランドの1社で、第2四半期にこうした広告を展開する
エージェンシーの反応
Huluは、番組を中断するコマーシャルの時間への依存度を下げて、広告売り上げを生み出そうと努めている。Huluのバイスプレジデント兼広告プラットフォーム担当責任者であるジェレミー・ヘルファンド氏によると、3年以内に、番組のスポンサー契約のような、「中断しない」広告フォーマットで広告売り上げの50%を得ることを目指しているという。
広告主がHuluに関心を寄せているのは、人々がハイクオリティな動画を視聴するプラットフォームであり、ブランドのハイクオリティな動画広告に馴染むからだ。一時停止時の広告は動画ではないが、静的画像は「興ざめさせるたぐいのもの」だと、マーケティングエージェンシー、デジタス(Digitas)のメディア担当シニアバイスプレジデントであるクリスティン・シェーヴ氏は語る。
「これでブランド構築のようなことを実行できるとは思わない。チャーミンとコカ・コーラの例によって、そうした思いこみが間違っていると証明されるかもしれないが、バナーは一般に動画ほど大きなインパクトがない」と語るのは、デジタルマーケティングエージェンシー、360iの統合メディア担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるスコット・ダリー氏だ。
ブランド想起は低い?
エージェンシー幹部の関心を削ぐもうひとつの要素は、広告が掲載されるコンテンツだ。オーディエンスが動画を一時停止して、立ち上がってトイレに行ったり、食べ物や飲み物を取りに行ったりしそうなときに、Huluは広告を表示しようとしているので、オーディエンスが広告を見逃す可能性がある。広告が表示される5秒後より前にオーディエンスは画面から離れるかもしれない。動画をTVにストリーミングしていれば(Huluの幹部によると、視聴の79%はコネクティッドTVで行われている)、オーディエンスは画面に目もくれずにリモコンの再生ボタンを押す可能性がある。そうなると、広告主がブランド認知への広告の影響を測定しようとしても、広告や広告を提供するブランドをオーディエンスが覚えている可能性は低くなる。
「それが一時停止の概念だ。コンテンツの視聴に対して積極的な態度ではないので、ブランドや広告を想起する割合は下がると思う」と、エージェンシーのPMGでブランドメディア担当ディレクターを務めるナタリー・ゲルダート氏は話す。
公平を期すとHuluは、Huluだけでなく広告主にも怒りが向けられるほど、広告がユーザーを苛立たせないように、一時停止広告フォーマットの初期バージョンでやりすぎないようにしようと気をつけているようだ。オーディエンスとともに広告フォーマットをテストし、意見を募って開発チームに知らせてきた。「オーディエンスは、動画フォーマットに強く反対していた」とヘルファンド氏は述べ、動画を一時停止する目的が何であれ、広告がそれを妨げたり、動画の視聴を再開しにくくしたりしないようにしてほしいと人々は思っていると指摘した。
苛立たせない工夫
Huluは、オリジナル番組や、Viceのようなメディア企業からライセンスを得ている動画など、自社が所有している動画コンテンツ内でのみ、一時停止広告を流す予定だ。その権利をめぐって交渉する必要があるので、ネットワークがHuluで配信するTV番組には表示されない。一時停止広告はHuluの「Live TV」サービスにも表示されないが、これは、ライブストリーム内に広告を挿入するのが困難であることのほうが大きく関係しており、Huluはいずれは一時停止広告をLive TVサービスにまで拡大するかもしれない、とヘルファンド氏はいう。
Huluがオーディエンスを苛立たせないよう用心していることから、広告が画面の一部にだけ表示され、宣伝なしで登場する理由の説明もつく。
「オーディエンスをそれほど驚かせない」とヘルファンド氏は語る。一時停止広告フォーマットの例では、広告は画面の右3分の1に現れるが、ヘルファンド氏によると、人々の注意を引けるように広告が画面の上部や横から滑らかに移動するなど、広告のさまざまな導入方法をテストしていくという。
秘めたポテンシャル
ブランデッド動画を視聴するか、割引コード付きのテキストメッセージを受け取るか、人々に広告を選択させるなど、Huluが一時停止広告にインタラクティブな要素を加えれば、広告主の注意を引くのに役立つ可能性がある。広告をもっとインタラクティブにするのは、Huluが探りたいことかもしれない、とヘルファンド氏は語る。
エージェンシーの幹部は、スタンドアロン型フォーマットとしては一時停止広告にそれほど熱心ではないが、もっと広範なキャンペーンのサポートに役立つ可能性があると見ている。たとえば、広告主は、一時停止広告を番組のスポンサー契約や標準的なプレロール広告またはミッドロール広告と組み合わせ、静的画像を利用して、伝えようとしているどんなメッセージでも強化することができる。
「すばらしい補完的フォーマットになりうる」とシェーヴ氏は語る。Huluは、そうしたことを認めているらしく、標準的なコマーシャルやスポンサー契約を含みうる、もっと広範なパッケージの一部として、一時停止広告を販売する見込みだ、とヘルファンド氏は述べている。
アドロード減少も狙い
だが、Huluは、一時停止広告がコマーシャルのアドロードの削減に役立つことをもっと期待しているようだ。オーディエンスが番組を一時停止するときに広告を表示できれば、広告枠を減らしたり広告を短くしたりして、番組中のコマーシャルの時間をおそらく短くできる。
「徐々にアドロードを減らせるようにすることに、とても力を注いできた」とヘルファンド氏はいう。同氏は、オーディエンスが一時停止広告を見始はじめたら、アドロードが減少するのかどうか、また減少する場合はどの程度減るのか、コメントを避けた。
だが、3年以内に、番組を中断しない広告フォーマットから広告売り上げの50%を得る、というHuluのもっと広範な野心も、一部から疑いの目で見られている。
「現実的だとは思わない」と、シェーヴ氏はいう。「野心はすばらしい。3年後でも、上位20位内の広告主が、そこで30秒の動画広告を流したいと思わないプラットフォームを利用するかわからないだけだ。その点では積極的な感じがする」。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)