ラルフローレン(Ralph Lauren)は8月3日、昨年「フォートナイト(Fortnite)」内で販売したラルフローレンのデジタルウェアをモデルにした物理的シューズ「ポロピーウイングブーツ(Polo P-Wing Boot)」を発売した。
このリリースは、各ブランドが商品のテストやコマースチャネルとしてメタバースをさらに実験していることを示しているが、同時にバーチャルな世界とフィジカルな世界を有意義な方法でつなげる方法をまだ探っていることも表している。
ラルフローレンは昨年から「フォートナイト」に参入しており、人気のあるこのゲーム内で使用する衣装やアイテムのコレクションを発売してきた。その当時、同社のゲーム内コスメティクスは全部で20ドル(約2860円)程度の価格だった。最高イノベーション責任者のデイビッド・ローレン氏によると、今回発売する物理的なブーツの価格は250ドル(約3万5800円)で、製造しているのはわずか200足だという。
「これはすぐ売り切れる類の商品で、おそらく数分間のうちしか入手できないだろうと思っている。人々がフォートナイトに夢中になり、その体験に深く関心を持っているのなら、すぐに完売するのではないかと期待している」とローレン氏は述べた。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
ラルフローレン(Ralph Lauren)は8月3日、昨年「フォートナイト(Fortnite)」内で販売したラルフローレンのデジタルウェアをモデルにした物理的シューズ「ポロピーウイングブーツ(Polo P-Wing Boot)」を発売した。
このリリースは、各ブランドが商品のテストやコマースチャネルとしてメタバースをさらに実験していることを示しているが、同時にバーチャルな世界とフィジカルな世界を有意義な方法でつなげる方法をまだ探っていることも表している。
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ラルフローレンは昨年から「フォートナイト」に参入しており、人気のあるこのゲーム内で使用する衣装やアイテムのコレクションを発売してきた。その当時、同社のゲーム内コスメティクスは全部で20ドル(約2860円)程度の価格だった。最高イノベーション責任者のデイビッド・ローレン氏によると、今回発売する物理的なブーツの価格は250ドル(約3万5800円)で、製造しているのはわずか200足だという。
「これはすぐ売り切れる類の商品で、おそらく数分間のうちしか入手できないだろうと思っている。人々がフォートナイトに夢中になり、その体験に深く関心を持っているのなら、すぐに完売するのではないかと期待している」とローレン氏は述べた。
バーチャルな世界とフィジカルな世界をつなげる「フィジタル」な試み
このブーツの販売をサポートするため、同社は「レース・トゥ・グレートネス・バイ・ポロラルフローレン(Race to Greatness by Polo Ralph Lauren)」というカスタムブランドのフォートナイト体験も実施する。開発スタジオのビヨンドクリエイティブ(Beyond Creative)がフォートナイトのためにアンリアルエディター(Unreal Editor)*でデザインしたバーチャルな島が舞台で、ラルフローレンのランウェイショーやほかの知的財産を元にしたさまざまな楽しい場所があるが、ブーツはその中心的存在だ。
*Epic Gamesが開発したフォートナイトに特化したクリエイティブツール。
ビヨンドクリエイティブのCEOカスパー・ウェーバー氏は、このバーチャルなブーツについて、「最高にクールな方法でブーツを展示した。プレイヤーがフォートナイトのなかでブーツをはじめて目にしたときに驚いてほしいし、その周囲を歩き周り、ブーツの細部まで調べたりできるようにした」と語った。「ピーウイングビルディングという場所にあるのだが、ブーツはその中央にあり、その周りを歩き回ったり、ガラス越しに見ることができる」。
ラルフローレンのマーケターにとって、いわゆる「フィジタル」(フィジカルとデジタルを組み合わせた造語)と呼ばれるブーツのリリースは、同ブランドのバーチャルとフィジカルな選択肢を前例ない形で組み合わせたものだ。フォートナイトのプレイヤーは、このブーツを実際に履き、同時に、ラルフローレンを念頭に置いて一から構築されたカスタムな仮想環境のゲーム内でもブーツを履くことができる。
シューズブランドとメタバース
仮想コマースやゲーム内コマースの隆興により、ファッションブランドは商品をテストする新たな機会を得られるようになった。フォーエバー21
(Forever 21)などのブランドは近年、ロブロックス(Roblox)のようなメタバースプラットフォームでアイテムをリリースし、それが実際の商品としてどれくらい売れるかを判定してきた。このようなアイテムのひとつであるバーチャルのビーニー帽はロブロックスのユーザーに150万回以上購入され、同社はこれを実際の商品としてリリースした。
シューズブランドは特にメタバースへの傾倒が強く、ナイキ(Nike)やプーマ(Puma)などの企業は、スニーカー愛好者がコレクターズアイテムや最新
テクノロジーと親和性が高いことを生かし、独自の仮想コマースの機会を開拓している。ラルフローレンのポロピーウイングブーツのリリースは、実績のあるファッションブランドが、バーチャルでの消費者の意見や嗜好に耳を傾けた最新の例だ。
新しいコマースチャネル開拓
しかし、ラルフローレンが今回フォートナイトに進出したことは、たしかにフィジカルとバーチャルをつなげるものだが、同ブランドにとってメタバースに特化したコマースの機会というよりは、仮想コマースへの道のりの足がかりを示したと言った方がいいようだ。現在のところ、物理的なブーツはRalphLauren.comでのみ購入できる。すなわちゲーマーは、たとえゲーム内バージョンの靴をすでに持っていたとしても、フォートナイトを通じて直接靴を購入することはできない。
ラルフローレンが行ったような「フィジタル」なリリースは、ゲーム内で直接コマースの機会を盛り込まなければ、ブランドにとって新しいコマースチャネルを開拓する真のチャンスというよりも、将来に向けたマーケティング活動というべきかもしれない。
フォーエバー21のロブロックスにおけるプレゼンスを担当するバーチャルブランズグループ(Virtual Brands Group)の創設者兼CEOのジャスティン・ホッホバーグ氏は次のように述べている。「消費者がいるすべての場所で会いたいなら、同じアイテムをバーチャルな世界とフィジカルな世界の両方で提供し、双方をつなげることだ。これはそれほど難しいことではない。自社を消費者と結びつけるマーケティングファネルとしてメタバースを使いたいなら、そうする必要がある。それを行わなければ、単に新しい看板を作っているにすぎない」。
バーチャル世界での物理的アイテム販売にも前向き
ラルフローレンは、メタバースへの拡大をこれで終わりにするつもりはない。物理的なピーウイングブーツをフォートナイトのなかで販売する計画はないものの、直接的な仮想コマースの機会を作り上げる必要性を理解しており、将来的には、顧客がゲームやそのほかの仮想プラットフォームを通して直接衣服を購入できるようにすることには前向きだ。
「最終的には、フォートナイトに合っているものならなんでもしたいと思っている。消費者やユーザーがフォートナイトのなかで買い物をしたいと思い、それが可能になるなら、この上ないことだ」とローレン氏は話した。
Alexander Lee(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)