メタバースプラットフォームのRobloxは順調に拡大を続けているが、同社の上層部にとって、最優先課題はやはり「ブランド」のようだ。 毎年恒例のロブロックス開発者会議(RDC)が9月8日と9日の両日にサンフランシスコで開催 […]
メタバースプラットフォームのRobloxは順調に拡大を続けているが、同社の上層部にとって、最優先課題はやはり「ブランド」のようだ。
毎年恒例のロブロックス開発者会議(RDC)が9月8日と9日の両日にサンフランシスコで開催され、選りすぐりの開発者、マーケター、ユーザーが一堂に会した。今年のRDCでは、新たなツールや機能の発表が目を引いたが、どのツールや機能にも、ブランドやマーケターが利用しやすいメタバースプラットフォームをめざす意図がうかがえた。
今年のRDCで発表されたアップデートはざっと以下の通りである。まず、「ロブロックスコネクト(Roblox Connect)」は仮想空間でプライベートな交流を楽しめるコミュニケーションツールだという。次に、クリエイターにリアルタイムでアドバイスやフィードバックを提供する会話型AIの「アシスタント(Assistant)」。仮想空間でサブスクリプションを提供する機能や、3Dアイテムを販売する従来よりオープンなゲーム内マーケットプレイスの発表もあった。そして、9月からメタクエスト(Meta Quest)に対応し、10月10日にはプレイステーション(PlayStation)にも対応予定だという。
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米DIGIDAYはロブロックスのチーフパートナーシップオフィサーを務めるクリスティーナ・ウートン氏にインタビュー取材を行い、最新のアップデートや決定、ブランドによるロブロックスの活用方法に与える影響などについて話を聞いた。最近行われた一連の発表に関するウートン氏の発言を以下にまとめ、米DIGIDAYの解説を付記した。
なお、インタビューの内容は、読みやすさを考慮して要約および編集している。
◆ ◆ ◆
ロブロックスコネクトの「13歳以上」という年齢制限の意図について:
クリスティーナ・ウートン氏:
「今年後半に公開するコネクトは13歳以上限定だが、長期的な展望としては、全年齢で安全に使えるプロダクトを提供したいと考えている。ロブロックスコネクトは、人と人とのつながりやコミュニケーションを支える世界最高のプラットフォームをめざす我々のビジョンの一部だ。ロブロックスのユーザーたちを見ていると、空間を移動して友達を追いかけ、友達のいるところに行き、いっしょに何かをしたり、おしゃべりをしたり、そこはとてもソーシャルな場だ。コネクトはまさにその延長線上にある」。
DIGIDAY:
近年、ロブロックスはもっぱら子ども向けのプラットフォームというイメージを払拭するために、ロブロックスでもっとも成長著しい年齢層は17歳から24歳だとマーケターにアピールするなど、顕著な努力を重ねてきた。それでも、ユーザー層に占める子どもの割合は依然として大きい。そして、それはあながち悪いことではない。若い人々が消費者あるいはインフルエンサーとして果たす役割はもはや明白だ。あえて「13歳以上が対象」という年齢制限に焦点を当てず、むしろ、将来的にはあらゆる年齢のユーザーに拡大する計画を強調することで、ウートン氏はより積極的に若い年齢層を取り込む意向を示したのかもしれない。
プレイステーションとメタクエストに対応することのメリットについて:
クリスティーナ・ウートン氏:
「両端末への対応は、ロブロックスはどこでも、どんなデバイスでも利用できるという我々の基本理念を体現する施策だ。クリエイターやブランドにとっても、多様なプラットフォーム、そして世界中のあらゆる場所で独自のエクスペリエンスを提供できるなら、それはリーチを伸ばし、ビジビリティやアウェアネスを広げる新たなチャンスとなる。特にブランドにとっては、消費者がいるまさにその場所で彼らにリーチできるプラットフォームがまたひとつ増えるのだから、自ずと期待感は高まるだろう」。
DIGIDAY:
ロブロックスは目下、プログラマティック広告事業をベータ版の試験運用ではなく、本格的なプロダクトとして展開しようとしている。これを成功させるためには、ゲーム内広告の潜在的なリーチを増やすことが先決だ。ソニーのゲーム内広告の事業化計画に進捗が見られない現状、プレイステーションでロブロックスが利用できるようなれば、家庭用ゲーム機ユーザーへの訴求というかつてない魅力的な機会を提案できることになる。
ロブロックスのパートナープログラムの現状について:
クリスティーナ・ウートン氏:
「概して順調だ。このプログラムの参加企業、さらにはこれまでいっしょに仕事をしてきたブランド各社も、クリエイターの創作活動を加速させるこの新しいテクノロジーに大きな期待を寄せている。彼らの頭にあるのはイノベーションだ。このプログラムの主眼は、単なる没入型広告の開発ではなく、パートナー企業や広告主に対する教育・啓発活動にある」。
DIGIDAY:
ロブロックスのパートナープログラムの発表から3ヶ月が経ち、参加企業にとっての具体的なメリットが明らかになってきた。ウートン氏によると、RDCで発表された新しい機能やツールは同プログラムがスタートした6月以前にさかのぼる取り組みで、パートナー企業の関与はないという。一方、同氏が米DIGIDAYに語ったところでは、まもなくパートナープログラムに参加するエージェンシーが広告主に代わって直接キャンペーンに入札できるようになる。その狙いについて、ブランドがロブロックスでの活動をスケールアップしやすくするためと同氏は説明している(ロブロックスの広報に確認したところ、小規模ながら、すでに一部のパートナーが試験的に、だが正式にこのプロセスに参加しているようだ。近々中に、ロブロックスのアドマネジャーをもっと大規模に活用し、より包括的なキャンペーンを展開できるようにするという)。
ロブロックスでサブスクリプション機能が使えることのメリットについて:
クリスティーナ・ウートン氏:
「サブスクリプションはブランドにとって非常に大きなビジネスチャンスになる。好きなブランドに特別な親近感を持ち、定額サービスを利用したり、会員制のファンクラブに加入したり、あるいはブランドロイヤルティを育てたりする人は確かに存在する。ブランドと繰り返し接触するところにロイヤルティは形成される。熱心なファンになれば何か特典があるとか、ブランドエクスペリエンスに意欲的に参加すればポイントがもらえるとか。ブランドのサブスクリプション事業において、ロイヤルティの形成は大きな部分を占める。だがそれだけではない。デジタルアバター版の『トランククラブ(スタイリストが定期的に服を選んで届けてくれるファッション系の定額サービス)』をやってみたいとか、教育体験のライセンスビジネスを考えているとか、そういうクリエイターやブランドを支援する展望も描いている」。
DIGIDAY:
いまのところ、ロブロックスのエクスペリエンスは没入感の高いオンライン広告の域を出ないが、もっと大きな可能性を秘めてもいる。たとえばプーマ(Puma)のように、このプラットフォームで経験を積んだブランドのなかには、ロブロックスを新たな収入を生む空間としてとらえ、バーチャルコマースをはじめ、さまざまな形の収益化を構想しているところもある。
サブスクリプション機能は、ブランドとクリエイターのいずれにとっても、ロブロックス体験をより効果的にマネタイズする新たな可能性を示すものだ。多くのブランドがメタバースマーケティングの費用対効果に厳しい目を向けはじめている。そうしたなかでサブスクリプション機能を提供するということは、ブランドが構築する仮想世界にさらなる価値と有用性を付加する必要があると、ロブロックスが強く認識しているからにほかならない。
[原文:How Roblox hopes to capture brands’ attention – and budgets – with its latest updates]
Alexander Lee(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)