今、ソーシャルセリングのプラットフォーマー、Zazzle(ザズル)が注目を集めている。アート系のマーケットプレイスとして、カスタマイズしたプレゼントを贈れるサービスだ。そんなZazzleが、米国では9月からZazzleライブ(Zazzle Live)というオンデマンドのライブ配信機能の提供を開始した。
今、ソーシャルセリングのプラットフォーマー、Zazzle(ザズル)が注目を集めている。
アート系のマーケットプレイスとして、マグカップやTシャツなど、カスタマイズしたプレゼントを贈れるサービスとなっており日本でも展開されている。そんなZazzleだが、米国では9月からZazzleライブ(Zazzle Live)というオンデマンドのライブ配信機能の提供が開始され、年末のクリスマスシーズンに大きな広がりを見せた。同サービスでは、ユーザーが定額料金を支払うと、Zazzleが「エキスパートデザイナー」とのマッチングを行い、そのデザイナーがリアルタイムでデザインのフィードバックに応答し、コラボレートしてくれる。
これらZazzleライブのサービス内容は、パンデミック下で注目を集めている「ソーシャルセリング」や「バーチャル教室」、そして「独立系の販売業者」といったさまざまなトレンドに合致している。そして感化されたかのようにAmazonやShopify(ショッピファイ)、Facebookといったほかのプラットフォーマーも、同様のライブ配信を使ったコマースサービスを実験的に開始。これまで、Zazzleライブにはさまざまなイラストレーターやグラフィックデザイナーが登場しており、なかでももっとも人気なのがペットのポートレートだという。
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Zazzleの共同創業者で最高製品責任者を務めるジェフ・ビーバー氏は、同サービスの目的は「一般的なECツールでは対象になり難いクリエイターを拾い上げることにある」と述べている。「Zazzleライブは、個人のデザイナーが新たなアプローチを行う場として大きなポテンシャルを秘めており、ぜひ活用して欲しいと思っている」。
パズルの売上は4000%増
同社はZazzleライブの成長について、具体的な統計情報は明かしていないものの、ビーバー氏によれば、昨年12月の同サービスへの需要は安定して増え続けたという。これは「相手に合わせてカスタマイズできるバーチャルギフト」に対する関心や期待が高まっているためだと同氏は語る。
ソーシャルディスタンスが奨励される今、Zazzleライブはこういったバーチャル需要の「大幅な増加」の波に乗っていると、同社は述べている。また、エッツィー(Etsy)のような競合プラットフォームでは、販売側が商品の配送の遅れについて懸念を表明している(なお、エッツィーは現時点では販売側がライブ配信できる機能は提供していない)。
Zazzleライブの料金は1プロジェクトあたり5.99ドル(約620円)となっており、1セッションあたりの所要時間は平均で15分から20分だ。しかし、同社はユーザーが求めるデザインのリクエストについて、梱包と発送の直前まで「いくらでも時間を使って良い」としている。また、価格は商品やプロジェクトごとに売る側が決められる。
Zazzleによれば、今年、同プラットフォームで70万人のデザイナーがデザインを公開し、その半数が収益を上げたという。さらに、これまでのところ、250人の売り手が手数料として6桁(数十万ドル:数千万円以上)の収益を得ているとのことだ。そして、これまでの売り手への支払総額は3億ドル(約310億円)近くに上っている。たとえば自宅にいる時間が増えた現在、それに適した商品の売上が伸びている。その一例を挙げれば、パズルの売上は4000%増となったと、ビーバー氏は語る。
「テレビ通販番組のネット版」
ハーバード・ビジネス・スクールで講師をつとめるジェフリー・レイポート氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)に対し、これから米国でもソーシャルセリングが広く普及していく可能性があると指摘する。レイポート氏は、米国におけるライブ配信を通じた販売について、「世界のある地域でこれほど爆発的に普及しているのに、ほかの地域ではさっぱりという状況がいつまでも続くとは考え難い」と話す。FacebookやAmazonのような大手ITプラットフォーマーが「ソーシャルセリングへの投資にこれほど積極的ということからも、それは明らかだ」。同氏はソーシャルセリングについて、「QVCなどのテレビ通販番組のネット版」と表現している。
実際のところ、ライブ配信は、販促や買い物客と交流するための手段として小売業者やプラットフォーマーからの注目を集めている。たとえば、Shopifyは4月初旬からライブ配信の動画をクライアントのストアで流せる機能を実装した。さらに最近では、Facebookショップでブランドによる配信サービスの試験運用が始まった。一方、Amazonでは、Amazonライブ(Amazon Live)のイベントにインフルエンサーを積極的に誘致している。
Zazzleライブは買い物客を惹きつける方法であるとともに、売り手にとってマネタイズ可能な新たな販売ツールとなっている。また、Zazzleにとっても大きな収益源となっていることは言うまでもない。最後にビーバー氏は次のように語っている。「最終的にはリフト(Lyft)のように、シンプルでアクセスしやすいデザインのプラットフォームを目指している」。
[原文:How Zazzle is trying to gin up more sales through social selling]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:長田真)