ピアツーピアのリセールであるメルカリは、自社プラットフォームを際立たせるため過去1年間に、購入者をリピート出品者に変換する期待を寄せて、一連の顧客参加キャンペーンを開始した。米モダンリテールは同社のCRM担当者にその狙いについて聞いた。
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競合の激しいオンラインリセールの分野で、メルカリ(Mercari)のような業者は競合他社のなかで抜きん出るためしのぎを削っている。
今日のリセールアプリの多くは、繰り返し出品者を購入者に、購入者を出品者に転換することを狙っている。ピアツーピアのリセールであるメルカリは、自社プラットフォームを際立たせるため過去1年間に、購入者をリピート出品者に変換する期待を寄せて、一連の顧客参加キャンペーンを開始した。
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キャンペーンは、たとえば将来の購入に対する割引を提供することにより、顧客が自分の商品を販売するよう促すことを主眼としている。同社は11月にリワードプログラムも開始し、こちらは利用者が出品したアイテムの数に応じてユーザーにショッピング用のクレジットを与えるものだ。
これらの販促により売上が増加し、メルカリ全体で商品数も増大したと、同社は述べている。
利用を促す、さまざまな施策
メルカリのカスタマーリレーションシップ管理(CRM)の担当ディレクターであるチャック・コンドン氏は米モダンリテールに、UXとマーケティングチームは「ユーザーがアプリに戻ってくるよう、サービスをちらつかせることも珍しくない」と語った。同社のCRMチームは、利用者が最初のアイテムを出品するとすぐに購入や販売の意思の兆候として受け取ると、コンドン氏は説明する。「当社はすぐ新規出品を促すとともに、現在の出品にもいくつかの改良を提案する」と同氏は述べている。
「たとえば、利用者がアイテムを出品すると次回の購入でクレジットを受け取れるようにするなど、利用者を奨励するプログラムを実行している」とコンドン氏は語る。これにより、メルカリの購入者はメルカリで出品も行うよう動機付けされると、同氏は述べている。
「当社は機械学習の使用を増やし、需要のあるアイテムをどの利用者が保有している可能性が高いかを予測する」と同氏は述べる。ホームページには購入者が現在探し求めている商品やブランドを提示するセクションがあり、「過去10分以内に売れたもの」や「需要急増」などのタブにより、利用者は出品に使えるアイデアを得ることができる。またチームは、常に出品リストを新しくしておくため、季節やホリデーに関するマーケティングキャンペーンも作り出しているという。
コンドン氏によれば、課題はこれをプラットフォーム全体で行うことにある。「数百人の利用者に少数のお勧めを行うのではなく、数百万人の利用者に届くようシステムをスケーリングするのだ」。
CRMチームはAIベースの顧客参加プラットフォームであるベンダーのブレイズ(Braze)と協力し、顧客とのコミュニケーションやキャンペーンを構築していると、コンドン氏は語る。「これにより当社のエンジニアと商品マネージャーは、アプリの消費者向け機能のプロモーションに集中できるようになる」と同氏は説明している。これにはメール、プッシュ通知、SMSによるプロモーションが含まれており、同社は現在これらのテストを行っているという。
コンドン氏によれば、これらの施策は結果に結びついている。特にクーポンプログラムは利用者のあいだで人気になった。1月末に公開された最新のデータで、このプログラムにより売上が8.5%増加し、メルカリは広告費に対する回収率が184%に達したと同氏は語る。
メルカリローカルへの横展開
メルカリは、より多くの購入者と出品者がメルカリローカル(Mercari Local)を使用するようにも取り組んでいる。これはショッピングと販売用のフィルターで、顧客はメルカリに指名されたメッセンジャーによって近くの注文を配達してもらうことができる。同社は2020年6月にポストメイト(Postmates)とのパートナーシップにより現地配達のテストを開始し、それ以来この分野に注目している。
「メルカリローカルは、カジュアルな消費者や出品者向けに、当社が販売と購入を可能にしようと試みていることを示す良い例だ」とコンドン氏は述べる。ローカルにより、サイズの大きいアイテムや家具など、まったく新しいカテゴリーへの拡大が可能になる。このフルフィルメントオプションが広く使用されるよう、メルカリはユーザーに対してよりスマートな配送と価格設定を推奨する出品方式に取り組んでいると、同氏は語る。メルカリローカルはウーバー(Uber)を使用し、配送料は8ドル(約920円)だ(これは場合によっては運送業者による配達より安価だと、メルカリは述べている)。
アプリのエンゲージメントツールは、メルカリが去年のホリデーシーズンにおける配送の遅延から収益を得るためにも役立った。同社は昨年のホリデーのラッシュ時に、プッシュ通知とメールによるマーケティングを多用した。12月の配送のデッドラインから、多くのアメリカ人はギフトの買い物を前もって計画するようになった。しかしメルカリのようなリセールサイトはサプライチェーン関連の遅延を利用して、ローカルな中古のギフトをプロモートすることができた。
「さらに競合が激しくなっていく」
ガートナー(Gartner)のシニアプリンシパルアナリストを務めるマット・ムーラット氏は、リセールアプリがより関連性の高いマーチャンダイズを持つことへの圧力が、ますます重要になってきていると語る。「リセール市場は、得るものが大きくなるにつれて、さらに競合が激しくなっていく」と同氏は語る。
「投資家たちは、どの企業を支援すべきかを判断するために、市場での成長とともに、市場シェアの増大を見たがっている」と同氏は述べる。しかし、プッシュ、SMS、メールにわたるマルチチャンネルのマーケティングは、メルカリのようにアプリの使用率が高いプラットフォーム間でより一般的になっていくと、同氏は語っている。
メルカリが構想しているのは、顧客が自分たちの家を見まわしてアイテムを出品リストにのせるよう常に働きかけることだ。「当社は、これらのおすすめを調整する部分への投資を続けていく」とコンドン氏は述べている。
[原文:How resale app Mercari is incentivizing users to list more items]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)