Shopify(ショッピファイ)が、アプリエコシステムへの投資を増やしている。開発者フレンドリーなAPIを提供するだけでなく、発見とレコメンデーションのアルゴリズムを更新し、開発者向けの広告機能も立ち上げた。また、サードパーティ開発者のコミュニティも構築している。
Shopify(ショッピファイ)が、アプリエコシステムへの投資を増やしている。開発者フレンドリーなAPIを提供するだけでなく、発見とレコメンデーションのアルゴリズムを更新し、開発者向けの広告機能も立ち上げたのだ。また、サードパーティ開発者のコミュニティも構築しているという。
アプリストアビジネスモデルは新しいものではない。Apple、Facebook、Googleはいずれも、サードパーティエコシステムを構築している。だがShopifyは、開発者との関係を強化する戦略によって、マーチャント(加盟店)にとってなくてはならないエンドツーエンドのeコマースプラットフォームとしての地位を固めようとしている。
Shopifyのアプリストアに登録されているアプリの数は、2020年に3700件から6000件以上へと2倍近くに増加した。これに対し、ライバルのマジェント(Magento)は3819件のアプリ(「Extensions Marketplace」として知られている)、ビッグコマース(BigCommerce)はおよそ900件のアプリを自社のアプリストアに登録している。
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「マーケティング、カスタマーサービスヘルプ、発送、フルフィルメントなど、マーチャントの業務を支援できる分野は数多くある」と、Shopifyでエコシステムパートナーシップ担当ディレクターを務めるファティマ・ユスフ氏はいう。「どの分野も、それ自体が10億ドル(約1000億円)規模の産業だ」。
多くのビジネスが成長している
そして、これらの分野のビジネスがShopifyのアプリストアで成長している。Shopifyのパートナーのなかには、Shopify関連のビジネスで高い収益を上げているところもある。昨年11月には、メールマーケティング企業のクラヴィヨ(Klaviyo)が、シリーズCラウンドで2億ドル(約218億円)の資金を調達した。eコマース商品の発送処理を手がけるシッポ(Shippo)も、2月にシリーズDラウンドで4500万ドル(約49億円)を追加調達している。
Shopifyのマーチャントもこの成長の恩恵を受けている。ユスフ氏によれば、平均的なマーチャントが自社のビジネスを運営するために利用しているShopifyアプリの数は、昨年と同じおよそ6件だという。アプリストアがShopify自体にもらしている具体的な金額は不明だが、Shopifyがアプリストアの成長に投資していることは明らかだ。
「昨年は商取引が加速度的に増え、誰もがオンライン化を早急に進めようとしたため、イノベーションの必要性が高まった」と、同氏は説明した。
マーチャントの数で競合を圧倒
昨年、Shopifyのアプリパートナーは2億3000万ドル(約251億円)以上を稼ぎだした。Shopifyはアプリ開発者とレベニューシェア契約を結び、Shopifyの取り分は20%となっている。Shopifyが米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書によれば、昨年のアプリパートナーの収益は1昨年の1億4000万ドル(約153億円)を上回り、単年度の収益として過去最高を記録した。なお、Shopifyの売り上げは29億ドル(約3166億円)と記載されている。
また、報告書によれば、Shopifyのプラットフォームを利用しているマーチャントの数は、2020年末の段階で170万社あり、6万社のビッグコマースや25万社超のマジェントより多い。
「Shopifyはマーチャントの数でライバルをはるかに上回っているため、アプリ開発者にとってより大きなチャンスがある」と、調査会社のeマーケター(eMarketer)でShopifyを調査しているシニアアナリストのポール・ブリッグス氏は述べている。
マーチャントと開発者をつなぐ努力
Shopifyは、マーチャントと開発者を容易に結び付ける取り組みを続けてきた。たとえば、新しく参加したアプリ開発者向けの基礎学習コースや、APIの利用と統合に関する詳細なドキュメントを提供している。また、開発者フォーラムや開発者向けカンファレンス「Shopify Unite(ショッピファイ・ユナイト)」を運営している。パンデミックの発生後は、オンラインの開発者向けのバーチャル「タウンホール」ミーティングも開催した。
「Shopifyのエコシステムが際立っている点は、コミュニティがもたらす強い一体感にある」と、カスタマーロイヤルティおよびエンゲージメント用プラットフォームを手がけるロイヤルティ・ライオン(LoyaltyLion)のマーケティング責任者、フィオナ・スティーブンス氏は指摘する。「こうしたイベントやプラットフォームのおかげで、開発者は重要な情報を共有したり、ほかの開発者から学んだり、インテグレーションの機会を見つけたりすることが簡単にできる」。
また、SMSカゴ落ち防止アプリを手がけるライブリカバー(LiveRecover)の共同創業者、デニス・ヘグスタッド氏は、次のように述べている。「ほかのeコマースプラットフォームと比べて、Shopifyは自社のAPIをより簡単に扱えるものにした。開発者は必要なものを過不足なく手に入れられる」。
とはいえ、批判的な人たちもいる
ただし、Shopifyの製品に批判的な人たちもいる。クーポンコードの利用者数を開発者がAPIで確認できるようにするなど、細かな改善ができるはずだというのが彼らの見方だ。しかも、開発者が自社のアプリをShopifyのアプリストアに登録すると、総売上の20%の手数料を支払うよう求められるうえ、Shopifyの請求APIの利用を義務付けられる。Shopifyは現在、開発者への支払いをペイパル(PayPal)経由で行っている。
「20%の手数料を支払えばアプリストア側でフォローしてもらえる。トラフィックを考えれば妥当な料率だと思う」と、ハッピー・リターンズ(Happy Returns)のCOOで共同創業者でもあるマーク・ゲラー氏はいう。同社は、ロージーズ(Rothy’s)など「Shopifyプラス(Shopify Plus)」を利用している大規模小売業者の返品業務を支援しているが、昨年11月に自社のアプリが中小企業向け公開アプリとして追加登録された。
「大変な仕事だったが、アプリが承認されたことで価格やサービスを更新できた」と、ゲラー氏はいう。「昨年10月と比べて、当社を利用するマーチャントの数は4倍に増えている」。
マーチャントにとって欠かせないものに
パートナーとの関係構築に前もって取り組むことは、いまのところShopifyに見返りをもたらしている。「Shopifyは、アプリのエコシステムが成功に欠かせないことを明らかにしたと思う」と、メールおよびSMSマーケティングプラットフォームを手がけるクラヴィヨ(Klaviyo)のパートナーシップ担当バイスプレジデント、リッチ・ガードナー氏は話す。「彼らはアプリパートナーを、自社のプラットフォームをマーチャントにとって欠かせないものにしてくれる存在とみなしている」。
[原文:‘Developers have what they need’: How Shopify’s app ecosystem boosted its core business]
ERIKA WHELESS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)