アメリカの大手通信業者Verizonは、保有する貴重な顧客データの利用を、今後自社内に留める方針だという。これが実施されれば、広告業界に新たな「塀で囲まれた庭」ができることになる。Verizonはこの戦略で、ライバルのFacebookやGoogleに対抗する構えのようだ。
Verizonの計画に詳しい情報筋によると、同社はアドテクノロジー関係のパートナー企業に対して、これ以上、ユーザーの位置情報、オンライン習慣、使用アプリ、家族構成や請求情報など、無線通信事業者しか知り得ない情報にアクセスさせないと通達したという。その背景には、Verizonが築き上げてきた、より効率的な広告のエコシステムの存在があげられる。
アメリカの大手通信業者Verizonは、保有する貴重な顧客データの利用を、今後自社内に留める方針だという。これが実施されれば、広告業界に新たな「塀で囲まれた庭」ができることになる。Verizonはこの戦略で、ライバルのFacebookやGoogleに対抗する構えのようだ。
Verizonの計画に詳しい情報筋によると、同社はアドテクノロジー関係のパートナー企業に対して、これ以上、ユーザーの位置情報、オンライン習慣、使用アプリ、家族構成や請求情報など、無線通信事業者しか知り得ない情報にアクセスさせないと通達したという。その背景には、Verizonが築き上げてきた、より効率的な広告のエコシステムの存在があげられる。
買収した企業で、広告のエコシステムを構築
「Verizonはパートナー企業に対して、顧客データに関する同意を破棄すると通達していた」と、同社の動きをよく知る情報筋は話す。「今後は独自のプラットフォームでしか、顧客情報やユーザーの端末から得られる豊富な情報は利用しないのだろう」。
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その広告プラットフォームは、日に日に恐るべきものになっている。これに対し、多くの情報筋は、Verizonがデータの利用に制限をかけたのもうなずけると話す。
パブリッシャー向けのプラットフォームを提供する米企業スマット(Smaato)の最高営業責任者であるアジトパル・パンヌ氏は、Verizonが以前実施していたマーケティングプログラム「プリシジョンマーケティング」の結果が、あまりよくなかったことが、今回の要因にあると推測する。広告主側のアドサーバー企業に開放されていたこのプログラムは、パートナーとなる見込みのあった企業たちが、匿名とはいえあまりに高度すぎる個人情報の扱いについて、使用を渋ったという。
「『プリシジョンマーケティング』が開始された当初、思わず眉をしかめてしまった」とパンヌ氏は話す。「この失敗を挽回するために、あの買収騒ぎを引き起こしたのだろう。彼らには、買収したAOLとミレニアル・メディア(Millennial Media)に利用するデータが必要だった。今回のことは、今後データは活用するが売買は行わないという意志の表れだと思う」
この巨大な無線通信業社は、最近、米最大手のモバイルアドネットワーク企業ミレニアル・メディアを買収。また、2015年の初夏には44億ドルで、米大手インターネットサービス企業AOLも買収した。また、AOL自身、最近になってMicrosoftのディスプレイ広告事業を引き継ぎ、大手インターネット業者との密接なパートナーシップもできている。
広告主を惹きつける「黄金のガチョウ」
このVerizonの大胆な買収劇は同社の広告技術の底上げをし、ターゲット広告をモバイル、デスクトップ、動画広告などに配信する際に、FacebookやGoogleと競わせられる唯一のライバルになったとマーケティングの専門家は話す。
Verizonが1億3千5百万件もの豊かな顧客インサイトや顧客情報を、他社に確認できないブラックボックスのなかで活用することに驚きはない。GoogleやFacebookも同様に第三者がデータを使用することに厳しいからだ。
オンライン広告統合管理プラットフォームを運用する企業イグニッションワンの最高売上責任者であるジョナサン・バロン氏は、Verizonの顧客情報は、地域別に配信する広告や、それ以外のターゲット特定基準をもつ広告に役立つと話す。
「広告主は、ロケーションによる広告は成功すると知っているので、その特定した地域の100メートル以内で広告を出したがる」と、バロン氏は話す。「私が思うに、Verizonは自らが『黄金のガチョウ』の上に座っていることを知っている。黄金のガチョウが産む金の卵を無料で提供せず、自ら守りたいと考えているのだろう」。
Garett Sloane(原文/訳:小嶋太一郎)
Photo by Mike Mozart