Hulu(フールー)には極めて貴重なデジタル動画インベントリー(在庫)があるが、需要に対応できるだけのものを常に提供してはこなかった。しかし、2019年からは少し変わりそうだ。Huluは、プログラマティックを少し拡大することになっている。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
Hulu(フールー)には極めて貴重なデジタル動画インベントリー(在庫)があるが、需要に対応できるだけのものを常に提供してはこなかった。しかし、2019年からは少し変わりそうだ。Huluは、プログラマティックを少し拡大することになっている。
ストリーミングサービスのHuluは1月1日、オンデマンドTVとライブTVのインベントリーに流す動画広告を広告主とエージェンシーがプログラマティックで購入するための、新たなプライベートマーケットプレイス(以下、PMP)を正式にオープンさせる。これにより広告主は、Huluの直販チームを通じてインベントリーにアクセスしたり価格を付けたりしなくても、エージェンシーのトレーディングデスクやデマンドサイドプラットフォーム(DSP)を通じてHuluのインベントリーに入札できるようになる。
デジタルの広告主へ
この新しいPMPの導入と同じタイミングで、現在、こうした閉じたプログラマティックマーケットプレイスに投じる資金を増やそうという動きが広告主のあいだに広がっている。米DIGIDAYが先日行った調査では、2019年にPMPを通した広告購入に使う資金を増やす計画だというメディアバイヤーは62%だった。PMP取引への関心が広告主全般に広がっているのは、プログラマティック購入の柔軟性(直販チーム経由と比較すると、店舗に足を運ぶ代わりにAmazonで商品を買うようなものだ)が手に入るのに加えて、直販チームと協力することで、どこのインベントリーを買っているのかわかるという確実性が加わるからだ。
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新しいPMPは、プログラマティックによる広告購入に慣れている、デジタルに力を入れている広告主が特に魅了されるのではないだろうか。あるエージェンシー幹部によると、Huluはこれまでテレビのようなものだと売り込んで、従来のようなテレビの広告主たちが使うお金を増やしていた。こうした広告主たちは従来のような掲載申込(IO)による広告購入で問題ないのだが、このやり方によって、デジタルの広告主たちが忘れられていた可能性がある。
このPMPは、動画サプライサイドプラットフォーム(SSP)のテラリア(Telaria)を通して実施され、Huluの販売チームから直接購入するときと同じ広告購入のオプションが提供される。Huluの広告プラットフォームの責任者で担当VPのジェレミー・ヘルファンド氏によると、たとえば、Huluが所有するオーディエンスセグメント、ビューアビリティ(可視性)の測定、頻度の上限設定、広告主のカテゴリー分割などがある。また、Huluの広報担当者によると、広告主がこのPMPを利用するのに必要な最低限の支出額があるということだが、具体的な額については、担当者は話すことを拒んだ。
インベントリーの増加
HuluがこのPMPを展開するのは、利用できるインベントリーの増加を受けてのものだ。Huluは2018年、年間を通してオーディエンスが増え続けた。サブスクリプション契約者が、5月に2000万人を突破。12月4日にはCEOのランディ・フリーア氏が、2018年下半期は300万人の増加になるだろうと語った。
このサブスクリプションの増加に伴って、今年は以前よりも利用できるインベントリーが増えていることに、広告バイヤーたちは気がついた。ある広告バイヤーは「これまでは年に何度か、インベントリーをもらえないことがあった。今年はそこまで悪くなかった。2017年はインベントリーの獲得を死に物狂いで争っていた」と語った。
ヘルファンド氏は、Huluのサブスクリプション契約者が増えていることを認めたうえで、各契約者のコンテンツ視聴時間が増えており、そのことでHuluが販売するインベントリーが増えていると語った。ただ、同氏によると、このPMPを作るという判断で「重要だったのは、実は供給を満たせるようにすることではなかった」という。Huluとしては、自社から広告を買う方法について、広告主にもっと選択肢とコントロールを提供したかったようだ。
実際の販売価格は?
Huluの新しいPMPは、2015年に披露された最初のPMPとは別の物だ。この昔のPMPは、広告バイヤーたちによると、Huluと価格を合意し、契約した保証型の取引を広告主がただ自動化するものにすぎなかった。当時のPMPを通して買う際、CPMを調整したければ、Huluの販売チームを通す必要があったという。ヘルファンド氏によると、新しいPMPでは、広告主は対象オーディエンスに対する自らの評価に従って、入札価格を好きなように自分たちで設定できるという。
ヘルファンド氏によると、新しいPMPでは、購入される広告にHuluが最低価格を設定することになっており、インプレッションを獲得するにはこれを満たす必要がある。この最低入札額の設定はまだされておらず、PMPが正式ローンチ後どのような動きを見せるのかをHuluは待っている。以前のPMPの最低価格は、広告主が求めている保証型インベントリーの量によって変動があるもので、普通は1000インプレッションあたり12ドル~30ドルだった。これくらいだと、Huluの販売チームからインベントリーを直接買うほうが広告主としては良いということがあったと、ある広告バイヤーは語った。
それでも新しいPMPでHuluのインベントリーにアクセスするには、広告主は割り増しの料金を払うことを求められるかもしれない。広告主はこのPMPで買う広告を、独自のデータやサードパーティのデータを使ってターゲティングできる。しかし、こうした機能にはコストがつきものだ。もうひとりの広告バイヤーによると、HuluのPMPを通じてキャンペーンを実施すると、このPMP外でHuluから同じようなキャンペーンを直接購入する場合よりも高くつく。追加されるターゲティングやアクセスのしやすさにそれ相応の価値があるのか、広告主は評価することが必要になるため、こうしたコストの検討が、このPMPへの広告主の関心に影響するかもしれないと、この広告バイヤーは語った。広告バイヤーはふたりとも、PMPの購入は外部データを使えるようになるので追加のプレミアムを払うことを求められるが、動画インベントリーは、直接買うとそこまで高くならない可能性があるとの考えだった。価格の上昇は、より具体的なターゲティングを可能にするデータで決まってくるのかもしれない。通常、そうしたデータがあると高くなる。また、新しいPMPにアクセスする広告主とエージェンシーが増えれば、競争が生じ、それに従い価格が動き続けるかもしれない。
DTCの広告主たち
HuluはこのPMPでブランド広告主とパフォーマンスマーケターの両方にアピールするつもりだが、ヘルファンド氏は、PMPは広告費をFacebookからテレビにシフトさせているDTC(ネット直販型)の広告主にHuluへ多くの資金を使ってもらうのにも役立つかもしれないと認めた。HuluはDTC広告主の需要が増加しており、ヘルファンド氏は、「このプログラマティックチャネルがDTCの広告主たちに響き、広告主たちは気に入るだろうという話なら、まったく同感だ」と語った。
Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)