MARKETING ON PLATFORMS

ブランドから小売まで注目、 ブランデッドゲーム の新潮流:キッズ向けゲームプラットフォームのロブロックス

ワーナー・ブラザーズ(Warner Brothers)傘下のケーブルネットワーク、ブーメラン(Boomerang)は、テレビアニメ「マスター・モリー(Master Moley)」シリーズの最新作『マスター・モリーの災難(原題:The Misadventures of Master Moley)』を11月下旬から放送している。「マスター・モリー」の主人公は、モールタウンと呼ばれるウィンザー城の下の町に住むモグラだ。

​子どもたちは番組放送前からオンラインゲームのプラットフォームであるロブロックス(Roblox)で、「マスター・モリー」の世界を探索することができた。​このタイアップゲーム「モールタウンへようこそ(Welcome to MoleTown)」は、ゲームを通じて潜在的なオーディエンスの獲得を狙っている。

​ロブロックスでのブランデッドゲームを使って新しい映画やテレビ、さらには玩具やそのほかの小売商品へとプレイヤーを導くこの手法は、広告業界の最前線における興味深い事例のひとつだ。

注目のゲームプラットフォーム

ロブロックスがマーケティング手法として大きな可能性を持つことは明らかだ。ロブロックスは​2006年にリリースされ、つい最近株式公開の申請をしたばかりだ。同社は月間ユーザー数1億5000万人を誇り、もっとも人気のあるゲーム「アダプトミー!(Adopt Me!)」は100億回プレイされている。また、ロブロックスの収益化能力はすでに証明済だ。2020年の最初の9カ月で、ユーザーはゲーム内通貨に合計12億ドル(約1250億円)を費やしており、これは昨年から171%の上昇となっている。

​ロブロックスは、マーケティングツールとしてはまだ初期段階にある。​しかし、この2年間で活用するブランドと小売店の数は劇的に増加した。​ほかのゲームシステムと比較しても、ロブロックス上で新しいゲームを見つけるのははるかに簡単であり、小さなブランドでもオーディエンスを構築するのに適している。​実際、ある代理店が米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に語ったところによると、食料雑貨店を含む複数の小売業者が独自のゲームを作ることを検討しているという。

現在、ロブロックス上の広告のほとんどはバナー広告とゲーム内のコスチュームコラボレーションといった初歩的なものに留まっている。​たとえばナイキ(Nike)は昨年、ロブロックス内のアバター用バーチャルエアマックススニーカーを開発した。​映画『弱虫スクービーの大冒険(原題:Scoob!)』は「アダプトミー!」と提携し、ゲーム内で映画の主人公である犬のスクービー・ドゥーのキャラクターを提供している。

さらに​ロブロックスはバーチャルコンサートにも進出しようとしている。リル・ナズ・X(Lil Nas X)とエイバマックス(Ava Max)はそれぞれ、数百万人のロブロックス・ユーザーのためにライブパフォーマンスをおこなった。​しかし、ブランデッドゲームがロブロックスのもっとも効果的な広告形態となるかもしれない。

話題性を盛り上げるためにロブロックスを利用したメディア作品は「マスターモリー」以外にも存在する。​映画『ワンダー・ウーマン(Wonder Woman)』とテレビシリーズ『ベン10(Ben 10)』は、それぞれロブロックスのゲームを抱えている。​しかし、これらはあくまで既存のメディア作品がゲームとして提供されているにすぎない。一方、「モールタウンへようこそ」は、大手企業によるまったく新しいIPの広告であり、その意味でロブロックスにとっても初めての試みだ。(非常に)若いユーザーに新しいプロダクトへの興味を持たせられるか、ロブロックスの能力が試されることになるだろう。

コンテンツの可能性は広い

ロブロックスのマーケティング担当バイスプレジデント、タミ・バウミック氏は​「スポーツフランチャイズや、ファッションブランド、映画スタジオ、音楽アーティストなど、さまざまなブランドに命を吹き込んでくれる、本物かつ没入的な体験を生み出す無限の可能性がある」と、モダンリテールのメール取材に回答した。

​ロブロックスへの関心の高まりと並行して、小売店たちはフォートナイト(Fortnite)、マインクラフト(Minecraft)、どうぶつの森などの大手ビデオゲームとの提携をますます強化している。​しかし、ロブロックスの役割はフォートナイトやマインクラフトとは明確に異なる。​ロブロックスはプラットフォームであり、「アダプトミー!」やほかの何百万もの小さなユーザー作成ゲームを、ユーザーが切り替えてプレイすることができる。たとえるなら、ひとつのアプリ内に無数のゲームが存在するオンラインアーケードだ。​ゲームを見つけること、作ることが容易である点がロブロックスの広告ポテンシャルの源泉となっている。​ユーザーはスワイプするだけで新しいゲームに入ることができる。

​「ロブロックスでは追加のインストールの必要はない。ユーザー獲得はとても簡単だ」と、キッズ市場調査とアプリ開発を手がけるダブイット(Dubit)のCEOアンドリュー・ダスウェイト氏は言う。​ダスウェイト氏は「モールタウンへようこそ」開発にブーメランと共同で取り組んだ。

​これまでのところ、ブランデッドゲームはテレビ番組や映画を宣伝するために設計されているのがほとんどだが、実店舗を持つ企業もマーケティング手法としてロブロックスに目を向けつつある。マテル(Mattel)のミニカーブランド、ホットウィールズ(​Hot Wheels)は11月中旬、無料でプレイできる新しいロブロックスゲームを発表した。​ダスウェイト氏は食料品大手企業と話し合いを進めており、子供向けの健康的な食事のアドバイスを提供するロブロックスゲームの制作を検討しているという。

​よりオープンなプラットフォーム

​XboxやWiiなどのコンシューマゲーム機用に作られたブランデッドゲームとは異なり、ロブロックスのゲームは開発が容易だ。​子供でも多少のコーディング技術を持っていれば、自分でゲームを作れるように設計されている。利用しやすいインフラを持つことで、ゲーミング業界に参入するためのより簡単な方法を探しているブランドたちにとっての可能性を広げている。

​さらに、ほかのビデオゲームと比べて通過しないといけない関門が少ないことも魅力だ。ダスウェイト氏は、「フォートナイトでブランドをローンチするには開発元であるエピック・ゲームズ(Epic Games)と契約しなければならない」と述べた。​それと対照的に、「ロブロックスは信じられないほどオープンなプラットフォームだ。誰でもゲームを立ち上げることができる。(ゲームリリースを)止めるものは何もない」。

さらに、ダスウェイト氏によると、「ロブロックスを使っている子供たちは、現実で目にするブランドをゲーム上で見るのが好きだ」という。お気に入りのプロダクトやメディア作品を見つけた子どもたちが、自分でロブロックスゲームを作っている。​たとえば、アメリカのプロレス団体であるWWEに関するファン制作ゲームは500〜600ほど存在している。​

​ロブロックスのインターフェイスは、ほかのゲームプラットフォームとは対照的に、スクロール可能なソーシャルネットワークのデザインをしている。このおかげで新しいゲームの発見が簡単になっている。​その好例が、ダスウェイト氏が190ドル(約2万円)で購入した「マスターモリー」ゲーム宣伝のバナー広告だ。​この広告は1万1000回再生された。

ゲームそのものの楽しさが鍵

​もちろん、ブランデッドゲームが成功するためにはゲーム自体が楽しくなければならない。​「ロブロックスで重要なのは、子供たちが交流し、ある意味で自分独自のゲームの楽しみ方を持てる空間を作ることだ」と同氏は語る。​「今度はここに行こう、次は湖を見に行こう、レースゲームをしようといった具合に気軽に立ち寄って会話ができるロビーのような形で、(ゲームが)柔軟性を持っていることが必要だ」。

​しかし、だからといってダスウェイト氏がゲームから広告を完全に排除したわけではない。​モールタウンの世界では、テレビのタイアップ作品があることを思い出してもらうための仕掛けが彼のチームによってさりげなく設置されている。​そのひとつが、ゲーム内でプレイヤーがひとつのトンネルを抜けた時に現れるポスターだ。ポスター上では「マスターモリー」がブーメランで視聴できると宣伝されている。

​「究極的には人々が番組を視聴するよう仕向けたい」と、ダスウェイト氏は述べた。​「ゲームを楽しんでくれている子供たちに、番組の存在を知らせるのが目的だ」。

[原文:How Roblox is paving the way for a new era of branded gaming

MICHAEL WATERS(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)