近年TikTokの成長は著しく、マーケター勢と大手企業も関心を向けてきた。月間2900万人以上いるTikTokのアクティブユーザーの目に触れるために、オーガニックとペイドの両戦略を実践し、多様なソーシャル・メディアミックスを可能にするツールとして利用されている。そしてこの流れは、SMBにも及んでいる。
南アジアにインスパイアされたアパレルブランド、サニ(Sani)の共同創業者、リティカとニキのシャムダッサーニ姉妹は、2020年初頭にTikTokを始め、同年3月には6本目の動画をバズらせ、およそ300万回の再生数を獲得した。それはTikTokを意識して制作した、彼女らにとって初めての動画であり、ほかのプラットフォームに投稿済みのコンテンツの流用ではなく、着想から完成に至るまで、一着の創作過程をすべて見せている。
ちょうどコロナ禍が始まったころのことで最高のタイミングとは言えなかった上、サニは当時、結婚式用のフォーマルウェアに特化していた。しかし、この動画のおかげでブランドアウェアネスの維持に見事成功し、ふたりはTikTokの大いなる可能性を実感した。
ほかにも、TikTokに投稿したオーガニンックコンテンツがバズり、ビジネスの追い風になる経験をした小企業主がいる。たとえば2021年2月、木工ブランド、サイダーズ・ウッドクラフティング(Sider’s Woodcrafting)の創業者、ブルース・グレイビル氏がいうには、「会社をたたもうかと思っていた矢先に」アップした動画が「信じられないほどバズった」という。グレイビー氏によれば、「採算がまるで取れていなかった。でもそんな時にたまたま、TikTokに上げたその動画がバズってくれて、ホームページへのトラフィックが4000%も増えた。たった24時間で、ホームページに載せていた商品がすべて売り切れたんだ」。
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SMBで加速するTikTok利用
TikTokの成長は近年著しく、マーケター勢と大手企業も関心を向けてきた。月間2900万人以上いる同プラットフォームのアクティブユーザーの目に触れるために、オーガニックとペイドの両戦略を実践し、多様なソーシャル・メディアミックスを可能にするツールとして利用されている。それと同じことを小企業らも始めていると、TikTokの北米SMBアカウントマネジメント部門を率いるダニエル・ジョンソン氏は話す。
ジョンソン氏のチームは中小企業向けのTikTok教育コンテンツ作りに勤しんでいる。「SMBとホリスティックな会話を交わしている」とジョンソン氏。「できるかぎり時間を取り、中小企業と一対一で話すだけでなく、SMB教育の場も主催している。彼らがほかのクリエイターから話を聞き、TikTokで成功する秘訣を学べるよう、全力で応援している」。
TikTokの広告収入に占めるSMBの割合は、同社が数字を公開しなかったため、定かでない。ただ、上記の発言からわかるのは、同社はこれからも一連の教育を通じてSMBへの提供を増やすとともに、TikTokの利用を始めるブランドと緊密に連携し、彼らのTikTok経験の向上に努め続ける、という姿勢だ。
2020年3月における初バズり体験以来、サニの創業者姉妹はTikTokへの投稿を続け、フォロワー数は14万5000人以上にのぼり、事業成長の一助にしており、実際、月間売上の約6割はTikTokに起因するという。また、これまではオーガニックに傾倒してきたが、最近、投稿の後ろにペイドメディアを載せる試みも始めた。
自身のTikTokにおける成功もオーガニック投稿によるものだと、サイダーズ・ウッドクラフティングのグレイビル氏も語る。TikTokだけで3万ドル(約330万円)の売上があったと明かし、TikTok主催のSMBイベントでも話したと言い添える。「何が効果的なのか、自分の経験をほかの企業主に話した。もちろん、私に合ったものがほかの人に合うとは限らない。でも、小企業のオーナーで、TikTokをやっていないのなら、その人が大事な機会を逸しているのは間違いない」。
「TikTokの一択は危険」
パフォーマンスマーケティングエージェンシー、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者デュエイン・ブラウン氏は現在、いくつかのSMBにTikTok利用を促している。「TikTokは対応がきめ細やかで、eコマースやD2Cブランドの誘致に熱心だ」とブラウン氏は話す。「顕在顧客も、既存顧客も増えており、いまや誰もがFacebookではなくTikTokへの投資を考えている」(ブラウン氏はD2Cブランドと数多く仕事をしており、アパレルブランド勢はTikTokへの参入を考えていると語った)。
とはいえ、ブラウン氏はSMB勢に対し、TikTokの一択は危険過ぎると警告する。「TikTokはいま熱く盛り上がっている、注目の的であり(中略)それだけに、誰もがこの流行に乗りたいと思っている。ただ、我々としてはGoogleに、あるいはFacebookに安定した有料広告収入源を持っている企業にだけ、TikTokを勧めている。収入がない場合、新規プラットフォームを試すのは難しい」。
[原文:How small businesses are using TikTok to build brand awareness and boost sales]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)