Shopify(ショッピファイ)とカナダのミュージシャンのドレイク(Drake)とのパートナーシップが話題になっていることは、eコマースプラットフォームである同社のセレブリティコマースにおける今後の計画を示唆している。
Shopifyは2022年4月から、ブランドのeコマースウェブサイトを運営するだけでなく、インフルエンサーやセレブリティにとって価値あるパートナーであることを証明しようと試みてきた。特にドレイクとのコラボレーションは、同社がセレブリティとより密接な関係を築こうとしていることを示している。Shopifyはセレブリティ向けにeコマースサイトを運営するだけでなく、より広範に運用する予定の機能をテストする際、こうしたセレブリティに手助けしてもらうおうとしている。
ドレイクリレーテッド(Drake Related)は、ドレイクのグッズや関連商品を販売する没入型eコマースサイトで、2020年にはじめてShopifyに構築され、最近では2023年7月にストアがリニューアルされた。そして今年の夏、Shopifyがコレクティブ(Collective)というネイティブのドロップシップツールを作成すると、ドレイクリレーテッドはそのツールをテストする最初のブランドのひとつとなり、コレクティブを使ってウェブサイトでほかのブランドの商品を販売した。コレクティブはその後、ほかのブランドにも提供されている。そしてShopifyは9月、ドレイクとともにカナダと北米のツアーに参加し、ドレイクのコンサート会場で10フィート(約3.05メートル)四方のQRコードを投影し、ファンがそれをスキャンして直接Shopアプリにアクセスすると、リリース前のナイキ(Nike)のスニーカーなどの景品を受け取れるようにした。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Shopify(ショッピファイ)とカナダのミュージシャンのドレイク(Drake)とのパートナーシップが話題になっていることは、eコマースプラットフォームである同社のセレブリティコマースにおける今後の計画を示唆している。
Shopifyは2022年4月から、ブランドのeコマースウェブサイトを運営するだけでなく、インフルエンサーやセレブリティにとって価値あるパートナーであることを証明しようと試みてきた。特にドレイクとのコラボレーションは、同社がセレブリティとより密接な関係を築こうとしていることを示している。Shopifyはセレブリティ向けにeコマースサイトを運営するだけでなく、より広範に運用する予定の機能をテストする際、こうしたセレブリティに手助けしてもらうおうとしている。
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ドレイクリレーテッド(Drake Related)は、ドレイクのグッズや関連商品を販売する没入型eコマースサイトで、2020年にはじめてShopifyに構築され、最近では2023年7月にストアがリニューアルされた。そして今年の夏、Shopifyがコレクティブ(Collective)というネイティブのドロップシップツールを作成すると、ドレイクリレーテッドはそのツールをテストする最初のブランドのひとつとなり、コレクティブを使ってウェブサイトでほかのブランドの商品を販売した。コレクティブはその後、ほかのブランドにも提供されている。そしてShopifyは9月、ドレイクとともにカナダと北米のツアーに参加し、ドレイクのコンサート会場で10フィート(約3.05メートル)四方のQRコードを投影し、ファンがそれをスキャンして直接Shopアプリにアクセスすると、リリース前のナイキ(Nike)のスニーカーなどの景品を受け取れるようにした。
オンラインとオフラインのハイブリッド体験
Shopifyからすると、このプロジェクト全体はテクノロジー企業である同社がどのようにしてポップカルチャーに入り込むことができるかを探るための方法だった。Shopアプリのブランドディレクターで、この取り組みを主導したリンジー・クレーグ氏は、ドレイクのプロジェクトに参加したときに得られた最大のマクロラーニングは、人々がオンラインとオフラインのハイブリッドの体験を好むということだと米モダンリテールに語った。「このような、ハイブリッドの体験において我々のテクノロジーを新しい方法で活用するコラボレーションをもっと行いたいと思う」と同氏は述べている。
セレブリティが保有し、Shopifyが運営しているビジネスは、カイリー・ジェンナーのカイリーコスメティクス(Kylie Cosmetics)やキム・カーダシアンのアパレルブランドであるスキムズ(Skims)など数多いが、ドレイクとのコラボレーションは、これまでブランドやクリエイターと協力してきた方法からの大きな転換を意味している。Shopifyの有名人とのコラボレーションは、同社のビジネスの複数の側面に関わることが多くなってきた。ドレイクのようなセレブリティを起用することで、コレクティブのような新しいツールをプロモーションしたり、独自のドロップをテストすることができる。過去にはミュージシャンのファレル・ウィリアムスや、NBAスター選手のジミー・バトラーのようなセレブリティと、クリエイタープログラムを通じて協力し、彼らがShopifyストアを立ち上げるのを支援するだけではなく、製造業者を見つけるのを手伝うなど、ビジネスのほかの部分でも支援してきた。
「このコラボレーションの素晴らしい点は、オンラインとオフラインのハイブリッドの体験を作りだし、当社のアプリの能力を活用して、コンサートから帰るファンにリワードを与えたことだ。現場の人々をターゲットにジオゲートを行うことに成功し、これらの人々はスマートフォンのアプリを使用してシームレスなチェックアウトを体験することができた」とクレーグ氏は述べている。
パートナーシップの多くは、ファンがドレイクの商品を購入するための、よりシームレスな方法を生み出すことに重点を置いていた。たとえば、ファンがドレイクのコンサートの終わりにQRコードをスキャンすると、ファンはそのままShopアプリに移動し、ドレイクリレーテッドからギフトのサイズを選択することができたとクレーグ氏は説明した。2020年にリリースShopifyのShopアプリは当初、荷物を追跡するためのものだった。現在ではさらに多くの機能を包含するように進化し、ある意味マーケットプレイスと似たものになってきた。
クレイグ氏によると、ドレイクのコンサート会場の外に巨大なQRコードという形で「バットシグナル」を設置し、何らかの形でファンを驚かせ、喜ばせるという「実にクールなアイデア」を持って連絡してきたのはドレイクのチームだったという。全体として、ドレイクリレーテッドのチームは共同で実験することにとてもオープンで、ファンにリワードを与えようという熱意があったと、クレーグ氏は述べる。「コマースで一緒に実験するためには最適なパートナーだった」と、同氏は付け加えている。
新進気鋭の起業家の支援も
ドレイクリレーテッドは、2022年に発表されたShopifyの比較的新しいヘッドレスフレームワークであるハイドロゲン(Hydrogen)上でも作成された。このサイトでは、ドレイクのスタジオ、ラウンジ、ベッドルーム、クローゼット、エルチコスタジオ(El Chico Studios)、エアードレイク(Air Drake)、プール、中庭、ガレージを探索できる。買い物客は、ホットスポットを介して、部屋ごとに厳選された限定版アイテムを閲覧し、2回クリックするだけで購入できる。
コレクティブに関してクレイグ氏は、ドレイクのおかげでShopifyがコレクティブを「新しい視点で」見られるようになったと言う。ドレイクリレーテッドのチームは、ほかの起業家を大規模に支援するため、商品カタログを拡大する機能を求めていたという。これは、新進気鋭のタレントがより注目されるようサポートするために音楽アーティストがよく行うことであるが、ドレイクは新進気鋭の起業家に対しても大規模に同じことを行うのを望んだのだという。
ドレイクリレーテッドがコラボレーションした人物のひとりは、ディフェクティブガーメント(Defective Garments)というブランドを運営している起業家で、古着屋に行き、ビンテージのナイキのパーカーを買い求めて縫い合わせ、独特なアートを作りだしている。
ディフェクティブガーメントのようなブランドの商品は、ドレイクリレーテッドのウェブサイトにつなげられ、買い物客がドレイクのプールや、ラウンジ、エルチコスタジオなどの場所を閲覧するときに、ホットスポットという形で表示する。しかしそれだけではなく、ドレイクリレーテッドはナイキの衣服の在庫をディフェクティブガーメントに供給し、パーカーを製造できるようにする取り組みも行った。「2つの異なるSKU(在庫管理単位)を一緒にドロップしたところ、もっとも速く売り切れた商品のひとつになった」と、クレーグ氏は述べている。
ファンとの新しい繋がりを生み出す
ハルクラボ(Hulk Labs)でゲームのマネージングディレクターを務めるジョシュア・ドナー氏は、Shopifyがここで行った最大のことは、「ドレイクが顧客との関係を直接所有できるようになった」ことだと述べている。ドナー氏はフォーエバー21(Forever 21)やDKNYなどのブランドと協力し、メタバースやゲームなどを通して新しいコマースチャネルを構築している。
これらのセリブリティとのコラボレーションは、Shopifyがこれまで知られてきたような、テンプレート化されたプラグアンドプレイの体験ではなく、特注で独自のサポートを必要とするものだ。たとえば、ドレイクのコンサートでのライブドロップは多くの場合、真夜中前後かそれ以降に行われるため、Shopifyチームは従来よりも夜間に作業を行う必要がある。「このようなプロジェクトを一貫して真夜中に行うのは非常に珍しいことだ」と、クレーグ氏は述べている。
今後のセレブリティ戦略は、ドレイクのツアーのように、ファンがブランドと新しい形で繋がりを持てるような、非常にユニークなコマース体験を生み出すことに注力すると、クレーグ氏は語る。「テーマは同じだ。つまり、コミュニティを驚かせ、喜ばせようとしているパートナーとどのように協力し、テクノロジーによって新しいタイプのつながりを大規模に作り上げられるよう支援するかということだ」と、同氏は述べている。
[原文:How Shopify’s partnership with Drake lays the groundwork for future celebrity collaborations]
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Shopify