加入者数の伸びの鈍化は、サブスクリプションベースのストリーミング市場全体で起きている。そのなかで、ディズニー(Disney)の旗艦的ストリーミングサービス、ディズニープラスは今年度初頭、新規加入者数において、主要ライバルを凌ぐ強力な伸びを記録したことが、最新の四半期収益報告書で明らかになった。
2021年最後の3カ月間、ディズニー(Disney)はストリーミングの加入者数の伸びが加速したが、2022年最初の3カ月間で、その伸びは鈍化した。この減速は、ディズニープラス(Disney+)を含め、ディズニー全体に見られる。
とはいえこの減速は、サブスクリプションベースのストリーミング市場全体でも起きており、そのなかで、同社の旗艦的ストリーミングサービス、ディズニープラスは今年度初頭、新規加入者数において、主要ライバルを凌ぐ強力な伸びを記録したことが、5月11日、同社が発表した最新の四半期収益報告書で明らかになった。
各社の主な数字
- 総収益191億ドル(約2兆4000億円)、前年比23%増
- リニアTVネットワーク収益71億ドル(約9000億円)、前年比5%増
- D2Cストリーミングサービス収益49億ドル(約6125億円)、前年比23%増
- ディズニープラスの加入者数1億3770万人、前四半期比6%増
- ESPNプラス(ESPN+)の加入者数2230万人、前四半期比5%増
- Hulu(フールー)の加入者数4560万人、前四半期比1%増
ディズニープラスは勝ち抜けた?
加入者数を公表している主なサブスクリプションベースのストリーミングサービス事業者――Netflix、HBOマックス(HBO Max)、パラマウントプラス(Paramount+)、ピーコック(Peacock)――のなかで、ディズニープラスは2022年最初の3カ月間、新規加入者数が最多だった。
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- ディズニープラス:790万人増
- HBOマックス:300万人増
- Netflix:20万人減
- パラマウントプラス:680万人増
- ピーコック:400万人増
米国だけで、ディズニープラスは同期、150万人の新規加入者を獲得したと、同社CFOクリスティン・マッカーシー氏は5月11日の業績発表で話した。同氏はこの成長の要因として、同期に公開された長編アニメ「私ときどきレッサーパンダ(Turning Red)」とマーベル製作のドラマシリーズ「ムーンナイト(Moon Knight)」を挙げるとともに、サブスクリプションのバンドルセールにも触れた。
次の四半期――Netflixは200万人の加入者数減が予想されている――に向けて、ディズニーはディズニープラスの加入者数の成長の持続を期待している。具体的な予測人数は明かさなかったが、マッカーシー氏は発表のなかで、ディズニーはディズニープラスが今年度後半(4月から9月)において加入者を前半(10月から3月)よりもさらに増やすとの見通しをくり返し述べた。
ただし、「前半の伸びは予測を上回るものであり、したがって当初見積もっていた両期の加入者成長率の差はさほど大きくないかもしれない」とも、マッカーシー氏は話した。同社は依然、2024年度末の時点でディズニープラスの加入者数が当初の予測である2億3000万人から2億6000万人に達すると期待している。
黒字に転じる予測
ディズニープラスの加入者数が伸び続けている一方、ディズニーのストリーミングサービス事業は依然、赤字を続けている。同社のストリーミング営業利益は8億870万ドル(約1045億円)のマイナスであり、赤字幅は前年比2億9000万ドル(約362億5000万円)増、前四半期比5億9300万ドル(約750億円)増だった。加えて、同社のストリーミング支出は今四半期、さらに増大すると思われる。
同社の2022年度第3四半期におけるストリーミング番組編成および制作費は「9億ドル(約1149億円)以上、前年を上回ると予想されており、これはディズニープラスおよびHuluのオリジナルコンテンツ費の増大を反映している」ほか、スポーツ放送権料の高騰と、HuluのストリーミングペイTVサービス(Huluでは多数の有料TVも配信されている)用の「番組編成費の増大」も関係していると、マッカーシー氏は語った。
ただそれでも、2023年後半または2024年(つまり、同社の2024年度)のどこかの時点でディズニープラスは黒字に転じると、ディズニーは見越している旨を、同氏はくり返した。それを後押しする要因として、同氏は今後の広告付き配信における加入者増と広告なし配信の値上げを挙げた。ディズニープラスの広告付き配信のサブスクリプション価格について、具体的な数字は明かさなかった。
また同様に、ディズニープラスの広告なし配信に対するサブスクリプション価格の値上げについて、明確には口にしなかったものの、ディズニーCEOボブ・チャペック氏は業績発表中、今後の広告付き配信の追加により、「我々は価格調整力を手にできる」だろうと、語った。
Huluが減速、ESPNは分離も視野に
業界歴10年以上のHuluも加入者数の減速が予想されているが、これは人間の身長が10代以降、劇的な伸びを見せないのと同じとも言える。とはいえ、同社の加入者数の伸びは、2022年最初の3カ月間、ほぼ横ばいであり、ある分野では落ち込みを見せた。
同四半期、Huluの新規加入者数の増加は30万人だったが、ストリーミングペイTVサービスでは、20万人の加入者を失った。
一方、ESPNプラスの加入者の前四半期伸び率は、2021年の最後の3カ月間が25%増だったのに対し、2022年の最初の3カ月は5%増に留まった。ただ、この伸び悩みがこの先も続く可能性は低いと思われる。
業績発表中、チャペック氏はいずれESPNを分離させ、スポーツTVネットワークを有料テレビ契約なしで独立したストリーミングサービスとして確立し、「それにより、完全なD2C業態でのESPNの成長を復活させられる」との構想を口にした。しかし、いつそれを実行するのかについては明らかにせず、また、ESPNをD2C化することによって、ネットワークの維持費を支払うペイTVプロバイダー勢からディズニーが得ている現行の収益、キャリッジフィーを失うことになる点も、同氏は認めた。
※ディズニーの番組編成および制作費の金額に一部誤りがあり、修正しました。
Tim Peterson(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)